174

オークションで天竜人に買われそうになったケイミーをなんとか無事に助け出した。でも無理やりだったから海軍の大将を呼ばれたから早く逃げなきゃいけなくなった。いつ大将がやってくるのか分からないから緊張してるんだけど、スリルがあって少し楽しい。

「WヴィントホーゼW」

圧倒的に数が多い場合は一人ひとり相手にするより一気に巻きこんだ方がいい。こういう時自在に操れる自分の武器が誇らしく感じる。

「リリナー!こっち!」
「うん!」

チョッパーがいる方を見ると元気に手を振ってるトビウオライダーズのみんながいた。まだ残っててくれたんだ。嬉しくなって手を振り返していると隙をついたようにあたしを何人かの海兵が囲んだ。そんな奴らと目を合わさないうちに風の渦に巻きこんで遠くへ吹き飛ばした。最後まで相手にするよりは少し区切りがついたら逃げちゃった方がいいし、みんなもトビウオライダーズの方へ向かってたからあたしも続こうともう一回チョッパーの方へ振り返ったらいきなり目の前が何かで覆われた。

「ぎゃーー!何これ!何!?目潰し!?やめてー!!」

いきなりのことでパニックになって反射的に顔に張りついてるものを取ろうとすると意外とあっさり取れた。取れたものは紙だった。こんな紙っきれであんなパニックになったなんて。しかも自分で起こした風に巻きこまれて飛んできた紙だから余計に恥ずかしくて顔が熱い。誰かに見られてたら後でバカにされるかもしれないから確認のためにチラッと周りを見てみたら誰とも目が合わなかった。良かった、ラッキー。でももうこんな思いはこりごりだから、なんとなくむしゃくしゃする気持ちをぶつけるために忌まわしいこの紙切れをぐしゃぐしゃに丸めて投げつけた。これでもうあたしの邪魔をすることはないだろう。

「スカッとした!」
「フィアンセー!こっちこっち!」
「やめてよ恥ずかしいから!」

トビウオライダーズが大声であたしの事をフィアンセって呼ぶから顔がすごく熱くなった。なんでか反射的にサンジくんを見たらあたしの方は見てなかったけどすっごく嬉しそうな顔を隠そうと頑張ってた。それを見てまた恥ずかしくなる。否定してよ!



ヒューマンショップで会ったおじさんの行きつけのお店についてった。この人がサニーのコーティングをやってくれる人らしい。そしてこの人がゴールド・ロジャーの海賊団の副船長をしてたシルバーズ・レイリーだって言う。オヤジから話は聞いてたけど会ったことはなかった。この人がその本人なんだ。すごい人だから目に焼きつけておこうってじっと見つめた。

「……君は白ひげのとこの娘さんじゃないか?」
「え……うん。あたしのこと知ってるの?」
「ああ。あの男だらけの中に女の子が入ったんじゃ注目されないわけないだろう」

なるほど。ということは町で会ったあの女の人があたしのこと知ってたのもこういう理由だったのかな?

「最初はアラバスタだったか。何故か君がこの一味と新聞の記事に載ったときは驚いたよ。グランドラインのずっと先にいるはずの子が何故こんなところにいるのかって笑ったもんだ」
「海に落ちて流されたの」

あたしがオヤジと一緒にいない事を簡単に話した。早く合流してオヤジを安心させてやりなさいって言われたときはなんて言ったらいいのか分からなくて、ただ見つめ返すことしかできなかった。