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レイリーはいろんな話をしてくれた。メインはゴールド・ロジャーの話。海賊の英雄的存在なロジャーの話を聞いてもっと偉大なものになって夢が膨らむ。ワンピースはどこにあるんだろう?あたしもロジャーと話してみたかった。でもあたしが生まれた頃にはもうこの世界にはいなくなってるんだもんね。

「あのおっさん!おれも1コだけ聞きてェんだけど。ひとつなぎの大秘宝、ワンピースってのは本当に最後の島に
「ウソップーー!!!」

ウソップがレイリーにワンピースのことを聞き出そうとしたのをルフィの大声が遮って止めた。いきなりでビックリして隣に座ったロビンに抱きついたら、ロビンはそんなに驚かなかったみたいでそんなあたしを見て笑った。大人の余裕?経験の差ってことかな。

「宝がどこにあるかなんて聞きたくねェ!宝があるかないかだって聞きたくねェ!何もわかんねェけどみんなそうやって命懸けで海へ出てんだよっ!ここでおっさんから何か教えてもらうんならおれは海賊やめる!つまらねェ冒険ならおれはしねェ!!」

ルフィがオヤジみたいにどっしりしてなくても強くてそういう時には頼りになるのは今まで何回も体感してきた。いつもおちゃらけて何も考えてないようなルフィだけど海賊として海に出てきた意思はとっても強くて固いものだったんだって今初めて知った。こういうところは意外としっかりしてるんだよね。

「わわわ、悪かった!わかってたんだけど口が勝手に今、滑ってよ!お、おれだって聞きたくねェよ!そうだ!おれワンピースについて知ったら死ぬ病だったァ!」
「やれるかキミに。偉大なる航路グランドラインはまだまだキミらの想像を遥かに凌ぐぞ!敵も強い。キミにこの強固な海を支配できるか?」
「支配なんかしねェよ。この海で一番自由な奴が海賊王だ!!」

ルフィは海を渡るための知識とかそういうのは全くないけどみんなを引っ張っていく船長の素質だけはあるんだ。だからあたしも今まで一緒にいられたんだ。



サニーのコーティング作業に取り掛かるレイリーと別れてあたし達はこれから作業が終わるまでの3日間、このシャボンディ諸島で海軍から逃げ回りながら完成するのを待つことになった。大将がいるんじゃそんなに余裕でいられないだろうな。どこで作業するか分からないからってレイリーのビブルカードをみんな一枚ずつもらった。これがあれば迷子が得意なゾロでも大丈夫。って呟いたら拳骨くれた。痛い。

どうしようか、さすがにみんなで歩き回れないから自由に過ごそうって話をしてたら上からバーソロミューくまが落ちてきた。この前会ったばっかりなのに。だけどなんだかおかしい。全然喋らないし目が合う感覚がない。いつものくまじゃないような不思議な感じ。それになんでこのタイミングで七武海が来るんだろう。

攻撃を仕掛けてくるくまにギアセカンドを構えるルフィと一緒に応戦する。ルフィが最初から全力を出すって言ってからサンジくんもゾロも最初から威力の強い技を繰り出した。

「おいお前今まで何回もあのくま見たことあんだろ」
「うん」
「様子が変だと思わねェか」
「……いつもと違う。戦い方が」

前に出る三人から一歩下がって様子を見てたら戦闘中なのに珍しくゾロが寄ってきた。ゾロは前に麦わらのみんなの中で一番くまと接触したから今日の様子がおかしい感じが分かるみたい。

「そんなに違うのか?じゃ、あいつ双子なんじゃねェのか!?」
「それも考えられる……」
「そんな話聞いたことないけど……」
「とにかく、本物なら瞬間移動でもっと攻撃を避けるはず。何より衝撃も飛ばさねェし肉球もねェ……!」
「なんでわざわざ敵の攻撃を避けないで正面から受けるんだろう。プラスになる事なんて何もないはずなのに。それに話しかけても答えてくれない。なんだか、別人みたい……」

戦っていくうちにやっぱりこのくまは本物じゃないってことになって、でもどうにかしなきゃいけないことには変わりないからってみんなで一気に畳みかけてやっと動かなくなった。ゾロはスリラーバークのときに本物のくまにもらった傷が開いたみたいで、他の誰よりも息が荒い。


今の戦いのせいかもしれないけど心臓のドキドキがなかなかおさまらなくて落ち着かない。また何かありそうな気がする。

「は、早く移動しようよ。きっとここにいるの気付いてるかもしれないし」
「もうちょっと待ってくれよ……」
「まったくてめェらやってくれるぜ!」
「え、何だ!?また敵か!?」
「どこから声が!」
「上だ!上!」

声の正体が上からすごい音を立てて落ちてきた。一人は変な格好しててもう一人はまたくまにそっくりのくま。変な格好した奴がさっきのくまのことをパシフィスタって言った。美味しそうな名前どこかで聞いたことあるような気がする。

「てめェは何者だ鉞ィ!」
「人を武器の名で呼びやがって。わいに質問しても無駄だ。お前達に教える事は何もねェよ!わいは世界一ガードの固い男!したがって口も固いんだ」
「名前くらい名乗ったらどうだ」
「何も答える筋合いはねェな。言ったはずだ。わいは世界一口の固い男、戦桃丸だ」
「戦桃丸だな……」
「あ、今のはわいが自発的に教えたんだぜ。てめェの質問には答えねェ」

変な格好の奴が声をかけるとくまがあたし達に手のひらを向けてビームを打ってきた。こいつも本物じゃなくて、偽物でさっきと同じ奴だって言ってた。

「今はその謎より身の安全だ。もう一戦すりゃ必ず重傷者が出るぞ!大将に遭う前に……!」
「ああ。ここは逃げよう!一緒じゃダメだ!バラバラに逃げるぞ!」
「逃げるの賛成!!」

「みんな!3日後にサニー号で!」

ルフィの号令でここからバラバラに逃げる事になった。一斉に走り出したみんなに付いていこうとしたら変な格好した奴があたしを呼んだ。

「お前白ひげんとこの娘っこじゃねェか。話には聞いてたがまだこいつらと一緒にいたのか」
「あたしの勝手でしょ!」
「こんなとこでのんびりしてていいのか?」
「今から逃げるもん!」
「そうじゃねェ。お前まだ知らないのか。呑気なやつだな」
「なによ!」
「いや……わいは世界一口の固い男!一週間後にポートガス・D・エースの公開処刑が行われるなんて言わねェ!」
「!!?」

はっきりしないからあんな奴放って逃げちゃおうと背中を向けたら思いもしなかったことを言われてまた足が止まった。だってエースの公開処刑がって言った。あたしの聞き間違いなんかじゃない。