「わらわに楯突こうと言うのか?」
「……えっ」
まさかあの人から声をかけられるなんて思いもしなかったから反応に困った。正直敵だとしてもあんな人と戦うのはもったいない、なんて思っていたら離れたところから聞こえてきた物凄い音を聞いてそちらに目を向けると同時に衝撃によって起きた風が押し寄せてきた。
風がおさまって何が起きたのかと顔を向けると視線の先にいたオーズが頭から血を流してフラフラな状態だった。よく見るとオーズの前にはバーソロミュー・くまがいる。今の衝撃はくまの
意識が朦朧としてるオーズはそれでも力を振り絞るように目の前の海兵達を倒そうと拳を振り下ろした。砂埃が立ちこめる中から影が一つ抜け出して空を飛んだ。大きめな影は確かドンキホーテ・ドフラミンゴ。姿を確認するとあっという間にオーズの右足は半分から下が切り取られて宙を飛んだ。
それに追い打ちをかけるように今度はゲッコー・モリアが得意の影を使ってオーズの心臓を下から貫いた。
ポタポタと顔から流れる血が多くなって弱々しくエースを呼ぶオーズ。あの大きな体が揺れると力を無くして前に倒れた。
「オーズ……」
前にオーズに会ったとき、エースが作ってくれたんだって頭に大きい傘みたいな帽子を被って喜んでいた顔を思い出した。本当に嬉しそうにずっとずっと笑顔だった。
「オーズを踏み越えて進めェ!!」
オーズが倒れた衝撃で棒立ちになっていたところをオヤジの一声がみんなを奮い立たせた。頑張りを無駄にするなという事なんだろう。
ひとまず向こうから仕掛けてくるわけじゃなさそうだから、あの女の人は避けて後回しにする事にした。
いくつもの竜巻を起こして周りの海兵を蹴散らした。ここならちょうど仲間の海賊達がいないから気兼ねなく風を起こせる。
もう一度エースがいる処刑台を見上げると視界の端に何か黒いものが入った。よく見ると大きな船が逆さまになって落ちてきているみたいだ。それと一緒にたくさんのゴマみたいな点も。なんで上から……なんて考えてる間に叫び声と一緒に海に落ちていった。
「エーースーー!!」
いきなり降ってきた軍艦に騒ついているととっても聞き慣れた声が聞こえた。でもまさか、なんて思って軍艦の周りを探すと軍艦の上に声の主のルフィがいた。
「ルフィ!?」
「助けに来たぞーー!!」
なんでここにルフィが。どうやってここまで来たんだろうとか突然降ってきたせいで幻なんじゃないかと思った。でも登場の仕方がルフィらしくて疑いはすぐに消えた。
ここからは遠いけど見た限り元気そうなルフィに安心する。だけどその周りにいる賑やかなメンバーに首を傾げる。ジンベエと、クロコダイルまで。派手な顔の人もいれば赤い鼻もいる。網のタイツを履いた人もたくさん。どこから連れてきたんだろう。
「ルフィー!」
「ルフィ……!そなたよくぞ無事で!」
まさか近くでルフィの名前があがるなんて、とそっちを向くとさっきの女の人が頬を赤くしていた。あたしの声も聞こえてたみたいで同じようにこっちを見てまた睨んできた。
「……そなた今ルフィと……?」
「えっと……はい……」
この人とは話しづらい。反抗したらきっと石にされてしまうからなるべく穏やかな気持ちでいてもらえるように無意識に言葉には気をつける。じっと見つめていると冷や汗が垂れてくる感覚がした。
「何者じゃ……!」
「し、白ひげ海賊団、です」
素直に答えたのに疑いの目を向けられた。だけど何かに気付いたのか両手を頬に当ててまた顔を赤くした。何かと思って釘付けになってるあたしの背中の向こう側を見るとオヤジの前にルフィとクロコダイルがいた。ルフィはクロコダイルを睨んでる。そしてオヤジと何か話してるみたいだ。
「相手が誰だかわかってんだろうな。おめェごときじゃ命はねェぞ!」
「うるせェ!お前がそんなこと決めんな!おれは知ってんだぞ。お前海賊王になりてェんだろ!海賊王になるのはおれだ!!」
いきなり大声を出し始めたと思ったらオヤジの目の前であんなこと言うなんて。うちの船長に面と向かって言ってのけたルフィに周りにいた海賊達も、海兵達も驚いた。ルフィが怖がるところなんて見たことないけどまさかオヤジにもあんなこと言ってしまうなんて思いもしなかった。
「……クソ生意気な。足引っ張りやがったら承知しねェぞハナッタレ!」
「おれはおれのやりてェ様にやる!エースはおれが助ける!」
初対面のオヤジの前であんな堂々してるルフィにみんなも衝撃を受けているみたい。
オヤジには前にエースがルフィの手配書を見せてたから、顔を覚えててくれたみたいであんな風に話しても敵に回す気はないみたい。でもまさか二人が揃ってるところを見られるとは思ってなくて嬉しくて自然と口角があがる。ルフィに何でここにいるのか聞かなくちゃ。