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いきなりこの戦場に現れたルフィと一緒にエースのもとへ。倒しても倒しても立ち塞がって来る海兵達をゾンビか何かなんじゃないかと思った矢先に、モリアによって操られた海兵達が現れた。でも一瞬のうちに海水に飲まれて一斉に倒れた。助けてくれたのはジンベエで久しぶりに会ったから声をかけようかと思ったら巨人族の海兵が金棒を構えてこちらに向かってきた。

『何をしている。たかだかルーキー一人に戦況を左右されるな!その男もまた未来の有害因子!幼い頃エースと共に育った義兄弟でありその血筋は革命家ドラゴンの実の息子だ!』

センゴク元帥の声が電伝虫を通して戦場に伝わった。当のルフィはどよめく戦場を構いもしないで自分の拳を膨らませた。

「WギアサードW!Wゴムゴムの巨人の回転銃ギガント・ライフルW!!」

巨人族はルフィの一撃を受けて勢いのまま包囲壁に叩きつけられて倒れた。真上で起こった事に迫力がありすぎて口が開いた。

「エースー!好きなだけ何とでも言えェ!おれは死んでも助けるぞォ!」

戦場の雰囲気に飲み込まれず、圧倒される事なく、ルフィはいつものルフィのままでこの場の全員に宣言した。あたしもだ。エースにもらった恩をここで返す。必ず助けるから。


走り出したルフィについて行こうとするとあたしを狙って海兵が何人も束になって押し寄せてきた。

「W鮫瓦正拳W!」

手をかざして風を起こすのより早く、衝撃波がたくさんの海兵を吹き飛ばしていった。

「相変わらずどこかぼーっとしていて危なっかしいのう」
「ジンベエ!」
「頼もしく見えたのは間違いじゃったな」
「そんなことないよ!」

自分では分からないけどオヤジには変わったって言われたのにジンベエには伝わってないのかな。挽回しようと側にいた海兵を蹴り倒して進んだ。


ルフィに追いついたときには派手な顔の人もいた。あの人は一体何なんだろう。気になって仕方ないから聞いてみたい。だけど今は聞いちゃいけない気がする。
でも気になる。網タイツとツヤツヤしたブーツを履いて、着ているものは肌が出ている範囲の方が広いもの。お化粧もバッチリ。まじまじと見ていたら前を走っていた本人と目が合ってしまった。チカラのありすぎる目で見られて少したじろぐ。

「……ヴァナタ。今ヴァターシのこと舐め回すように見タブルね」
「えっ……」
「ヴァターシに何か用?」
「いや、用はないです……」

あるっちゃあるけど、あなたは何者ですかなんて聞いたら怒られそうだから言えない。

「そういえばヴァナタ、さっき白ひげと話してタブルね。こんな戦場に女一人で……。もしかしてヴァナタが白ひげの末娘と噂されるガールね?」
「はい」
「イワちゃん!そいつおれの船のクルーなんだ!敵じゃねェ」
「そんなことは分かっチャブル。そんな子がなんで麦わらボーイといるのか気になるけど今はそんなこと言ってられナッシブル。ヴァターシはイワンコフ!イワ様とお呼び!」
「イワちゃんでいいよ!」
「コラ!」

間をとってイワさんと呼ぶことにしよう。ルフィは色の濃い人達を引き連れてきたなとしみじみと感じる。



気を取り直してまた走り出すとすぐにモリアに足止めを食らった。目的がジンベエだと分かるとあたし達を前に進めるために望み通りにとモリアの相手を買って出た。

先程革命家ドラゴンの息子だと公にされたルフィに海兵からの攻撃が集中するようになったので竜巻を起こして蹴散らした。こんなところで手間取ってる暇はないんだ。


こちらに速いスピードで向かってくる気配を感じ取って手を振りかざそうとすると、割って入るように剣で薙ぎ払われる。上に飛んで避けるとそこにはアラバスタで会ったスモーカーと一緒にいる部下のたしぎがいた。たしぎがルフィに向かって行くのを阻止しようとしたあたしを牽制したおかげで、自慢の十手でルフィを殴りつけたのはスモーカー。

海楼石を使っている十手のせいで普通だったら打撃は効かないルフィも強く飛ばされて血を流した。

「ルフィ!」

自然系ロギアの能力者であるスモーカー相手に超人系パラミシアの能力者のルフィじゃ分が悪い。まだ覇気も扱えないし、あの十手もあると余計に。
空中で体勢を変えて助けに行こうとするとあたしの着地点でたしぎが待ち構えていた。空を弾いて方向転換して着地すると逃さないようにと追いかけてきた。

目線をずらすとルフィが十手を喉に押し付けられて組み敷かれていた。あたしが行けばスモーカーを吹き飛ばすことが出来る。たしぎからの一振りを躱して助けに向かおうとすると、助けに入った人にスモーカーが蹴り飛ばされてルフィは自由になった。