019

「ねえ、エース」
「ん?どうした」

我慢していた涙がやっと止まったことを確認して顔をあげるとあたしを見たエースが親指で溜まってた涙を優しく拭いてくれた。

「なんか、ザワザワする」
「……どうした?」
「心配だよ。オヤジ達に止められなかった?1人で来て」
「そりゃ止められたさ。けどじっとしれられなかったんだ。ふりきって来た」
「……今ごろ心配してるよ、みんなも。帰ったらマルコとオヤジに怒ってもらうから」
「やめてくれよ」

戯けたように言うエースをみたらまた不安になってきて頭を下げる。この胸騒ぎは何なんだろう。ずっとざわざわして落ち着かない。

「……。ねえエース、ほんとに行かなきゃいけないの?」
「おれは行く。あいつを野放しにしておくわけにはいかねェ」

なにを言っても考える素振りもしない。ルフィとよく似てるところだと思う。というか男の人はみんなそうだ。一度決めたことはよっぽどのことがない限り曲げない。エースは特にやるって決めたらやらなきゃ気が済まない性格だって分かってるけど、今回はどうしても行ってほしくない。

「ルフィ、もう少しリリナの事頼むな」
「あたり前だろ!ナマエはもうおれの仲間だ!」
「……そうなのか?」

ルフィのその言葉にモヤモヤした気持ちがふっ飛んだ代わりに驚いて嫌な汗がどばっと出てきた。

「仲間じゃないけど誘われちゃって、それで今仮っていうかとりあえずっていうか!」
「ふーん。お前リリナを仲間にしたいのか」
「ああ!」
「うちの船長はリリナの事すげェ気に入ってるからな。簡単にゃ納得しねェと思うぜ?」
「そんなの知らねェ!もう決めた事だ!」
「ははは!まあおれがさせねェけどな」

ルフィとエースの会話をソワソワしながら聞いてると最後のエースの言葉が引っかかった。それって素直に受け止めていいんだよね?さらっとそういうこと言わないでよ恥ずかしい。でもとっても嬉しい。

「用が済んだらお前を迎えに来る。大丈夫だ、そんな心配すんな。帰ったらまたひなたぼっこ付き合ってやっから」

口を開かなかったあたしに続けてそう言うとまたさっきみたいに頭を撫でてくれた。それのおかげで魔法をかけられたように不安もだいぶ消えた。

「……わかった!」
「ルフィ、次に会うときは海賊の高みだ」
「おう!」
「じゃあな、リリナ」

ストライカーに乗ってバロック・ワークスの船を火拳一発で沈めたエースに手を振って見送る。そうだ、エースは強いんだ。ティーチなんかに負けない。エースの強さを疑ってごめんね。ティーチと決着つけて迎えに来てくれるの待ってるから。