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「なんっでこんなに寝起きが悪いの!?この子は!」

前からずっと思ってた事だけど。この子を船に乗せて最初に寝てるとこを起こしに行ったら全然起きなくて、最終的にベッドから落としたらやっと起きたぐらい。落としたっていうかシーツを引っ張った拍子に落ちちゃったんだけど。

それ以来リリナの起こし方はいつもこれ。今日もそうやって起こしたらサンジくんが青い顔してリリナを匿ってて面白かった。昨日のヤキモチもそうだし、サンジくんやっと自覚したのかしら。


ビビの知り合いのおじさんから、昨日とれたての水をもらって少し歩くと枯れた木に持たれかかるようにルフィが座った。口曲げて何やってんのよ、あいつ。

「どうしたの?ルフィさん」
「やめた」
「は!?」
「やめたって……!?ルフィさんどういうこと!?」

昨日まではやる気満々でここまで来たのに、いきなりどうしたのよ。

「おいルフィこんなとこでお前の気まぐれに付き合ってるヒマはねェんだぞ!さァ立て!」
「戻るんだろ」
「そうだよ。昨日来た道を戻ってカトレアって町で反乱軍を止めなきゃお前、この国の100万人の人間が激突してえれェ事態になっちまうんだぞ!ビビちゃんのためだ!さァ行くぞ!」
「つまんねェ」

真面目な顔して言うから何かあるんだとは思うけど、ほんとなに考えてんのか分からないわ。

「……ビビ」
「なに?」
「おれはクロコダイルをぶっ飛ばしてェんだよ!反乱してる奴らを止めたらよ、クロコダイルは止まるのか?その町へ着いても俺たちは何もすることはねェ。海賊だからな、いねェほうがいいくらいだ」
「こいつは考えもなしにたまに核心をつくよな」
「ルフィのくせにな」

私も納得した。町に着いてからのことなんて全然考えてなかった。

「それは……」
「お前はこの戦いで誰も死ななきゃいいって思ってるんだ!国のやつらも、俺たちもみんな!七武海の海賊が相手でもう100万人も暴れ出してる戦いなのに、みんな無事ならいいと思ってるんだ!甘いんじゃねェのか」
「ちょっとルフィ!あんた少しはビビの気持ちも……」
「ナミさん!待った」
「だけど……!」
「何がいけないの!?人が死ななきゃいいと思って何が悪いの!?」
「人は死ぬぞ」

ルフィがそう言うとビビが思いっきり平手打ちをしたら、スイッチが入ったみたいに声が大きくなった。

「やめてよ!そんな言い方するの!!今度言ったら許さないわ!今それを止めようとしてるんじゃない!!反乱軍も!国王軍も!この国の人たちは誰も悪くないのに!!なぜ誰かが死ななきゃならないの!?悪いのは全部クロコダイルなのに!!」
「じゃあ何でお前は命賭けてんだ!!」

起きあがったルフィがグーでビビの頬殴ったらさすがにウソップが制止の声をあげた。あいつちゃんとビビが耐えられるくらい手加減したんでしょうね。

「おいルフィ!やりすぎだ!!」
「てめェルフィィ!」
「この国を見りゃ一番にやんなきゃいけねェことくらいおれだってわかるぞ!お前なんかの命一個で賭け足りるもんか!」

ビビはルフィの上に跨がって何回も何回も平手打ちを食らわしてるけど、ルフィからはさっきの一回きりだからちゃんとわかってるのね。

「じゃあ一体何を賭けたらいいのよ!他に賭けられるものなんて私何も
「俺たちの命くらい一緒に賭けてみろ!!仲間だろうが!!」

ルフィが一番声をあげて言うとビビが泣き出した。

「……なんだ、出るじゃねェか。涙」

私が顔を隠すように泣いてるビビを宥めにいくと、取っ組み合いで転がった麦わら帽子を拾って砂を落とすルフィ。

「……本当はお前が一番悔しくて、あいつをぶっ飛ばしてェんだ!教えろよ、クロコダイルの居場所!!」

大事になるだろうけど、そっちの方が私達にとってもしっくりくるわね。覚悟していかなきゃ。