027

「こうみょうなわなだ」
「ああ、しょうがなかった」
「敵の思うツボじゃない!避けられた罠よ!バッカじゃないの!?あんた達!」

檻の中に閉じ込められて落ち着くために床に座ってじっとしてみる。スモーカーまで一緒だなんてついてないなあ。

「それよりおれさっきから力が抜けて……」
「何だ、ハラでも減ったのか?」
「ルフィ!」

ぼんやり考えごとをしてたらスモーカーが十手でルフィのおでこを一突きして怯ませて、その十手の先をお腹のあたりに突きつけた。

「て、てててめえ!やるならやるぞ煙野郎っ!おれは爆弾人間を仕留める……アシストをした男だ!」
「なんだ?力が入らねェ……!水に落ちたときみてェに……」
「ああ、そうだろうな」
「な、何だ何だてめェルフィに何をした!?」

みんなの様子を見てる限り、まだ海楼石の事は知らないみたいだから平然を装おうって座ったまま様子をみる。スモーカーと目が合ったけど。

「この十手の先端には海楼石って代物が仕込んである。とある海域にのみ存在する不思議な石だそうだ。海軍本部の監獄の柵は全部こいつでできてる。能力を持つ犯罪者が逃げられねェ様にな。まだまだ謎の多い鉱物だがわかってることはこの石が海と同じエネルギーを発してるってことだ。海が固形化したものだと考えればいい」
「それでルフィが弱っちまうのか!」
「じゃあこの柵も同じ物で……」
「でなきゃおれはとっくにここを出てる。お前らを全員二度と海へ出られねェ体にしてからな」
「ぎゃーー!待て待て、おいこんな状況で戦ってどうすんだ!」
「それにゾロこの男に刀なんか……!」
「その通りさ、やめたまえ」

スモーカーのギロッとした目つきに反応してウソップがまた慌てだした。それに反応したのはゾロも同じみたいで柄に手を添えてまさに一発触発、ってとこで低い声がその中に割って入ってきた。

「共に死にゆく者同士、仲良くやればいいじゃねェか」
「クロコダイル」
「おーおー。噂通りの野犬だな、スモーカーくん。おれをハナから味方と思ってくれてねェようだ。だがそう、そりゃ正解だ。てめェにゃ事故死してもらうことにしよう。麦わらって小物相手によく戦ったと政府には報告しておくさ、ハハッ。何しにこの国へ来たのか知らねェがどうせ独断だろ。政府はおれを信じてるからな。ここへ海兵をよこすはずがねェ」

もう1人、こいつの目もあたしの嫌いな目。目だけじゃない、こいつの事は全部嫌い。スモーカーの嫌いとはちょっと違う、何考えてるのかわからないくて気味悪い。

「あいつが七武海の1人か」
「久しぶりだな、小娘。こんなところに1人で白ひげや火拳はどうした。さすがにあの老体に飽き飽きしたか?」
「オヤジをバカにしないで」

立ち上がったクロコダイルの目が、スモーカーからあたしに向けられて睨み返す。

「お前ならおれのとこに匿ってやってもいいんだぜ」
「誰があんたのとこなんかに。政府側の力を借りて国を支配しようとしている男なんかに、ついて行く価値はないんだから!」
「……よく言うじゃねェか」

そう言ってやると上がっていた口角がもっとあがって鼻で笑った。

「お前が、クロコダイルか……!おい!お前ェ!勝負しホ……」
「だからその柵に触るなって!」
「麦わらのルフィ、よくここまで辿りついたな。まさか会えるとは思ってもみなかった。ちゃんと消してやるから少し待て。まだ主賓が到着してねェ。今おれのパートナーに迎えに行かせたところだ。お前らはもう少し檻の中を満喫してろ」

変わらない顔でそう言うと、また椅子に座ってテーブルの上の食事に手をつけ始めた余裕さに少し苛立って静かに深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。


そんなときルフィがサンジくんのマネしてふざけて出して、それを見て大笑いしてるウソップの2人をナミが叱ってるのを見たらおかしくて心が落ち着いた。ナミは大変だ。今度はゾロにゲンコツしてる。

「威勢のいいお嬢ちゃんだな」
「何よ!そうやって今のうちに余裕かましてるといいわ!こいつらがこの檻から出たらあんたなんか雲の上まで吹き飛ばされておしまいよ!そうでしょ!?ルフィ!」
「あたりめェだこのォ!!」

クロコダイルと話してても怖がらないで言い返したナミをみて、やっぱり女は度胸なんだって思った。あたしなんてクロコダイルを初めて見たとき怖かったのに。

「ずいぶんと信頼のある船長の様だな、麦わらのルフィ。……信頼。クハハ、この世で最も不要な物だ」

そう言われてますますナミの怒りが治まらなくなって、ウソップが宥める。

「クロコダイル!!」

2人を見てたとこで違うほうからビビの声が聞こえた。よかった、無事みたいだ。

「……やァ、ようこそアラバスタの王女ビビ。いや、ミス・ウェンズデー。よくぞ我が社の刺客をかいくぐってここまで来たな」
「来るわよ!どこまでだって……!あなたに死んでほしいから!Mr.0!!」
「死ぬのはこのくだらねェ王国さ。ミス・ウェンズデー」

クロコダイルのその言葉に血相を変えて階段を下りてきたビビは服の中からヒモの先に何かが付いてるものとチェーンみたいなのを出してそれをクルクル回してクロコダイルに向かってく。

「お前さえこの国に来なければアラバスタはずっと平和でいられたんだ!!」
「待てビビ!ここを開けろ!おれ達を出せ!!」
「W孔雀クジャッキー 一連ストリングスラッシャーW!!」

チェーンみたいなのをクロコダイルに向けて打つと頭とその後ろにあった椅子の背もたれまでスッパリ切れた。かっこいい。けど、残ったクロコダイルの体がサラサラと砂に変わってビビの周りを漂って、そのままビビの体の自由を奪うのと一緒に砂から実体化した。

「気が済んだかミス・ウェンズデー。この国に住む者なら、知ってるハズだぞ。このおれのスナスナの実の能力くらいな。……ミイラになるか?」
「WドゥルヒシュナイダーW」

ビビに当たらないようにクロコダイルの腕を風圧で切り裂き、ビビを解放させた。もちろんあいつの体に傷はついてない。

「……お前の風は石が役に立たねェから厄介だな」
「なんでも思い通りにはいかないから」

また睨んで威嚇すると背を向けて歩き出して、ビビを無理やり椅子に座らせた。海楼石は効かないっていってもこんな檻の中だからできる事が限られちゃう。

「座りたまえ。……そう睨むな。ちょうど頃合。パーティーの始まる時間だ。違うか?ミス・オールサンデー」
「ええ、7時を回ったわ」

あいつが言うパーティーだなんて楽しい事じゃないだろうし、きっと何か始まっちゃうんだろうな。