029

ルフィさんと睨み合っていたクロコダイルが向かっていた通路の床をあけると、バナナワニが水中から顔を出してこの部屋にあがってきた。水中にいるところを見るよりも大きく見えるバナナワニに冷や汗が流れて体が震えるのがわかる。なんて大きさなの……。

「よし勝て!ビビ!」
「無茶いうなデカすぎるぜっ!ビビ!逃げろ!無理だ!で、でも助けてくれ」
「無茶言ってんのお前じゃねェか!」

ルフィさん達が檻の中で騒いでるけどよそ見できないくらいバナナワニは私に狙いを定めてる。先に動き出したのはバナナワニで、口をあけた隙を狙ったときには目の前に来てたから咄嗟に避けたら私の後ろにあった階段が抉るように食いちぎられてしまった。それに呆気にとられていたらしっぽが飛んできて吹き飛ばされて頭をうってしまって痛くてすぐに起きあがれない。ルフィさん達が声をかけてくれてるのに。

そんな時にこの騒ぎを鎮めるかのように電伝虫が鳴った。私達は持ってないからきっとクロコダイルの。ミス・オールサンデーが応えたみたいだけど何やら上手く話が噛みあってないみたい。

「おい!さっさと要件を言え!何があった!」
『ああ、その声。聞いたことあるぜ。え〜こちら、クソレストラン』
「クソレストラン……!?」
『へえ、憶えててくれてるみてェだな、嬉しいねェ』

襲ってこなくなったバナナワニの様子を伺いながらそのやりとりを聞いてなんとか起きあがった。クソレストランってサンジさんのことよね。そうだ、サンジさんもトニー君もまだ外に……。

「てめェ一体何者だ……!
『おれか、おれは……Mr.プリンス』
「……そうかMr.プリンス、今どこにいる」
『そりゃ言えねェな。言えばおめー俺を消しに来るだろう?まァお前に俺が消せるかどうかは別の話でやすやすと情報をやる程俺はバカじゃねェ。お前と違ってなMr.0』
「プリンスー!助けてくれェ!捕まっちまってんだよォーっ!時間がねェんだ!!」
『はは。そばにいるみてェだな、うちのクルーは。じゃあこれから俺はーー』

檻の中からのSOSの声を確認して話を続けようとしたところで重い銃声がそれを遮ったら、そこからサンジさんの声が聞こえなくなって代わりに違う男の人の掠れた声が聞こえるようになって、血の気が引いた。サンジさん!?そんな……。

『ハァ、ハァ、てこずらせやがって。……もしもし!?捕らえましたこの妙な男をどうしましょう』
「……そこはどこだ?場所を言え」
『ええ、レインベースにあるレインディナーズというカジノの正面ゲートです』

どうしよう。あんなにあっけなくサンジさんがやられちゃったなんて思えないけど、この建物の入り口の前って言ってたわよね。私がみんなを助けてあげなくちゃ。頼ってばかりいられない。