033

ルフィがクロコダイルに向かって行ってからビビから状況を説明してもらった。クロコダイルはこの宮殿の広場周辺を爆発させる気でその砲撃をする人がどこかにいるんだって。

「考えてるヒマはねェだろ。時間はあと10分しかねェんだ」
「でもお前っ、直径5kmって事は少なくともここから2.5kmは離れた所から狙ってんだろ!?」
「いいえ!違う。おそらく、砲撃手はこの広場の近くにいるわ!」
「何でだよ。そんな事したらその砲撃手ごとドカーンと……」
「そういう男だって事ね。クロコダイルは」

もともとあいつは仲間なんて作らないから目の前で顔見知りが死んだところで何とも思わないだろうし、もしかしたら笑って踏んだりするかもしれない。

「味方が死んでもいいのか!?」
「食えねェ野郎だ」
「じゃあさっさと……」

言葉の途中で後ろの気配に気付いたゾロが一本だけ抜刀して、ビビを狙うそいつの刀を抑えるのと同時にサンジくんがそいつの顔を蹴り倒した。

「見つけたぜビビ王女ォ!」
「おめェを殺せばどこまで昇格できる事やら!」
「ビリオンズ!」
「……っあ!」
「何?どうかしたリリナ!」
「う、ううん。何でもない!」

緊張感のない気が緩んでいる自分に気付いたとき、思わず声を出してしまった。今も後ろから狙われていることに気付いたとき、両サイドがサンジくんとゾロだしって自分で動くのをやめていた。砂漠のときも気をつけようって思ったばっかりなのに。

「リリナ何してんの!早く行くわよ!」
「う、うん!」

そんな自分を奮い立たせるように、砲撃手を一番最初に見つけてやろうと意気込んで街中を走り回った。

「直径5kmってどれくらいかな?広いんだよね?」

みんなと別れて一番高い時計台の上に乗って町を見渡すと、そこらじゅうから砂煙があがってる。だいたいこの塵旋風が起きてる範囲内かもしれない。

「でも考えなきゃわからない!」
「そういう時こそ意外と近くに答えがあったりするのよ」

時計台から下りようと足を離した瞬間銃声が聞こえたと思ったら、胸の辺りにものすごい重い痛さを感じてすぐに口から血を吐きだした。
久しぶりのこの痛み、銃で撃たれたんだ。体を反転させて時計台をみると、数字と数字の間から小さなカエルが覗いてて煙があがってる。あれが銃か。怪しいな、あそこに、きっと砲撃手がいるんだな。

着地しようと体を動かそうとすると胸の傷がぎゅって痛くなって足も手も動かせなくてそのまま地面に落ちてしまった。その衝撃がものすごく痛くて手が震える。でも早くみんなに知らせなくちゃ。

「服に、血がついちゃった。洗えば落ちる、かな。……ってそんなこと、考えてるヒマないのに」
「時間はあと5分」

時間がない。早く、早くしなくちゃ。ちょっと、頭がぼやけてきた。くらくらする。血が、出すぎてるかな。そんなにひ弱だったっけ?体が重くて動かない。……あ、赤い狼煙だ。ウソップかな?なにか見つけたのかな。ここに来てくれるんだといいな。