034

意識がもやもやし始めたとき、砂煙の向こうからみんなの声が聞こえた。ビビとウソップに、ナミとチョッパーも集まってきた。

「リリナの匂いだ!」

鼻の効くチョッパーがあたしがいる事に気づいてくれたとき、ちょうど砂煙が晴れてみんなの姿が見えた途端、目を丸くして駆け寄ってきてくれた。

「ちょっと!あんたどうしたの!?」
「血が!撃たれたのか!?」
「うん、ちょっと油断してさ。でも大丈夫。一発だけだから」

壁に横たわるあたしを見て心配そうに眉間にシワを寄せてるビビに大丈夫だよ、って笑いかける。

「すぐに手当てしないと!」
「あたしはまだ大丈夫。早くしなきゃ」
「でもっ」
「おーい!ナミさーん!ビビちゃーん!」

心配してくれるチョッパーを遮るように上からサンジくんの声が聞こえて安心した。サンジくんがいればなんとかしてくれる。

「何でお前がそこにいるんだー!」
「何でっててめェが煙の下にメッセージ残してたろ。時計台って書いてあったから登ってきたんじゃねェか。どうすりゃいい!?砲撃手はどこにいるんだ!」
「てっぺんだてっぺん!そのまま登ってブッ飛ばして……」
「よォ!探したぞお前ら!」
「ゾロお前もかァ!」

ウソップが忙しなくゾロと話してる間に真下のあたしに気づいたサンジくんが声をかけてくれたけど、すぐにあたしの状態に気づいて慌て始めた。そんなに重傷じゃないし、平気なんだけどまだ血は流れてて体が全然動かないからサンジくんを見あげることもできない。

「でも、とにかくでかした!そっから上へ行って……」
「ダメ。二人の位置から時計台のなかへは入れない。あそこへ行くには一階の奥にある階段が唯一の到達手段なの」
「でも、ゾロならあの塔の壁を壊して……」
「そんな衝撃に耐えられる砲弾とは限らないわ!やっぱり階段から行くしか」
「待ってビビ!」
「あたしが動ければすぐに上に連れてってあげられるのに……」
「大丈夫よリリナ!いい考えがある!」

ナミの言葉に首を傾げるとさっき聞いた笑い声が上から聞こえてきた。結局チョッパーに丸めこまれて手当てをしてもらって、少しラクになった。


「ねー聞いてMr.7。あたし知ってんの!これってあたし達の最終任務なの!」
「オホホホホそういうスンポーだねオホホホホ。今30秒前ってスンポーだねオホホホホ」
「Mr.7!」
「ゲーロゲロゲロゲロゲロ!ねー聞いてMr.7!これって結構大役だと思うの」
「その通りだねミス・ファーザーズデイ」
「もしかしてあたし達、後々すっごい地位を貰えるんじゃないかって思うの!ゲロゲロゲロ」
「オホホホホそういうスンポーだといいねー。いーねいーねミス・ファーザーズデイ。なにしろオホホホ、そんな大きな大砲を群衆のド真ん中に撃ち込ーむスンポーだからね!いーね!オホホホ」
「ゲロッ!そろそろよっ!Mr.7!」
「点火の準備よーし!」

なんだか勝手に話してる間にナミが考えた作戦の準備を始めて、ウソップの上にチョッパーが乗ってその上にまたビビが乗った。ウソップは包帯ぐるぐる巻きなのに一番下って可哀想だ。

「やればわかるからっ!行くわよ!天候は、"台風"!"サイクロン=テンポ"目指すは時計台っ!」

ナミのロッドがクルクル回転してウソップをくぐったとき、いきなり爆風に似たような風が起きて上にいたウソップが飛びあがった。衝撃で涙を流すウソップはお気の毒だけど、ナミの計算通り3人は垂直にあがっていった。

「チョッパー!そこからサンジくんのいるとこまでジャンプ!サンジくん後はわかるでしょ!?時間がないの!」

あたしの心配をよそにサンジくんの近くまで飛んでったウソップを踏み台にして、チョッパーがジャンプしてサンジくんのとこまで跳んでいく。
充分な説明をされていないサンジくんなのに、飛んできたチョッパーを片足に乗せて蹴りあげ、ゾロのとこまで跳ばした。

踏み台にされたウソップが落ち始めたから、さっき少し手当てしてもらったおかげで少し動くようになった腕を動かして地面に叩き落されないように風に包んで着地させてあげた。

「ふいーっ。どうなるかと思ったぜサンキューリリナ」
「どういたしまして」

ウソップに笑いかけるとさっきより辛くなくなった。さっき塗ってもらった薬ってすぐ効くやつかな?

「ミス・ウェーンズデイ!」
「ゲロゲロ!あたし知ってんの!アイツ我が社の裏切り者よ」
「気づかれたーっ!」

ナミの声にゆっくり顔をあげてみたけど、この真上が時計台だからわからない。

「あと7秒よ!」
「何とかしやがれェー!!」

それからすぐに銃声が聞こえてゾロが撃たれた。黒い影が落ちてきているのを見つけて、ウソップのときと同じように風を起こして受け止めた。

「リリナちゃん怪我は大丈夫か!?どこをやられたんだ!」
「大丈夫だよ。さっきチョッパーに手当てしてもらったから」

心配してくれるサンジくんに笑いかけると眉尻を下げて困った顔をしてた。大丈夫だということを分かってもらうために立ち上がると、目眩がして体が傾いた。サンジくんが支えてくれたおかげで倒れずに済んだ。

「ありがとう」
「無茶しちゃダメだよ」


上をみるとゾロとチョッパーの他に2人が落ちてきてるけど、さっきの砲撃手だと分かりゾロとチョッパーだけ着地させた。

「みんな大変!砲弾が時限式なの!このままだと爆発しちゃう!!」
「な、何だとォーー!?」

ビビが顔を出さないことに心配して塔を見上げていると、まさかの展開に驚いて声をあげた。今から町を吹き飛ばしてしまうほどの爆弾をどうやって遠ざければいいんだろう。ルフィがいてくれたら、万事解決なんだろうけど。