037

みんなで力を出しあって町の修復をしてる様子をみてると、反乱があったなんて嘘のようだ。やっぱ王女がかわいいと違うんだな。そりゃそうだおれだってあんな王女がいたら壊れた町なんて一晩で直してた。反乱が起こる前よりいい方向に変わったと分かる。

変わったといえばおれもだ。ユバに行く前に船でナミさんにあんな事言われて、もの凄くリリナちゃんを意識してしまっていたが、どうやらナミさんが言ってた事は本当らしい。
ちょっとでもリリナちゃんの姿が見えなくなるだけで心配で仕方ないし、この目に届くとこにいるときは心臓が煩い。笑顔なんて見てしまったら破裂する勢いだ。恋ってこんなに危ないものだっただろうか?そうとも知らずおれは軽々しく恋だ愛だと騒いでたもんだ。生死を掛けた恋をスタートさせてしまっているようだがらおれは死ぬつもりはない。彼女の笑顔を守る騎士ナイトになってみせる。


そうと決まったら行動あるのみ。確かリリナちゃんは洗濯にハマってるって言っていた。洗濯にハマるってリリナちゃん嫁修行かよ。どこに嫁ぐつもりだ、おれにだったらその場で卒倒する勢いだが、他の野郎にだったらさっそく失恋することになる。

「しかし洗濯ってリリナちゃんとことん可愛いことしかしないつもりだな。卑怯だぜまったく」

リリナちゃんに会いに宮殿の中庭に行くとすぐに風になびく白いシーツや、おれ達の洗濯物が目に飛び込んできた。あれがリリナちゃんの努力の成果か。

「えーっとリリナちゃんは……」

仕事道具はすぐに見つかったが肝心の本人がなかなか見つけられない。どこかに行ってしまったのかと思いつつ、確認しながら洗濯物に近寄っていくと、どこからかこの場に相応しくない音が聞こえてきた。

「ぐおーー⋯⋯」

誰かのイビキだ。清々しい雰囲気をぶち壊すような不快な音に自然と眉に力が入る。音の根源を見つけようと近寄れば木陰にその正体を見つけた。それだけならまだしも、その側に寝ているリリナちゃんもいた。

その事実に身体の中から沸々と何かが湧きあがり、その衝動を抑えきれずに声を張り上げる。

「っんでてめェがリリナちゃんと仲良く寝てんだクソマリモおぉ!」
「ん?」

気持ちよさそうに寝やがって。てめェにリリナちゃんの寝顔を独り占めさせてたまるか!イラついて勢いのままひと蹴りしてやったら寝ぼけたように目を開けた。

「なんだお前。邪魔すんな」
「うるせェ!仲良さげに一緒に寝やがって何様のつもりだこの野郎!」
「あ?……なんでおめェにそんなこと言われなきゃなんねェんだよ」
「リリナちゃんと一緒に寝ようなんざ1000万年早ェんだよ!クソマリモ!つーか今の間は何だ!」

頭が働くようになってきたマリモと言い合いを繰り返して掴みかかったとこで、小さい声をあげてリリナちゃんが目を覚ました。

「……あれ、サンジくん。どうしたの?」
「リリナちゃん!」

ぼんやりする目を擦りながらゆっくり起きあがったナマエちゃんは欠伸をしてからおれ達を見てきょとんとした。寝起きの顔も格別だ。クソかわいい。

「そうだ。ルフィが目を覚ましたんだ。これから会食をするらしいから迎えにきたよ」
「ご飯?もうそんな時間か。そんなに寝ちゃってたんだ。お洗濯取りこまないと」

まだ起きたばかりで意識がはっきりしてないのか、ヨロヨロと起きあがってシーツを取りこもうとしたら何かにつまづいて豪快に転んだ。それを見て大口あけて笑いやがったクソマリモ。すぐにリリナちゃんを起きあがらせると額が少し赤くなってて、本人も痛そうに涙を浮かべている。そんな表情さえ可愛い。

「痛い……」
「どんくせーなお前」

額を摩るリリナちゃんを未だに笑ってやがるゾロに蹴りを入れようとするとリリナちゃんに止められた。どうやら気にしてないらしい。マリモを庭から追い払って洗濯物を取りこんで部屋に戻る。

「サンジくんありがとう」
「お安い御用さ」

抱えてる洗濯物に気持ちよさそうに顔を埋めるリリナちゃんは幸せそうな顔をしてて癒される。ああ、クソかわいい。何でそんなにかわいいんだ。そういやこの洗濯物の匂いはリリナちゃんと同じ匂いだ。

「幸せ……」