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いきなりサルのおっきい船が現れてサルがいっぱい乗っててサルページするっていうからその様子を見てるんだけど、どんだけサルが好きなの。残念だけどあたしサル好きじゃないんだよ。
向こうは向こうでワーワー騒いでる時に船の下の海面に黒いおっきい影が現れて、何かと思ったらすんごいおっきいカメ。

「なにコレー!?コレなに?なに大陸!?」
「知らねェ!知らねェ!おれには何も見えねェ!なんも見てねェ!これは夢なんだ!」
「夢!?ホント!?」
「あー夢でよかった」
「おっきいカメだね」
「カメじゃねー!夢だー!」

カメが大きすぎてナミとウソップとチョッパーが顔を青くして取り乱し始めた。しかもよく見たら船が食べられてるし、てことはルフィ達も食べられちゃったって事だよね。……大丈夫かな?

「あら、あのコ達全員船ごと食べられちゃったの?」
「みなまで言うなァーっ!」
「給気ホースが口の中へ続いてるから決定的ね」
「やーめーろー!!」

騒ぐウソップに対して冷静なロビンが冷静にこの状況を口にした。チョッパーがパニックになっちゃったしよく考えたらこれってやばいのかな?3人ともカメの口の中ってやばい?みんなにつられてあたしもパニックになりそうになったとき、向こうのクルー達が動きだして我にかえった。バタバタ走り回ってどうやらあのサルを助け出そうとしてるみたい。あ、一緒に助け出せばいいのか。よし、あたしもできることはやるぞ。

「ウソップ!」
「おウ!」
「ホースを切り離し安全確保!」
「悪魔かてめェは!」
「リリナが落ちたー!」

まさかナミがあんなこと言うとは思わなかったから飛びだす足が合わなくなって海に落ちてしまった。海の中真っ暗でどうすればいいのかわからないし、とりあえずもがいてちょっとでも明るいとこに行きたいのに全然思い通りに進まなくて沈んでいくばかり。もう苦しい。水飲みすぎた。苦しくてそっちに気がいってたらいきなり腰のあたりに何かが回ってビックリして肘で振り払ったら感覚があったかくて、それが人だと気付いたときにはもう海からあがってた。

「げほっ。サンジぐん!ごめんね痛がっげほっよね!」
「大丈夫だから、リリナちゃん落ち着いて!」

またサンジくんが助けてくれたのに痛い思いさせちゃうなんて。恩を仇で返すなんて。

「船出せ!さっさとここ離れるんだ!」
「無事でよかった。そうだなとにかくあのカメから逃げよう!」
「カメ?いや海には猿がいたんだ!」
「きっと海獣の一種だ」
「そいつが途中までルフィと仲良くしてたんだが」
「サル同士だからな」
「おれ達が船から拾ったこの荷物を見て急に暴れだしやがったんだ」
「暴れる事ゴリラのごとしだ!」

もうどうしよう、立ち直れない。サンジくんのほっぺ赤くなっちゃってた。もうサンジくんの顔見られないよ。海の中で何があったのかって話してるけどそれも右から左に出てっちゃうぐらいサンジくんに肘当てた場面がグルグル頭の中でいっぱいだよ。ちょっと部屋にこもってようかな。ひとまずサンジくんのほっぺの赤みが引くまで。

「あり?何で夜なんだ?」
「ルフィ!手伝え船出すぞ!」
「ん待てェ!お前らァ!!……おめェら、このマシラさまのナワバリで、財宝盗んで逃げきれると思うなよォオオオオ!!」

……ん?おー財宝あったんだ。あの船昔のっぽいからいいやつあったんだろうな。財宝に浮かれてたら遠くのほうですごく大きい黒い影が浮かびあがって血の気がひいた。えっと……あんなに大きい人いる?

「怪物だああああ!!!」

一心不乱にオールで漕いで逃げだした。何あれ、何あれ、何あれ、何あれ!巨人よりおっきい。すっごくおっきい!



「あり得ねェ」
「ああ、あのデカさはあり得ねェ」

船を漕ぎ続けてやっと空が明るくて波が穏やかなとこに着いてみんなで脱力した。

「今日は何かがおかしいぜ」
「巨大ガレオンが降ってきたと思ったら」
「指針を空に奪われて」
「妙なサルが現れて船を引き上げる」
「でも船ごと食っちゃうデッケーカメに遭って」
「夜が来て……」
「最後は巨人の何十倍もある大怪物」
「さすがにあれにはビビったね、どーも」

サンジくん殴っちゃったし、まだほっぺ赤いし。そりゃそうだよほんの少ししかたってないのにすぐに治るわけないよ。……はあ、今日はもう引きこもってようかな。

「ちょっとお昼寝してくる……」
「なんだ寝んのか?たこ焼きは?」
「……いらない」

今は何も喉を通る気がしないもん。おやすみなさい。