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ジャヤ島に着いてルフィとゾロとナミさんが町に出ていった。ナミさんも行ってしまったが、あいつらと一緒ならまァ大丈夫だと思って船に残った。

おれはリリナちゃんが寝てる間に、さっき裏拳を食らって赤くなってたとこをチョッパーにちょっとした手当てしてもらった。別に痛いわけじゃないから断ってたんだが、どうやら当たりどころが悪かったみたいで放置すんのはダメだと聞かない。リリナちゃんには変な心配させたくないから塗り薬だけで済ましてもらった。そういやリリナちゃんが寝てから時間たったし、もしかしたらそろそろ起きてくるかもしれねェし腹もすいてる頃だ。たこ焼き焼いとこう。

「あ、リリナ!起きてたのか!」

外からウソップの声が聞こえた。どうやらナマエちゃんが起きてきたみたいだ。なんてタイミングがいいんだ。出来たてを食べてもらえそうだ。

「この島は1人で出歩かないほうがいいぞ!行くならサンジ……。いや出歩くなよ!船にいろ!」
「わ、わかったから!」

思ってたよりも近くにいるらしく、ウソップよりナマエちゃんの声の方が大きい。お出迎えするか。

「リリナちゃん起きてたのかい」

ドアを開けると真ん前に目を丸くさせたリリナちゃんがいて、どうやら驚かせちまったようだ。ほっぺとでこにシーツの跡がついてるとこがおれの心をくすぐった。

「お腹すいただろ。おいで」

キッチンにリリナちゃんをエスコートして椅子に座ってもらって出来たてのたこ焼きをドリンクと一緒に出した。

「そろそろ起きるんじゃないかって気がしたから、たこ焼き焼いといたんだ」
「あ、ありがとう」

まさかほんとに起きてくるなんておれら何か通じ合うものがあるんじゃないかなあ、なんて思いながらリリナちゃんの正面に座ると遠慮がちに綺麗な瞳がおれを見つめてる。

「どうかした?」
「あ……顔。さっき肘あてちゃって……」
「ああ、まだ気にしてたのかい。大丈夫さ、これくらい。リリナちゃん意外と心配性なんだな」

さっきよりは赤みもひいたはずなのにやっぱり気になるのか。よかったな、変なもん貼らなくて。

「でもサンジくんのキレイな顔が……」
「……キレイ、って」

リリナちゃんのほうが何千倍も綺麗なのに君がそんな事言うか?そもそも肌が綺麗だとか言われたの初めてだし、リリナちゃんの真っ直ぐおれに向けられてる瞳が恥ずかしい。こうやっていざ2人きりになるといつもの調子じゃいられなくなるんだよな。心臓がすげェドキドキしてやがる。

「ほんとにごめんね」
「大丈夫さ。リリナちゃんを守るのにこんくらいでへばるわけないだろ?頼むからそんなに気にしないでくれ。ほら、せっかく作ったんだ冷めないうちに食いな」
「うん」

ゆっくりたこ焼きを食べ始めたリリナちゃん小さく笑って美味しいって言ってくれたその表情におれのうるさい心臓も少しは落ち着いてくれた。……完全に踊らされてんじゃねェか。


ああ、そうださっきの船でいいもん拾ってきたんだった。リリナちゃん喜んでくれるかな、なんて心の中でドキドキ浮かれながらポケットに手をかける。

「リリナちゃん。あの船でいいもんを見つけたんだ」
「いいもの?なあに?」

スーツのポケットから両方の掌に収まる大きさの石を取ってリリナちゃんに見せると、一瞬で表情が明るくなった。

「わあっキレイな石!」
「だろ?いいもんがなかったからこいつは余計輝いてみえたんだ。それに、リリナちゃんによく似合う」
「似合う?」
「ああ似合うさ。この色はリリナちゃんの瞳の色とよく似てるからな」

リリナちゃんの左目にこの石を重ねてみると本当に同じ色だった。もちろんリリナちゃんの瞳のほうが輝いてて綺麗だがな。透き通った石の向こうでパチパチと瞬きをしてる瞳が見える。

「どうぞ」
「え、くれるの?」

石をリリナちゃんの手に乗せると自分の手に乗ってる石を見てから驚いた顔をしておれを見上げてきた。

「そのために拾ってきたんだぜ」
「ありがとう!うれしいっ」

満面の笑みでそう言ったリリナちゃんは嬉しそうにその石を光に当てると目を細めてうっとりした表情で眺めはじめた。ああ、拾ってきてよかった。今思うとこの石見つけたのも偶然じゃなかったのかもな。

「ありがとうサンジくん!たこ焼きも美味しい!」

この子は狙ってやってるんじゃないかってくらいおれのハートの的をつくのが本当に上手すぎるな。君のせいでおれの心臓穴だらけにされちまうのも時間の問題になってくるぜ。