「お。おはようリリナちゃん。今日はよく寝たね」
目をこすりながら部屋を見渡すと自分がベッドの上にいることに気付いた。いつの間にか寝ちゃってたみたい。
「いい匂い」
「そうだろ?もう出来あがるよ」
「みんなは?」
「外で話してんじゃねェかな」
そうだ。栗のおじさんの話を聞いてたんだ。そんなに長い間寝ちゃってたのかな。
「ウ、ウソだろ!」
「ん?」
「だいたいおかしいぜ!今日初めて会ってよ!親切すぎやしねェか!?」
ウソップだ。どうしたのかな?何か揉めてるのかな?険悪なムードだったら……って考えながらこっそり慎重に窓から外の様子をみるとウソップが栗のおじさんを責めてるみたいだった。
「空島なんてよ!伝説級に不確かな場所に行く絶好の機会が……!明日だと!?その為に船の強化や進航の補助をしてくれる!?話がウマすぎるぜ!一体何を企んでやがる!お前はうそつきノーランドの子孫だもんなァ!信用できねェ!!」
なるほど。なんとなく話してた内容が分かった。……なんとなく。そこで栗のおじさんがゆっくりウソップの方へ歩いてく。
「何だよ、やんのか!?」
「マシラの。あいつのナワバリで日中、夜を確認した次の日には南の空に積帝雲が現れる。月に5回の周期から見て"
同志、そう言ってくれた栗のおじさんに返す言葉を無くして立ち尽くすウソップ。確かにうまい話しかもしれないけど空島に行ける機会が本当に本当に偶然、明日なんだよね。栗のおじさんもサルの2人も悪い人じゃないんだ。ただ純粋に、自分達と同じとこを目指したい人が今までいなかったから嬉しいんだね。
その後すぐにみんなでご飯食べた。サンマのフルコース!みんなお酒飲んでるのにあたしには飲ませてくれなかった。サンジくんはいいよって言ってくれたのに、ゾロがダメだって怖い顔してどうしても飲ませてくれなかった。ケチだ。
いい具合に出来あがった栗のおじさんがノーランドの航海日記に書いてある話をしてくれて、その話に出てきた黄金の鐘と黄金の鳥の像を見せてくれた。どっちも光が反射してキラキラに光を放ってて綺麗。黄金をみてうっとりしてるといきなり栗のおじさんが大きい声をあげて、何事かと驚いてたあたし達に今すぐ森の中に行ってサウスバードを捕まえてこい!って言ってきた。おじさんの勢いに押されてこんな夜中なのにみんなで森に向かって出発した。なんでサウスバードが必要ななのか教えてくれてもいいのに。とりあえず恒例のくじをひいて3つに分かれてあたしはルフィとチョッパーと一緒の組。
「捕まえたーーっ!見ろよチョッパー!リリナ!アトラスだ!」
「アトラス!?」
「そうさ!アトラスとヘラクレスは世界中の人間の憧れなんだぞ!」
カブトムシを捕まえたルフィは目がギラギラしてて興奮してるみたい。あたし虫はちょっと苦手だな。足が。
「へーカブトムシが?ワンピースとどっちがすごいんだ!?」
「うーん!ムズかしい!」
「えー、ワンピースってこんなもんなの?」
「こんなもんとか言うな!」
あたしの失言に歯を剥きだしにして怒ってきたルフィだけどチョッパーがまた新しい虫を見つけたみたいでころっと表情が変わってまたに興奮し出した。あんなのゴキブリと同じなのにどこがいいんだかサッパリだ。
「うわあ!飛んで逃げた!」
「追え!絶対逃がすな!」
「デッケークモだ!」
「ぎゃああ!クモ!?」
「邪魔だ蹴っとばせ!」
クモに夢中になってたとこで目の前にハチの巣が落っこちてきて、当然のようにあたし達を狙って飛んでくるハチから逃げていると今度はおっきいカマキリが追ってきた。しかもそのカマキリ木をすっぱり切っちゃうようなカマキリだからすごい怖い。
「いてっ!」
「どうしたリリナ!」
「なんか、チクってした」
前を向いて走ってたら刺されたような痛みが目の上でした。ジンジンして痛い。瞼が重くなってきた。
「ハチに刺されたのか!?」
「クモだ!」
「ぎゃあああ!どこどこ!?置いてかないで!ルフィイ!チョッパー!!前見えないよー!」
「ついてきてんじゃねェか!」
文句言ってきたルフィだけど木の根っこに躓いて転びそうになったあたしをおぶって走ってくれた。頼りになるルフィ優しい!
しつこい虫軍団から逃げ回ってたとこでやっとみんなと合流できて、ひとまず休憩。
「大丈夫かリリナ。痛いか?」
「んー、平気」
「ここはまだ暗いから、戻ったらみるからもう少し待ってくれな」
サウスバードは捕まえられなかったけど、チョッパーの通訳で挑発しにあたし達の近くの木の上に飛んできたサウスバードをロビンが手を生やして楽々と木の上から落としたから、そこをすかさず捕まえて栗のおじさんの家に戻った。
栗のおじさん達の家に戻るとおじさん達が倒れて動かなくて様子がおかしいなって思ったらルフィ達が忙しなく動きだした。聞いてる限り誰かにやられたみたい。それからナミとゾロとロビンと何回か言葉を交わしたルフィは走ってどっかに行っちゃった。
「ルフィは?」
「どっかに行っちゃった。ゾロが昼間のやつがどうとか言ってたけど……。それよりリリナ、目開けられないのか?」
「あー、開けられなくはないけど開けるとすごく痛くて熱くなるの」
今は約束通り目をチョッパーに診てもらってる。さっき森の中ですごい腫れてるのは分かるから動かすなって言われて、ここに戻ってくるまでに何回も開けそうになったけどギリギリ大丈夫だったんだ。危なかった……!
「リリナちゃん怪我したのか!?あのクソゴム!しっかり守れって言ったじゃねェか!」
「ううん、あたしは平気だよサンジくん。おじさん達の傷が深くなくてよかったね」
「……リリナちゃんはもっと自分の心配をするべきだ……」
ルフィに対して怒ってたのにすぐに心配そうな声に変わって近くまで来てくれたサンジくん。
「平気だよー。目開けないで待ってたもん」
「両方開けられないか。うーん、何も巻かないわけにもいかないし」
「両方だと!?」
「毒を持った虫に刺されたんだよ、きっと。ハチかクモかな?痛いか?」
「うん、少し」
薬が染みこんだ綿で瞼をぽんぽん優しく撫でられてるんだけど、その薬が瞼に染みこんできてほんとは声が出そうなくらい痛いけど、キズは我慢すれば治るから我慢するの。
「早く治すには他に菌を目に入れないことだ。ひとまず少しの間は両目覆えるように包帯巻かせてくれ。リリナの事だからうっかり目開けちゃうかもしれないからな」
「……はーい」
するべき処置が終わったみたいで目を覆うように包帯が巻かれるとまぶた越しに感じてたほんの少しの光も見えなくなって少し怖い。
「ああ、リリナちゃんの綺麗な瞳が……!リリナちゃん、何かあったらおれを頼ってくれよ。君のためならいくらだって動くから!」
「うん、ありがとう」
「ぶはっ!なんだお前っ!それミイラかよ!」
心配してくれるサンジくんに笑いかけると横からいきなりウソップが出てきてあたしを見て笑った。
「笑うな!」
「うははははあ!ミイラだあ!」
「リリナちゃんものるんじゃない!」
手を広げてウソップを威嚇しようと立ちあがったらサンジくんに捕まって、おふざけはお終い。この状況も面白いかもって思ったけどそんなのはその時だけで後々こんな事になってなきゃなって思う事ばかり起きるのでした。