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ルフィがどこかに出かけてからだいぶ時間がたった。船を修理する音も聞こえなくなったし、退屈しのぎも退屈になってきた。景色が見られないってこんなにつまらないものなんだなあ。あの時よりは全然マシだけどね。ちょっと歩いてもサンジくんが必ずついてきてくれて、なんだが悪い気しかしない。大丈夫だっていってもちょっとのケガもさせられないって言われて押し負けちゃう。ナミとロビンはあたしの事見て笑ってくるし、包帯巻いてるの恥ずかしくなってきた。

だってよく考えたら変な人だもん。目だけに包帯巻いてるって怪しいもん。あーあ、考えれば考えただけ恥ずかしくなってきちゃった。やめよ。吸いこんだ空気を吐きだそうとしたらルフィの気配を感じた。あ、帰ってきた!

「ルフィだ!」
「え?」
「どこにいんだよ。まだ見えねェぞ」
「いるよ。こっちに来てる!」

立ちあがってルフィが来るほうに身体を向けて待つ。そんなあたしを見てみんなは信じてないような顔であたしを見てくるけど、気にしない!

「リリナちゃんってすげェ鋭い嗅覚でも持ってんのか?」

サンジくんが不思議そうに聞いてきたから、持ってないよって返したらちょうどルフィの声が聞こえた。おーーいってね!

「あいつだ!よかった帰って来た!」

なんだか声のトーンが嬉しそう。何かあったのかな?

「ヘラクレスー!」
「何しとったんじゃー!!」

手に持ってる物がカブトムシらしいんだけど、ヘラクレスってさっき森の中で話してたやつだっけ?目が見えなくてよかった!どんなのか分からないけどきっと黒くてテカテカしてるんだろうな。

「んじゃ乗りこむか」

ゾロが歩きだしたからその後についていこうとしたらサンジくんに手を掬いとられて落ち着いた声で、こちらへどうぞって言われてちょっとドキッとしたけど手を引かれるままに歩いて、船に続く階段もゆっくり登らせてもらった。

「ありがとう」
「お仕えできて光栄です」

本気なのか冗談なのかわからないけどサンジくんなら本気で言いかねないよな、なんてぼんやり考える。

「猿山連合軍!!ヘマやらかすんじゃねェぞ!!例え何が起きようと!こいつらの為に全力を尽くせ!!」

栗のおじさんの号令にあたしまで士気が高まる。そこでオヤジの事思い出して少し恋しくなったけど、これからお土産話が持って帰られると思うとワクワクしてくる!

ナミの声に帆を広げて錨をあげ始める音がする。あたしはポツンと立ったままで何もできない。こんな状態じゃ手伝おうとしても邪魔になっちゃうだけだから今は大人しくじっとしてるけどね。



しばらく船に乗ってるとみんなが騒ぎはじめて、この前の空を真っ暗にした雲が見えたんだってサル達が慌ただしく言葉を交わしてるとグラっと船が揺れはじめて尻もちをついた。

「波が急に高くなった!」

グラグラ揺れる船体の縁に掴まったら海水が顔にかかったから包帯が濡れて潮水が目の腫れてるとこにしみてきてなんだか気持ち悪い。

「流れに乗れ!逆らわずに中心まで行きゃなる様になる!」
「この大渦の!?飲み込まれるなんて聞いてないわよォ!!」
「大丈夫だ!リリナちゃんとナミさんとロビンちゃんはおれが守る!!」
「こんな大渦初めて見たわ」
「どうなってるの?すごい?」
「やめだァ!やめやめ!引き返そう帰らせてくれェ!!」
「観念しろウソップ。手遅れだ一人すでに、ノっちまってる」

目の前にあるであろう大渦が見られないのはとっても残念だけど音だけでもすごい大きい渦だって事がわかる。どんな風に上にのぼれるのかな?空島ってどんなとこだろう。

「行くぞー!空島ー!!」