051

鎧のじいさんがいなくなってから、みんなで一息。空島に入ってから立て続けにいろんな事があったな。さっきの怪しい仮面の男もじいさんにもまた会う事になりそうだ。


他の奴らがこれからの進路について話してる時、リリナちゃんを見るとどこかボーッとしてる。目を怪我して包帯で綺麗な瞳を覆ってからだ。やっぱ景色が見えねェのが辛いんだろうな。他の野郎達が騒ぐとあの顔から表情がなくなるのを見るのは辛いぜ。

目の前に見える雲をルフィが感触を確かめようと腕を伸ばすとその手が跳ね返ってきた。それを見たルフィが一目散に雲の上ではしゃぎ出したらそれにウソップとチョッパーも続いてった。野郎3人ではしゃいでる声を聞いてるリリナちゃんは心なしか寂しそうな顔をしてる。目が覆われてるから何とも言えないがいつもの笑顔はない。

「うおーい!リリナ!お前も来てみろ!」
「え?うわああ!」

さすがに見てられねェから話をしようとリリナちゃんの方に歩いてったらルフィがいきなりリリナちゃんを呼んだ。と思ったらおれの横を通りすぎてリリナちゃんの肩を掴んで、伸びた反動ですげェ勢いをつけてルフィに激突した。額を摩ってるあたりあいつリリナちゃんに怪我させやがったな!

「こんのクソゴム!リリナちゃんに乱暴すんじゃねェっつったろうが!オロす!!」
「すげー気持ちいいぞ!」
「わっ!ふかふかしてる!」

こっちは一瞬で怒りのボルテージが吹っ飛んだってのにクソゴムは聞かねェでのん気にはしゃぎやがって。覚えとけよ。

「サンジくん過保護になる気持ちは分からなくないけど、そんなに気にしてたらリリナが鬱陶しく感じちゃうわよ?」
「え!?」

おれがイライラしてたら思わぬとこから声があがって驚いた。ナミさんだ。

「私もそう思うわ。ほどほどが良いんじゃないかしら」

それにロビンちゃんまで。2人ともおれと目が合うと余裕な表情を向けてきた。

「おれ、そんなに……」
「……無自覚ってところが怖いわね」

口元をおさえたおれを見たナミさんは今度は呆れたように言った。確かにおれはここまで意識なんてしなかった。そうかこれがリリナちゃんの心の負担になっちまうのか。

「冷静なコックさんでも周りが見えなくなるなんて、恋の力ってすごいわね」
「ほんとねー」

おれはリリナちゃんを縛るつもりはねェ。リリナちゃんを気にしていれば転んだ時や、さっきみたいないざという時におれが率先して守れるからおれのためっていう下心もそりゃあった。それが縛っていたとしたら……。おれはリリナちゃんの目を覆うあの包帯のようになってたのか?リリナちゃんの笑顔を奪ってたのはおれだったのか。まずい事をしてた。

「押して駄目なら引けってのはこういう事だったのか……!」
「……なんか違うんじゃない?」
「でもあながち間違ってもなさそうね」



ふかふかの雲から離れてルフィとウソップが見つけた天国の門と書かれた派手な門の前に行くとさっそく婆さんがいた。空島にゃシワシワしかいねェのか?

「観光かい?それとも、戦争かい?どっちでも構わない。上層に行くんなら入国料1人10億エクストルおいていきなさい。それが法律」

10億エクストルがベリーでいくらになるのか分からねェけど1人10億って高すぎやしねェか?

「……あのお金、もし、もしなかったら?」
「通っていいよ」
「いいのかよっ!」
「それに通らなくても……いいよ。あたしは門番でもなければ衛兵でもない。お前達の意志を聞くだけ」

婆さん妙に引っかかる言い方するが通れるってんなら通るしかねェな。

「じゃあ行くぞ。おれ達は空島に!金はねェけど通るぞばあさん!」
「そうかい。8人でいいんだね」
「……?うん!でもよどうやって登ったら」

疑問に思ってると海老のハサミがメリーの船体を下から両脇を掴んですげェ勢いで滝を登ってそのもっと上に運んでいく。

「島だ!空島だーー!!」

螺旋の雲の道を登りつめた先に変わった建物がある場所についた。ここが本当の空島だな。