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ナミを探しに行くことになって家を出た。船に向かってる間もナミは帰って来ないし、気配もまだ感じられない。だから相当遠くまで行っちゃったんだろうな。

「大丈夫かなあ、ナミ」
「んな心配しなくたってそんなすぐにどうこうなったりしねェよ」
「そんなの分からないもん。怪我してるかもしれないでしょ。もしそうだったらゾロのせいだからね!」
「……何でそうなんだよ」

独り言として呟いてみたら近くにいたゾロに口を挟まれた。ゾロっていつもこんな調子だよね。ツッコミ入れるとき以外は。いい事かもしれないけどちょっと嫌。大丈夫だよって素直に言ってほしい。ぶっきらぼうだ。

「おいルフィいくぞ早く乗れ!」
「ん?人が来てる」
「ずいぶんと大勢のようね」

たぶんコニス達の家の方から何人かの人達が揃ってこっちに向かってきてる。なんか、ちょっと動きがおかしい。

「何で匍匐前進してんだあいつら」
「わからねェ。たぶんあいつら変態だ」
「へーあれが変態か」

そっか、匍匐前進する人達って変態なんだね。サンジくん物知りだな。

「だから急いで船に乗れっつったんだ、ルフィの奴」
「おいルフィ放っとけ!早くナミさん探しにいくぞ!」
「あなた達ですね!?青海からやって来られた不法入国者8名というのは!」
「……何だよ不法入国って」
「入国料1人10億エクストルだったかしら。確かに払ってないものね」

10億って額が高すぎて払わないで来たんだよね。口でしか止められてないからただのジョークかと思ったけど、やっぱりちゃんと請求してたんだな。

「でもそれでも通っていいって……あのバアさん」
「言い訳はおやめ下さいまし。認めて下さい。ですがまだそうあせる事もありません。不法入国これは天の裁きにおける第11級犯罪でしかありません。罰を受け入れればあなた方はその場で安全な観光者となれます」
「何だそれを早く言えよ。心外にゃかわりねェが。罰ってのは一体何なんだ」
「簡単な事です。入国料を10倍払ってくださいまし。1人100億エクストル。つまり8人で800億エクストル。この場でお支払い下さればあなた方の罪は帳消しにさせて頂きます!」

罰って罰金!?10億が払えなかったのにゼロが増えた額なんてもっと払えるわけないのに!

「は……は800億エクストル!?だからそのエクストルってのはベリーで言うといくらなんだ」
「ベリー……青海の通過ですね。ベリーだと、1万エクストルで1ベリーになります」

1ベリーで1万エクストルか……。800億は800万ベリーだってロビンが言ってたけどそれでも高すぎる!その金額でどれくらいのお米が買えるんだって比べるサンジくんはコックさんそのものだった。

「何で命懸けで空へ登ってきて入国だけでそんなに払わなきゃなんねェんだ!」
「何をおっしゃるのですか!ならば本来の入国時に80万ベリーお支払いくださればよかったのです」
「それでも高ェっつーんだよ!」

まあ神のいる国だもん、神聖な場所なんだろうし金額が高いっていうのもしょうがないとは思うけど今この船金欠だもんね。この前ナミがお部屋で唸ってたもん。

「オイ、もういいよ放っとこうぜ。早くナミさん探しに行かねェと今頃どっかで泣いてるかも」
「先に言っておきますが、我々ホワイトベレーは神官の直属にある部隊。反論は罪を重くしますので注意を」

噂をすればナミがウェイバーに乗って帰ってきた。ナミのほうに手を振ったら振り返してくれたよ。無事でなにより。

「ちょっと待って!」
「ああっ!ナミさん無事だったんだね!」
「ルフィ!その人達に逆らっちゃダメよ!」
「逆らうなってオイ、ナミ!じゃあ800万ベリーの不法入国料払えるのか!?」
「……よかった、まだ罰金で済むのね。800万ベリーって……高すぎるわよ!!」

ウェイバーに乗ったまま岸にいる変態に突っ込んでったナミにゾロとウソップの軽いツッコミが入る。ナミはお金の話には敏感だねえ。

「しまった!理不尽な多額請求につい……!あ、おじさんウェイバーありがとう。楽しかったわ!」
「いえいえ、どうもすいません。そんな事よりあなた方大変な事に……」

その状況を間近で見て笑ってるルフィの腕を引っ張って船に走ってくるナミ。神に関わるとヤバいらしい。そりゃあ神だもんね。

「待てーい!……逃げ場などすでにありはしない!我々に対する数々の暴言。それに今のは完全な公務執行妨害第5級犯罪に値している……!ゴッド・エネルの御名においてお前達を雲流しに処す!!」

雲流しってそんなに重い刑なのか戸惑ってるコニスを余所に気持ち良さそうだって呑気な想像をするルフィに、その刑がどんなものなのか説明してる。死ぬまで雲の上で空をさ迷うんだって。

「成程。それで何もない空から船が」
「何だ?」
「例の空から降ってきたガレオン船200年前にその刑を受けたんじゃないかしら」

なるほどね。でももしそうなったとしても雲ならどうにかできるんじゃないかな?

「引っ捕らえろ!」
「逃げて下さい!敵いません!!」
「撃て!"雲の矢ミルキーアロー"」
「ん?戦闘?」

変態達が変な技を仕掛けてきて船から降りてったゾロとサンジくんを追いかけようと一歩前に出たら、ロビンの手に足を掴まれて動けなくなった。

「あなたは大人しくしてましょ」
「え」

まさかおあずけされるなんて思ってなくて一瞬固まった隙に膝の裏をつかれてカクンって座らせられた。……ロビンには敵う気がしない……。


変態達はあっという間に3人に打ちのめされた。そいつ等がいなくなってから一旦船を降りてちょっと話し合い。その間にチョッパーに包帯を外してあたしの目の様子を診てもらってる最中。

「チョッパーまだ治らない?」
「まだ一日も経ってないんだぞ」
「一日以上かかるの?」

腫れは少しひいたみたい。目を開けても痛くなくなった。けど油断は禁物だってまた新しい包帯を巻かれた。

「もう少しだから頑張ろうな」

気落ちしてたあたしにちょんちょんって励ましの言葉と一緒に肩を叩いてくれたチョッパーに笑顔がこぼれた。チョッパーが一瞬で治る薬作ってくれないかなー。