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ナミとルフィ中心に話し合った結果、ナミの押し通しでとりあえずここから船を動かす事になった。心の中で応援してたけど頑固なルフィでも口じゃナミに勝てるはずもなかった。

「なァ、包帯あるか?予備がなくなりそうだから欲しいんだ」
「ええ、ありますとも。差し上げますよ」
「あたし貰ってくる!チョッパーは待ってて!」

お世話になってるチョッパーに代わって、お弁当の準備と船の部品を貰いにいくルフィとサンジくんとウソップと一緒にまたお家に戻る事にした。


家に着いてからおじさんに包帯の入った袋をもらってからソファに座ってせっせとお弁当詰めをするサンジくんを待つ。

「サンジくん、あたしの分もある?」
「もちろんさ。リリナちゃんの分もしっかり彩り考えてるよ」
「でもあたし見えないよ」
「だからって手ェ抜くわけにはいかねェだろ。せっかくリリナちゃんに食べてもらうんだから」

目の事を考えてしょんぼりしてるあたしをフォローしてくれた優しいサンジくん。優しさに甘えすぎていつかバチ当たるかもしれない気がしてきた。目が治ったらお礼しなくちゃいけないね。何がいいかな?

「オイ、船の方のようすが変だ」
「どうしたんだよウソップ」
「見てみろあいつら何か騒いでる!」
「宴か!?」

みんなに続いてあたしもベランダに出てみたけど目が見えないからいまいち理解できない。何がどうなってるの?さすがに遠くて分からないや。

「あァ!ナミさん!な……なんでTシャツ来ちゃってんのおほほ……!」
「どこみて喋ってんだおめェは!」
「ああ!船が動き出した!」
「え、なぜ!?」
「何だあいつらどこ行くんだ!?おお!?後ろ向きで走ってんじゃねェかすげェな」

船が動き出してみんなの気配が遠くなっていく。もしかしてあたし達を置いて神のいる島に行っちゃったんじゃないの!?抜け駆けなんて酷すぎる!

「先に冒険しに行っちゃったのかな?」
「なんだと!?抜け駆けは卑怯だぞ!!」
「違う!船を出したわけじゃねェ!船底を見ろ!」
「あれは……!白々海名物超特急エビ!」

慌てるあたし達を余所にその特急エビに連れていかれちゃったメリー号とナミ達に某然と立ち尽くす置いてけぼりにされた。

「…………行っちゃった」
「なんでTシャツを……」
「んまだ言ってんのかよ!えれェ事った、どうするどうしよう!」
「追いかけなきゃ!」
「どうやって!」
「あいつらどこ行ったんだ?」
「どこってお前そりゃ……どこだ?」
「どこ行ったんだ?」

謎が漠然とし過ぎて冷静になるあたし達に静かに話し出すおじさん。

「……。超特急エビは神の使い。運ぶ者はいつでも神への供え物。ならば行き先は神の島アッパーヤードの北東。生け贄の祭壇です」
「生け贄!?ナミさんとロビンちゃんとその他が生け贄にされるのか!?神の奴の!?ンの野郎フザけんじゃねェぞォー!」
「お待ち下さい!しかし……!すいません違うのです!」

怒るサンジくんを宥めるようにおじさんがしてくれた話によると、生け贄にされたはされたけど実際に試されているのはあたし達で、その様子を神は見てるんだとか。地図をおいた円テーブルをみんなで囲んでおじさんが場所を示しながら話をしてるけど難しくて分からない。

「至れり尽くせりだコリャ。とにかく仲間と船を返してほしけりゃ正面から入ってきやがれと……」
「なるほど、意外と単純だね」
「それがおれ達への試練で天の裁きか!」
「まァでもナミが言ってた神官ってのブッ飛ばしたらいいんだろ?なはははははは」
「いけません油断されては!」

あたし達が神様に試されてて、それを素直に受け止めてナミ達を助けにいけばいいんだね。サンジくんとルフィが噛み砕いてくれたおかげで理解できたよ。難しい話でも結局は単純なのか。

「神官達4人の強さはおそらくあなた方の想像を超えるものです。その上の何より神の島アッパーヤードにはゴッド・エネルがいらっしゃる」

この試練を受ければついに神にも会えるんだ。ていうか神って悪い人なの?おじさんの言い方そんな感じだったけど……。