059

「いやだァー!!ウソだろォー!?」

まさか!んなわけあってたまるかよ!これまじで本当に一万メートル落下すんのかよ!?……って思ってたら雲の上に落ちた。息を整えながら辺りを見渡すとまたでけェ木が生い茂ってた。まじで良かった……。ウソップは体から水分漏れ出してるしルフィの奴は死ぬかと思ったとか言ってるけど笑ってやがるし元はと言えばおめェが本当に無くもなさそうな事言い出したからこんな心臓縮まる思いしたんだ。リリナちゃんなんか涙流しながら笑ってるんだぞ!壊れちまったじゃねェか。

「ああ、良かった。ほんとに涙でた……」

気の抜けた声を出しながら状態を立て直そうとするリリナちゃんの背中を摩ってあげる。やましい気持ちはねェ。善意を持ってやってることだ。

「それにしても何だここは……」
「玉だな!玉!」

さっきの殺伐としたジャングルみてェな森とは違ってここは船の残骸がなくて少し幻想的に思える。あの鎌が襲いかかってきた道で大半は沈んじまってなかなかその先に進めねェし、ここは4つのうちの1つでだいぶ限られてくるってわけか?

「もしかして当たりなんじゃねェのか!?ここがっ!他の入り口選んでたら今頃えらい目にあってたとかよ」

それを聞いて放心状態だったウソップが起きあがった。

「バカ油断するな。罪人相手に当たりなんて用意するか!少しは考えろ、さっきみたいに何か仕掛けがあるかも知れねェ……」

気ィ抜くなっつった矢先にリュックから食いもん出してきやがったなあいつら!

「空せんべい一枚は?」
「ダメだ!!いいか!おれが運転するから!お前らは左右をしっかり見張れ!」
「うわっ!いつの間にかえらく高ェ所走ってるぞ……!」

……しかし変だな、確か神官は4人いると言ってたからおれはてっきり4つの入り口がそれぞれそいつらに通じてるもんだと……。違うのか?

「へーーイ、ウソップパスッ!」
「おっしオーライオーライ」
「見はれっつってんだろうが!!」

ったくあいつら人の話聞きやしねェな本当に!ふとリリナちゃんを見るとだいぶ落ち着いたのか、落ち着かせてるのか一点をみたまま動かねェ。

「ギャアアアアア!!」
「な……!ヘビ!?」

ルフィとウソップが遊んでやがった雲の中からいきなりヘビが飛びだしてウソップ目がけて噛みついてきた。ウソップが避けたとこをルフィが蹴り飛ばした。

「おいサンジ前!雲!蹴り飛ばせ遠くへ!」
「クソッ……!ここに浮いてんのは全部ヘビの巣だってのか!?」

おれが近寄ってきた雲を飛ばしてやろうと蹴りを入れると雲が爆発して巻き込まれて黒こげになった。どうなってやがる。

「どうなってんだこの玉はァっ!」
「ほーうほうほう!何が出るかはお楽しみ。その雲の名はびっくり雲」
「!?、誰だ!!」

いきなり聞き覚えのねェ声が聞こえてその方向を見上げるとまん丸の玉みてェな変な奴が雲の上に乗っかってやがった。

「ほっほほう!へそ!よくぞ我が玉の試練を選んでくれた。ほっほほう!」
「お前が玉の試練か!?玉か!?」
「踊ってんじゃねェ!てめェ何者だァ!」
「おいダンゴ!ナミさん達は無事なんだろうな!?」
「……生け贄の事か?ならば知らねえ。あいつらは放っといても死ぬからな…。運よく逃げ出せてもどの道死ぬからな……」
「んだとォ!?」
「お前達はお前達の心配をしろ。一応言っておくがおれに勝たなければ当然先には進めないからな」

ルフィの攻撃を避けて平手打ちでそのまま殴り飛ばした。

「ルフィ!?」
「え!?え!?ルフィ!?おい平気なんだろ!?ただの打撃がお前に効くハズねェ!」

ルフィはゴム人間だ。打撃はどんなに強力だろうと通用しねェはず……!なのに血が出てんじゃねェか!しかもすぐに起き上がってこねェし。何しやがったんだあいつ!

「打撃……?少し違う!」
「何が違うんだよ!!」
「ほっほう……!右足上段の蹴り……」
「"首肉コリエ"……何!?」
「修行者にのみ授けられる力は心綱マントラ

バカな……コイツおれの動きを予知したってのか!?おれの蹴りを避けたそいつはルフィと同じように掌を向けてるともろ顔面に食らって吹き飛ぶ。風……とも違う……何なんだ、コレ。

「衝撃は体の髄より破壊する!」

おれに続いてウソップも同じようにやられてこっちに吹き飛んできた。

「……。あのヤロー、一体何を……!」
「さっぱり分からねェ。あいつ得体が知れねェ!」
「ほう!ほほーう!おれの名はサトリ!全能なるゴッド・エネルに仕える神官の1人だ!この迷いの森のヴァースを掌っている!」
「迷いの森?」
「そう。この森の事だ……。そして迷うのはお前達の船!」
「ああっ!船が勝手に!リリナ降りろ!」
「リリナちゃん!」

どうやらリリナちゃんはやられてねェみたいだからまだあの船に乗ってるはずだ。あのダンゴリリナちゃんに手出ししやがってらオロすどころじゃ済まさねェぞ。船は上の方を走ってるからリリナちゃんの様子が伺えねェがダンゴが何かしたわけでもなさそうだ。

「これから船はこの森の中の雲の川ミルキーロードを無作為に走り回り、やがて勝手にこの森唯一の出口から出て行くのだ。分かっていると思うが貝船を失う事は生け贄の祭壇への道を失う事に同じ。そうなる前にお前達は船を見つけて乗り込む事だ。勿論ここに浮く無数のびっくり雲とこのおれがそれをさせない」

「ようこそ禁断の聖地神の島アッパーヤードへ。ほうっ!ここは迷いの森、生存率10%!玉の試練!」

当たりもハズレもねェよ、どこ行ったって結果は同じだ。おれ達が神官どもをぶっ倒して前に進めばいい話だろ。