061

このミルキーロード、ぐねぐねしすぎて一回通ってきた道の近くをまた通ったりしてるみたい。あそこにさっきの槍が落ちてる。

「あーいたいた。仲間は置いてくのか?」
「え……」
「"衝撃インパクト"!」

それと一緒にボロボロになって倒れてるみんなを見つけて動きが止まった。その隙をつかれて掌をあたしの胸の辺りに向けてられて避けようと体を動かそうとしたら、もの凄い力に圧迫されたような衝撃を受けて息が止まった。その勢いのまま後ろに飛ばされて、強制的に船から降ろされた。苦しい。息がし辛い。気持ち悪くて吐きそう。でもそれより船が離れてっちゃう。早く、早くあのまん丸神官を倒して船に戻らなきゃ。

上手く呼吸ができないながら、少しでも息を整えようとゆっくり吸ってはいて落ち着かせてから木から足を離して拳を固めてまん丸神官を殴りつけると直前で躱された。またあの掌が頭に向けられたのを右手で避けて、すぐにさっき狙った顔めがけて左足を蹴り上げると今度は受け止められて、すかさず右足を遠心力を使って回し蹴りで同じとこを狙うとまん丸神官の左手がフォローが間に合う前にこめかみに踵が当たってその勢いで左に吹き飛んでまん丸雲に当たって、中から出てきた槍がそいつの腕を掠ってた。

「今のは運が悪かったね」
「なんで躱されるんだ。なんで……当たらない!」
「あたしの方が、強いからだよ。それに、捕まえちゃえば逃げられないもんね」

息を大きく吸って右手の拳に力を込めるのと一緒にあたしの拳を中心に渦巻く風が起こして、右の肩を引いて目一杯まん丸神官の顔を殴りつけると、まん丸の頬っぺが拳に合わせて凹んですぐ左の木に顔がめり込んだ。ただの一発だけど久しぶりに思いっきり力んだおかげでまた息が荒くなって、大きく深呼吸をするとゆらゆらしながらまん丸神官が立ち上がった。

「よくも、やってくれたな……!」

さっきまでの余裕が無くなったみたいであたしをじっと睨みながら木の枝からまん丸雲に乗り移った。

「あーダメだよ。この能力っていかに平常心でいられるかが大事でしょ?」

そう言うとやっと気付いたように後ろを振り返った時にはもう後ろにいたルフィに両手を掴まれてた。

「離れろ!コノ……!」
「離すなよ!ルフィ……。もう二度と逃がすなそのダンゴ」
「お前……!」
「あ、サンジ生きてたのか」
「てめェのせいで死ぬトコだよ!ちっとァ周りに気ィ配れ!」

向かい側のまん丸雲には胡坐をかいて煙草に火をつけるサンジくん。みんないつの間にか体勢を立て直してる。あたしも周りが見えてなかったんだな。もちろんルフィには気付いてたけど!

「サンジくん!」
「やあリリナちゃん。いいもの見せてもらったぜ。……まァとにかく……ダンゴマン。お前は試練試練と、とやかく言うが正直おれらにゃ身に憶えのねェ話。……だが受けよう空くんだりのクソ試験……。おれにはぶっ倒れてる暇はねェ、騎士ナイトはどんなプリンセスにも助けられる訳にはいかねェ。……つまりそうだ。これは恋の試練」

静かに立ち上がって神官を睨みつけたサンジくんの顔が影をさして更に怖さが増してる。

「お前ら……!クソ……!離せ!お前達卑怯だぞ2人掛かりとは!」

焦った様子のまん丸神官が暴れるのを抑えようとルフィの足が体にぐるんぐるんに絡まった。

「仲間を無断で誘拐する様な……かわいい天使を泣かして殺そうとする様な……レディに容赦なく手をあげる様な連中に!卑怯と呼ばれる筋合いはねェな」
「ああ、そらそうだ。お前おれ達の動きを読めるのはすげェけどよ、いくら読めても……よけられなかったら読める意味ねェな!ししし!」
「はっ!……バカめ!やめろ!バカめ!おれは神に仕える神官だぞ!離せ!おい聞いてるのか!神官に裁かれないという罪はこの国では第一級犯罪に値するんだぞ!このおれに手を出すという事は……いいか!全能なるゴッド・エネルへの宣戦布告を意味するのだ!!」

身の危険を感じて焦って声が大きくなっていくまん丸神官の顔はどんどん青くなってってる。こういう時、見聞色の覇気が使えると厄介だよね。何が起きるのか分かるから怖さが増すもんね。

「口を閉じろ風味が逃げる。例えばコショウを最高のミニョネットに仕上げたければ、大切なのは強く粗くためらわず……砕ききる事だ。そうすれば閉じ込められた素晴らしい風味は、これによって一気に開放する!」

至って冷静に言葉を繋げるサンジくんは乗ってた雲から足を離してぐるぐる体を回転させてまん丸神官に向かって飛んでく。

「やめろー!やめろー!痛い!痛いからやめろーー!!」
「"粗砕コンカッセ"!!」

唯一自由に動く口でサンジくんを止めようと騒がしいまん丸神官の頭に勢いのついたサンジくんの踵が脳天に直撃して動かなくなった。玉の試練無事に終了だね!