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日が沈み始めて辺りが薄暗くなってきたとこで火を焚いて、火の灯りの周りだけが照らされながらみんなで美味しいシチューとお弁当を食べ始めた。

「んまいですねー!このシチューはまた」
「おめェはさっき空サメ丸焼きで一匹食ってたろ」
「まァあれはつなぎだな」
「美味しい!シチュー大好き!」
「本当かあい!まだたっくさんあるからどんどんお食べ!」

みんなの分をよそりながら言うサンジくんにシチューの美味しさをできるだけ正確に伝えたくて、大きく頷くと今度はナミを中心にして明日の作戦会議が始まった。

「いい?まずノーランドの絵本のおさらいよ。彼が初めて黄金郷を発見したのは400年前。それから数年後、再びジャヤを訪れた時には……もうジャヤに黄金遺跡はなかった。つまりその数年の間にジャヤの片割れであるこの島は上空にやってきた」
突き上げる海流ノックアップストリームに乗ってか」
「ええ、それしか考えられない。海底での爆発位置は毎回違うとクリケットさんが言ってたから」
「あの規模だもんな……島も飛ぶぞ」

みんなが話してるのをシチューを食べながら聞いてたらいつの間にかシチューが入ってたお皿はもう空になってた。そんなにかきこんでたつもりはないのにな……美味しかった。もっと食べたい。

「でもよジャヤでおれ達が入った森とこの森が同一とはとても思えねェが」
「それは……きっと海雲や島雲を作る成分のせいね。この空島を包む環境は動植物を異常な速度で育む力があるみたい。だとすれば森にのみ込まれた文明にも納得がいくわ」

空のお皿を持て余すように持っているとサンジくんが手を差し出してきて何だろう?どういう意味かって考えながら首を傾げると、おかわり持ってくるよってそっとあたしの手の上のお皿を掬いあげてまたお鍋のほうに歩いてった。サンジくんの目はもしかしたら背中とか腕とか色んなとこに目があるんじゃないかって疑っちゃうほどよく周りを見てる。頼れるお兄さん、みたいな。

「おれ達を助けてくれたサウスバードもこんなにでかかったんだ」
「それだが……何でそのサウスバードがおめェらを助けたんだ?」
「それがわかんねえんだ。サウスバードはみんな空の騎士を神様って呼んでて……」

サンジくんからまた新しくシチューが入ったお皿をもらってさっそく食べ始める。うん、やっぱり美味しい。

「神!?じゃ何だこのおっさんブッ飛ばしたらいいのか!?」
「いいワケあるかァ!このスットンキョーが!」
「とにかく、ノーランドの航海日誌に書かれてた黄金郷についての情報を思い出して!」
「黄金を見た」
「っタリめェだこのスットコドッコイ!」
「それも巨大な鐘が他の黄金だって言ってたな。……あとサウスバードがいて……」
「……日誌の……最後のページに理解できない言葉があったわ。ノーランドが死ぬ間際に残したという文章。髑髏の右目に黄金を見たって……」
「それよ!これ見て!ロビンがジャヤで手に入れた地図とスカイピアの古い地図の比率をあわせたの。おおよそだけどね……海岸の家をくっつけると。ほらっ!これが400年前のジャヤの姿っ!」

ロビンの最後の言葉に待ってましたって言わんばかりにびしっと指をさしたナミは持っていた二枚の紙を広げたから食べてたお弁当箱を持って見に行ったら、合わさった二枚がぴったりドクロの形をした島になってた。

「うお!……ドクロに見える!!」
「……じゃ髑髏の右目ってのは……」
「この場所ね!ノーランドが言いたかったのは島の全形の事よ!だけど島は半分しかないんだものこの謎が解けるわけがなかった」

ナミが指差したとこはまさしくドクロの右目のとこ。そこは地図の中には何かありそうな場所みたいに書いてある。……何かって遺跡、みたいな。

「明日は真っすぐにこのポイントを目指せばいいのよ。その間船も放っておけないから2チームに分かれて動きましょう!間違いない!この場所で莫大な黄金が私達を待ってる!!」

黄金を手に入れたらあたしにもお金回ってくるかな?もし回ってきたら何買おうかな?



お鍋の中にたっぷりあったシチューもルフィが大半を平らげたおかげで中は空っぽになった。あたしも全部で三杯食べたらからお腹ぽっこりしてる。さすがに食べすぎたかな、なんて少し後悔するけどでも美味しかったからしょうがない。明日はたくさん動くから力はつけておかなくちゃいけないもんね。

「ふー食った食ったー。明日は黄金!晴れるかな?」
「そりゃ雲の上だからな」
「夜も更けたわ。用のない火は消さなくちゃ敵に位置を知らせてしまうだけよ」

ロビンの何気ない言葉に満足そうな顔をしてたルフィが呆れたような顔をしてため息を漏らした。

「バカな事を……聴いたかウソップ、あんな事言ってらァ……。火を消すってよ」
「仕方ねェさ、そう言ってやるなロビンは今まで闇に生きてきた女……知らねェだけだ」
「……どういう事……?」

いつもの2人とは違った様子で話してるのを見たロビンは少し戸惑ったように聞いてる。

「キャンプファイアーするだろうがよォ普通!」
「キャンプの夜はたとえこの命尽き果てようともキャンプファイアーだけはしたいのが人道」
「バカはあんらだ」

悔しそうに地面をばんばん叩くルフィとウソップを見てナミが少し離れた所から冷めた声で言った。キャンプファイアーは前に一回やったっきりやってないな。誰とやったんだっけ。スペードのとき?もう白ひげのとき?エースがいた事は確かなんだけどなあ。

「いい加減にしなさいよ!この森がどれ程危険な場所かって事くらい分かってるでしょ!?」
「知らん」
「神官もいる!ゲリラもいる!それ以前に夜の森はただそれだけで危ない所なのよ!猛獣だって化け物だっているかも知れない!」
「化け物もーー!?」
「キャンプファイアーやるの!?やったー!」
「コラリリナ!あんた今の話聞いてた!?」

気持ちが高ぶって話しを割るように言ったらナミが怖い顔してきた。怖い。怖いけどでもせっかくだからやりたいな。

「オイ!ルフィ!!組み木はこんなもんか?」
「あんたらもやる気満々か!」
「大丈夫さナミさん。むしろ猛獣は火が恐ェんだから」
「後ろ後ろ!もうなんかいるわよ!」

ナミ以外ほとんどが乗り気になっちゃって結局ナミが折れて盛大に始まったキャンプファイアー。テントの中にあったおたまやらおなべやらを陽気に鳴らして火の明かりにつられて集まったオオカミ達とキャンプファイアーの周りを囲んむように輪を作って歌って踊りながら騒ぐ。

すぐにみんなで騒ぎたくなるのはオヤジ達といても一緒だけど、きっかけはあるけど自然とどんちゃん騒ぎになるのはこっちで、向こうは必ずオヤジかマルコの号令があがるんだよね。違いはあるけど、どっちもとても楽しい時間になる。