068

「おぬしらに初めて会った時我輩が傭兵をかって出たのも青海人では空の戦いについてゆけぬからだ」
「空の戦い?」

そこで用意された一個の空樽とそれと同じくらい大きいハンマー。変な騎士にもらってその上に薄い丸い形をした貝をおいた。

「見ておれ」
「何の為にやるの?こんな事」
「やればわかる。その貝を思いきり砕いてみよ」
「そーっとだぞ!サンジてめェ甲板に穴でも空けやがったらタダじゃおかねェぞ!」

ウソップならまだしもサンジくんにやらせたら本当に甲板に穴空いちゃうと思うんだけど。何か起きるっていうのよ。

「思いっきりやればよい」
「てめー他人の船だとおもってテキトーな事を言うなァ!!」
「……まァやれっつうんならやるが……」
「待てー!!そんなに振りかぶらなくても……!」

サンジくんが力を込めてハンマーを空樽目掛けて振り下ろしたのに樽は割れなくて、しかもヒビすら入ってない。何が起きたの?なんか、吸い込まれた……みたいな。

「……何やってんだ、いくら加減しろって言ってもそれじゃおまえ……下の空樽すら割れてねェじゃねェか……」
「…いや、おれは思いっきりやったぞ。甲板に穴空けるくらいの気持ちで……!なのにこの貝に……まるで衝撃を吸い込まれたみてェに……」
「え!?」

ちょっと待って。吸い込まれたって、この貝がサンジくんの力を?確かにさっきはそう感じたけど、あんな小さくて厚みのない貝のどこにあの衝撃を耐えられる力とそれを吸収するとこがあんのよ。あんな衝撃を全部吸収なんてできるの?

「ではダイアルの穴を空樽に向け裏の殻頂を押してみよ……」

言われた通りにサンジくんが貝のてっぺんを押したらもの凄い爆風みたいな風が起きて物陰に隠れて、樽を見たらバラバラに砕けて散ってて元あったとこには貝が揺れてた。

「それが衝撃貝インパクトダイアル与えた衝撃を吸収し、自在に放出する。本来手の平に手袋やバンテージで固定して使用するのだ。正確にひっとすれば威力は並の人間を死に至らせる力を持つ」
「……ウソップ、こりゃあ」
「……ああ、あのダンゴ神官これを使ってたんだ」
「あいつかあ……」

3人が何かを思い出して謎が一致したみたい。思うんだけどルフィもあいつらも敵の攻撃を理解しないまま倒したりするから危なっかしいのよね。あいつらにそんな事できるはずないだろうけど、特にルフィには。

「古代の空島にはさらに凄まじいダイアルが存在したと聞く。排撃貝リジェクトダイアルという絶滅種はこの衝撃貝インパクトダイアルの10倍もの放出力を誇ったそうだ。だがその強すぎる衝撃は使用した本人の命でさえ危ぶめるといつ諸刃の刃……。さすがにほとんど使われる事はなかった様だな……」
「……そんな危なっかしい貝があるのか……!」
「まるで兵器じゃねェかよ」
ダイアルってもっと日常的なものなのかと思ってた」

「そうだとも。だが人が便利だと思う物には必ずそれに反する悪用方法があるものだ。使う人間次第でな。ダイアルは極めて便利ではあるが……それゆえ戦闘に用いればそれだけの力を生んでしまうのだ。例えば…料理をたためる熱貝ヒートダイアルでさえ槍に仕込めば自在に高熱を発する熱の槍ヒートジャベリンと化す。例えば……火を貯える炎貝フレイムダイアル……鳥の口内に仕込めば世にも珍しい炎を吐く鳥を生む」

「それが空の戦い……!」
「そうだ。ダイアルの種類すら知らぬ青海の者では見極める事もできん。数ある加工雲も然り……。空の戦士達はそれらを鍛練により使いこなす。知らぬ者では手に負えまい」

日常的に使うものが武器になるなんて便利なのも考えものね。

「じゃあよ……あのおれ達の動きを先読みするマントラってのにも何か理由が?」
心綱マントラか……あれは我輩も使えるわけではないのでな、うまく説明できんのだが……心綱マントラとは聞く力だといわれている……。何やら人間は生きているだけで体から声を発しているらしいのだ」
「声?」
「うむ……それを聞く事で相手の次の動きもわかるという。さらに鍛えるとより広域まで声を聞ける様になる……。神官共は神の島アッパーヤード全域。エネルはこの国全域までその力が及ぶ。あの力ばかりは得体が知れぬ……」
「この国、全域……」
「そうだ、そこの長髪の娘さんは心綱マントラが使えるのであろう」

いきなり話を振られたからかとぼけた顔をしたリリナ。そうだ、この子にもなんだかよく分からない事たくさんあるんだった。

「シャンディアに襲われていた時、両目を覆われていながら奴の蹴りを避けていたのを見させてもらった」

見てたんならもっと早く助けにきて欲しかったわよ。覗き見なんてシュミ悪いわ。

「……あたし達は見聞色の覇気って言ってるの」
「見聞色の、覇気」
「他にもあるけどあたしが使えるのはこれだけ」
「だから……目が見えてなくても戦えたり、みんなの居場所が分かったり……ジャヤでルフィが来るの分かったのもそれね?」
「うん」
「お前スゲーんだな」
「新世界には覇気を使える人がたくさんいるよ」
「新世界?」

聞き慣れない単語にみんな首を傾げると小さく声をあげて手で口を塞いだ。タブーな事だったのかしら。とにかく疑問は少し晴れたわ。あれは覇気っていうのね。名前聞くだけで強そうだしなんか特別な力ってイメージだけどリリナそんな凄そうなもの使えるのね。なんてのん気に思ってた矢先、リリナが立ち上がってサンジくんの前に立って睨みつけるように眉間にシワを寄せる。

「リリナちゃん、どうしたんだい怖い顔して……」

突然の行動に私達はついていけないでいるとリリナが拳を固めて何かに向かって殴りかかった時、一瞬でリリナの体が真っ黒こげになって口とか鼻とかいろんな所から血が流れて力を無くして倒れていく体を唖然と見てたサンジくんが受け止めた。その光景がいやにスローモーションに見えた。

「リリナ!!」
「ぎゃー!リリナーー!!」
「リリナちゃん!!……っこのクソ野郎が!許さねェリリナちゃんをこんな目に……!」

そんなリリナを見たサンジくんが怒ってそんな事をした張本人に向かって蹴りあげようとしたら、またさっきと同じように一瞬で真っ黒こげになって倒れた。……うそ。リリナもサンジくんまで……こんな一瞬で……!!

「……!おいっ!!心臓の音が聞こえねェぞ!!」
「うそ……」
「ヤハハハハ、ヤハハハ……バカだな女も男も。……別に私はお前達に危害を加えに来たわけではないというのに……」
「ならば何をしに来た!!」
「ヤハハ冷たい言い種じゃあないか……実に6年ぶりだぞ……!先代ゴッドガン・フォール」