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何だろう……いつも思うけどあたしが起きる頃にはみんなうるさく騒いでるしみんな起きるの早すぎだと思う。しかもあんなに毎日宴してたのにだよ。今日もぼーっとする頭の中にナミの大声が突き刺さって叩き起こされたし。おかげで一瞬で目がぱっちりしたし、さすがに驚いたけど。ナミはいつも乱暴なんだもんなあ。あたしは起きたばっかりのあのふわふわした感じを味わいたいのに。

そう思いながらナミと一緒に先に船に戻って出港準備をしてるとどっかに行っちゃったロビンを待ってた残りのメンバーがたくさんの黄金の詰まった袋を抱えて走ってきた。

「ナミー!船を出せ!すぐ出発するぞォーー!!」
「え!?どうして!?」

黄金を盗んだとこを見られてどうやら追われてるみたいだったから慌てて錨をあげて船を出した。


「黄金!黄金!黄金!」
「大金持ちだぞ!何買おうか!?でっっっけェ銅像買わねェか!?」
「バカ言え何すんだそれで。ここは大砲を増やすべきだ!10門買おう!」
「ナミさん!おれ鍵つき冷蔵庫がほしいー!」
「おれなァ!おれはなァ!本が買って欲しいんだ!他の国の医学の本読みてェんだ」
「酒」
「あたし服が欲しいな!キレイなやつ!お姉さんが着るようなの!」
「お姉さんが着るような服!?」

あたしがそういうと顔が緩みきったサンジくんと目が合ったけど、少し怖く感じですぐに目を逸らしてナミの隣に避難した。見なかった事にしとこう。

「ちょっと待って待ってあんた達。お宝の山分けはまずここを降りてからよ!あんたらの好き放題買い物したら何も身にならなそう……」

どんなにたくさん黄金持ってたってこんだけバカが集まれば一瞬でなくなっちゃうわよ、ってため息混じりに言ったナミもあれだけの黄金があるから一喝するつもりはないらしい。

「みなさん!前方をご覧ください見えました雲の果てクラウドエンドです!」
「へー!あそこから降りられるのかーっ!」
「あー降りちまうのかーおれ達」
「いざ降りるとなると……確かに、名残惜しいな」
「このまっ白い海ともお別れだ」
「泳いでみたかったなー……」

最初に来たときは目が見えない状態で十分楽しめなかったしなあ。せっかくの空島なのにもったいない事しちゃったな。

「空島楽しかったなー恐かったけど」
「あの門抜けたら……雲の川ミルキーロードで一路青海って具合か……」
「また来れるかしら空島……!」
「ここばかりはなー……」
「ではみなさん!私達はここまでですので!」
「お元気でみなさん!」

船の隣を走って見送りに来てくれてたコニスとおじさんに手を振ると一気に寂しさがこみあげてきてみんなのお別れの声をただ聞いてた。

「送ってくれてありがと!」
「ええ!ではすぐに帆をたたんで船体にしがみついていて下さい!」
「おい!おっさんの言う通りに!だいぶ高速で行くみてェだ!」
「そりゃ7000メートルの坂道だもんな!急げ!」
「黄金も部屋へ運んじまえ」

サンジくんとチョッパーが拾いきれなかった細かい黄金を拾ってキッチンにしまった。

「さて……船長。次の島への記録ログもバッチリ!」
「んんそうだ!ここ降りたらまた新しい冒険が!!始まるんだ!!野郎共そんじゃあ……!青海へ帰るぞォ!!」
「おお!!」

ルフィの号令に拳を固めて両手を突きあげる。出会いがあれば別れもあるって前にオヤジが教えてくれた。楽しいだけじゃダメで、お別れがないと次の楽しみに会えないんだって。

「みなさん落下中お気をつけて!」
「落下中??」

コニスの言葉にみんな口を揃えてこぼすと前に体感した嫌な浮遊感がきて思わず届きもしないクラウドエンドの建物に手をのばした。今度こそ、今度こそ青海までの7000メートル落ちなきゃいけないの!?嫌だ嫌だよ嘘だと言って!

「へそ!!」

目ん玉飛び出て死んだ顔をしてるはずのあたし達をにこやかに送り出すコニスとおじさん。薄情者だ!あんなに一緒にいたのに!助けてくれてもいいのにいい!不意をつかれて何も掴んでなかったあたしはメリーから離されていきそうになるところを強く掴まれて難を逃れた。今度は頼もしい顔はしてなかったけど今回もサンジくんが捕まえてくれた。サンジくんあんな顔してたのにあたしの事はちゃんと見てくれてたんだね。笑いそうになったけどそれどころじゃなくて引っこんだ。

「ぎゃああタコォーー!!」

安心したのもつかの間で、横の雲から飛び出してきた大きいタコに船体をぐるんと吸盤で掴まれてつかまった。こんな危険が待ってたなんて!どうしようどうしようどうしよう頭の中がこんがらがってる間に船が落ちるスピードが急に落ちて床に激突した。上をみたらまだタコに捕まったままだし、海に落ちた感覚もしない。

「おいみろすげーぞコレ!」
「バルーンだ!」
「うわー面白ェーー!!」

船べりから上を見上げるとタコの頭の部分が気球みたいに膨らんででゆっくりゆっくり下に落ちて行ってる。

「お、おれァおれァもうついにあの世に逝ってしまうのかと……」

襲われたわけじゃないってわかるとこのタコも可愛く感じてきてちょっとした空中散歩を楽しむ余裕ができた時、あの鐘の音が聞こえてきた。寂しかったけどよく考えてみればこんなに大きい音がするんだからまたどこかできっとこの音が聞ける気がする。空島には行けなくてもこの鐘の音が聞こえればそれでいい。この音が、歌が空島が平和だっていう何よりの印だから。