075

シーモンキーによる二回目の大波襲撃をなんとかやり過ごしてまた一息。大波から逃げてるとき帆も旗もない殺風景な船に遭った事をウソップが気にかけてた間に次の島に着いた島は、見渡す限り大草原だった。

「なんじゃここは!すげー!見渡す限り草原だ……」
「あァ、何つう色気のねェ場所だよ」
「人は住んでいるのかしら……」

不思議な島に騒ぎながら飛びこんでったルフィとウソップとチョッパーのお馴染みの組み合わせ。そんな3人にため息を漏らして呆れるナミの傍らで錨を下ろすゾロ。何か分かるまではじっとしていてほしいと思ってるナミの事なんて知らずに先に上陸した3人は、どんどん先に歩いて騒いでた声も姿も確認できなくなるくらいになってしまった。

遅れをとった事に気づいて船から降りて追いかけようとするとガシャンって金属が擦れるような音に振り向いたらメリーの何倍もある大きさの船がメリーの行く手を塞いでた。

「さっさと出て来い相手になるぞ!」
「我々はフォクシー海賊団。早まるな、我らの望みは決闘だ!!」
「……決闘?」
「そうだ。だが殴り合いのただの決闘ではない。デービーバックファイトだ!」
「デービーバックファイト?」
「そうだ。戦いの火蓋は互いの船の船長同士の合意の瞬間、切って落とされる。今おれ達の船長がお前達の船長モンキー・D・ルフィに戦いを申し入れている頃……!」

あたしを置いて進む話デービーバックファイトの話。そういえば前に聞いた事があったな、やった事はないけど。

「申し入れ?何を眠てェ事やってんだ。ケンカなら買うっつってんだろ!」
「おい……お前知らねェのか?ケンカじゃねェ。デービーバックファイトは海賊のゲームだ」
「そうよ。海のどこかにあるという海賊達の楽園、海賊島でその昔生まれたというゲーム……。より優れた舟乗りを手に入れる為海賊が海賊を奪ったというわ」

海賊の中ではそれなりに有名なゲームらしいけど今までやった事ないからただの作り話だと思ってたけど、まさか本当にやる日が来るなんて。

「そんな事も知らねェでよく海賊やって来れたな。デービーバックファイトってのは人取り合戦の事さ!おれ達が挑むのは3コインゲーム!3本勝負だ!」
「1勝負ゲームごとに勝者は相手の船から好きな船員を貰い受ける事ができる!」
「貰われた船員は速やかに敵の船長の忠実な部下となる!」
「深海の海賊デービー・ジョーンズに誓ってな!!」
「負けたら、仲間を取られるの!?」
「その通りだ!」
「なお敵船に欲しい船員がいなかった場合船の命、海賊旗ジョリーロジャーのシンボルを剥奪する事もできる」
「賭ける獲物は仲間と誇り。勝てば戦力は強化されるが、負けて失うものはでかい……。エゲつないゲームさ」
「じゃあ……もしかして、海で会ったあのまとまりのない妙な船。帆もなくて、船長もいない船……」
「ほう。もしやキバガエル海賊団の船にでも会ったか?あの船ならさっきゲームの餌食になったのさ!見ろ!こいつらがおれ達の新しい仲間」

そこで勝手に紹介されたキバガエル海賊団の元クルー達。ゲームはさっき終わったばっかりなはずなのに、表情を見る限りもうすっかりあいつらと馴染んでるみたいだ。

「……バカバカしい!私達はそんなゲームの申し入れ絶対に受けないわ!!」
「バカめ!それは一船員が決めていい事ではない!このゲームは互いの船の船長の合意によってのみ開戦する!泣けどわめけどお前達の船長モンキー・D・ルフィが首を縦にふればお前達も全員ゲームの参加者となるのだ!」
「その通りだナミさん。これは海賊の世界では暗黙のルール……!逃げ出せばこの世界で大恥をかく事になるぜ!」
「いいじゃない恥かくくらい!!」
「生き恥さらすくらいなら死ぬ方がいい」
「右に同じ」
「何よそれ二人共っ!」
「諦めなさい。男ってこういう生き物よ」

ゾロはプライド持ちまくりな事はゾロ自身を見ればわかるけど、サンジくんはいつもメロりんしてて戦わないと分からないから、今2人の言葉を聞いて胸がきゅんとした。あたしはエースに拾われてからもオヤジの船に乗ってからも同じ立場の女の子には会わないで、ずっと男の人に囲まれてきたからそういう男のプライドっていうのにはどうも弱いみたい。

「あたしも気持ちわかるよ」
「リリナまで!」
「あたしもそうやって海賊やってきたから!」

それせいかおかげか、そのプライドっていうのに少し影響されて逃げるのは少し嫌いになった。もちろん相手を目の前にしてだけど。特にエースは海賊を目の前にしたら逃げるの嫌いだったのが一番影響されたのかも。ここで逃げたらオヤジの名前に傷がつく。それだけは譲れない。今はオヤジのそばにいないんだから変な噂は立たせないようにしなきゃいけないし、いい話だけオヤジに聞かせてあげたい。

「んもーっ!じゃルフィを止めなきゃ!」
「ムダだあがくな。船長同士が同時に打つ2発の銃声が開戦の合図!大人しく……」

なかなか踏ん切りのつかないナミがルフィを説得しに行こうと走り出したら、どこからか聞こえた銃声は2回。向こうの船のクルーが直前に言っていた開戦の合図だと分かるのにほんの少しだけ時間がかかった。