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「落下地点は……フィールドの外ォ!デービーバックファイト三回戦!チームの運命を背負ったキャプテン同士の熱く壮絶なコンバット!オヤビン920戦無敗の伝説はここに敗れゲームを制したのはなんと!麦わらのルフィーー!!」

実況がルフィの名前をあげると観客席がまたどっと湧きあがった。しかも向こうのクルーは自分達の船長が敗けたのに一緒に喜んでる人もいるし。もちろん我に帰って海に落ちた割れ頭を助けに行った人もいる。試合終了のゴングが鳴ってやっとそわそわがなくなった。このゲームはルフィが勝ったんだ!一時はどうなるかと思ったけど、あたし達は誰1人奪われずに勝てた!


試合が終わってすぐ倒れた傷だらけのルフィを治療して気がつくのをみんなで囲んで待った。

「あ、あれ!?ゲーム!ゲームは!?……おれ勝ったと思ったのに夢か!?」
「大丈夫だ勝ったよ」
「……よかった!」

起こした体をまた倒して安心したように微笑んでるルフィにつられて笑った。何度も思うけど本当によかった。この船でなきゃきっとオヤジに怒られるどころじゃすまないし、帰って来るなって言われちゃいそうだもん。

「安心して観てたぞ、おれは」
「ウソつけ」
「考えたらこの船出て海賊やる理由はねェんだ、おれは」
「あたしも、みんなに送ってもらわなきゃやだよ」
「あーそうかお前そういう乗船理由だったな」

本当に安心した。あんな一人ぼっちでいたところを拾ってくれるのなんてルフィしかいなかったかも。



「海賊旗をくれ!!」

傷だらけの割れ頭が来て三回戦の取り引きをする事になった。けど、向こうの船から来た人とは快く航海できないしなあ、って考えてた。

「何ーーっ!?」
「お!おいルフィ!いいのか!?お色気船大工ジーナ姉さんはいいのか!?後悔しねェか!?」
「欲しいもの貰ったら何の為に決闘受けたんだかわかんなくなるもんな」
「……そんなばかな!迷わずおれ達の誇りを奪おうというのか!」

海賊旗というよりフォクシー海賊団のマークをもらう事になって、その代わりにルフィが帆に新しいマークを書いてあげてたんだけど、ものすごく下手っぴな絵にあたしまで落ちこみそうになる。こんなんじゃ恥ずかしくて航海できない……。かわいそう。ところで麦わらのマークは誰が書いたんだろう。ウソップかな?そうだきっとウソップだ。器用だもんねウソップ。

「勝者!麦わらの一味!デービーバックファイトこれにて閉会ーー!」
「あれ……」

閉会したのに出店とか飾りものを片付けてる向こうのクルーの騒がしさに混じって、信じられないものが紛れこんでる。ここから少し離れたところに立ち尽くしてるからこっちに向かってるわけじゃないけど、あんな奴に会ったらただじゃ済まないのに。


新しい帆で海を進み始めたフォクシー海賊団を見送ってから、ルフィが寄るところがあるって言ってどんどん島の中に歩いていく。本当は船で待っていたいけど、あたし1人だけ助かるなんて事できないから付いていく。近づいていくのと一緒にどんどん強くなる気配に嫌な汗が垂れてくるのがわかる。どうすればいいのか分からない。どうしよう、どうしよう……頭の中がいっぱいいっぱいで他に何も考えられなくなる。そうしてる間についに視界に入っちゃって目がそらせなくなる。

「……やっぱり……」
「リリナちゃん…?」

人の家の玄関の前でアイマスクを付けて堂々と立ってるあたし達より頭1つ以上大きい青キジに、このお家の主の人がぶつかってやっとそこに人がいる事に気づいた。

「うお!何だこれは……」
「人!?ずっとここにいたの!?」
「んん?……何だお前ら」
「おめェが何だ!!」

ぶつかった衝撃で青キジもやっとアイマスクをとってあたし達を見渡したところで、見下ろされるように目が合った。それと一緒にロビンが顔を青くして腰が抜けたように座りこんだ。そんなあたし達の様子を見て他のみんなが青キジを警視する。

「いやいや、まだこの一味と一緒にいたのか嬢ちゃん。何でこんなとこにいるんだい。白ひげはどうしたよ」
「………」
「お……コリャいい女になったな、ニコ・ロビン」

固まるあたし達をおいて見かけによらずぺらぺら喋る青キジを見たまま一ミリも目を逸らさずに睨みつける。あたしが目を逸らした隙を狙って攻撃を仕掛けてくるかもしれない。そうなったら相手は海軍大将だから一発でもまともに受けたら一溜まりもない。あたしと青キジの力の差はそれくらい歴然としてる。でも、もう逃げられない。逃げるのは嫌いだ。