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フォクシー海賊団との仲間と海賊の誇りをかけた激戦のデービーバックファイトに勝って、思わぬところで青雉に会って氷漬けにされてからだいぶ身体が動くようになってきた。次の島に着くのを待っている間、朝起きて一番にチョッパーに診察してもらう。まだ手が思うように動かないからいつも通りあったかいもの食べて飲んでお風呂もゆっくり浸かるようにって言われました。


そんなあたしの日課になっている事は、診察が終わってすぐキッチンに行ってあったかい紅茶を飲む事。今日で3日目でまだ日課なんて言えないかもしれないけど、その時間がすごく和むんだ。

紅茶を飲みにキッチンに入る前にドアについてる丸窓から中を覗くと、いつも通りこの船のコックさんがキッチンに向き合って何かしてるとこだった。その頭から煙がもくもく立ちのぼってるのを確認してからドアをあけるとそれと一緒に振り向いたサンジくんと目が合って、咥えてた煙草を口から離して口の両端をあげていらっしゃいって歓迎してくれた。指の間の煙草はそのまま灰皿に持っていて火は消された。これもいつもの事なんだけど、でもね。

「今紅茶淹れるよ」
「うん……」

背中を向けてお湯を沸かすサンジくんを確認してからさっきまで吸ってた煙草に目だけ向けて見れば、昨日吸ってたのよりまだ吸っていられそうな長さのところで火が消されてる。テーブルの端っこにあった煙草の箱の中から一本借りて比べて見ても長さがあんまり変わらない。そんな事をしてたら横から湯気の出る紅茶と一緒に煙草を取りあげられてダメって言われた。別に吸うつもりはなかったんだけど誤解されちゃったみたい。

「おれの努力が台無しになる」
「努力?」
「煙草の煙でリリナちゃんの真っ白な肺が汚れねェようにな」

あたしのために?だからいつもあたしが来ると消してたんだ。

「あたしがいるときも吸ってもいいよ。口と鼻押さえてるから」
「煙草の煙は手強いんだぜ。いいんだこれくらい我慢する」
「我慢なんてしなくていいのに。煙草我慢するとイライラしちゃうんでしょ?」
「まあな。でもその代わりリリナちゃんがそばにいてくれりゃァいいよ」

頬杖をついてにっこり笑いかけてくれるサンジくんにまた紅茶を喉に通した。あたしの足りない頭じゃ煙草を吸ってもらうように仕向ける事はできないみたいでちょっと悔しい。

実は最近のお気に入りはサンジくんが煙草を吸うところなんだ。指の間に挟んでるときとか、咥えながら話してるときとか、戦闘中は噛んじゃったり、煙を大きく吸ってただ吐くだけの動作でも画になる。その仕草を思い出したら少しドキドキしてきた。だってすごく大人っぽくて、あたしには到底真似できなさそうなんだもん。