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ざわざわと人の話す声が聞こえた気がして目が覚めた。外からはいつも通りルフィを中心にみんなの声が聞こえてきた。それに安心して大きく口を開けてあくびと、寝たまま両腕を頭のほうに伸ばして胸を張って背筋も伸ばせばスッキリした気持ちになったとこで、またあくびが出た。もう少し寝ようと思ったら外に出られるドアからナミが入ってきて島に着いたって教えてくれた。

ナミはルフィとウソップと一緒に黄金をお金に替えてもらいに行くんだってそれだけ言ってドアを閉めて船から降りてった。ロビンもチョッパーと一緒にどこかへ行っちゃったみたいで、あたしも一緒に行きたかったなって思ってるのに体はまだ寝ころんだまま。眠いけどもう島に着いてるんだったら行かなきゃ。次の島。

そこでやっと新しい島に来ている事を思い出した。早く、早く行って散策しなくちゃ!慌てて飛び起きてドアを開けて最初に見えたのは街の真ん中にある大きな噴水。よく見るとあっちこっちにもあるけど、やっぱり最初に見た噴水が一番大きかった。島っていうより、都市がそのまま海に浮いてるみたいに見える。

「リリナちゃんおはよう」
「あ、おはよ。あれ珍しいね、サンジくんとゾロが2人なの?」
「出はぐったらこんな奴と残っちまったんだ。っけ!」
「ちょうどいいじゃねェかリリナと出てけよ」
「言われなくてもそうするぜ。リリナちゃ〜ん、おれをお供に水の都を堪能しませんか?」
「うん、行こっ!」
「マジ!?」

サンジくんは自分で誘ってきたのにあたしがオッケーしたら少し驚いたような顔をしてた。誘ってきてくれたのはサンジくんなのに変なの。


町に出て並んで歩いてるとたくさんの人がいて、ときどき仮面を被った人達もよく見かける。綺麗な町に、派手な仮面は似合わないな。何かイベントでもあるのかな?この町は水路が多いから町を回るならヤガラブルっていう乗り物が便利だからって紹介されたから、そのヤガラブルを一匹借りてサンジくんと乗るとそこから見る町の景色もまた綺麗で水の音が心地よく感じる。

「リリナちゃん何か食うかい?」
「いいの?じゃあね、水水アメがいいな!」
「水水アメ?」
「うん、さっきからお店の人が呼びこみしてるの」
「へぇ、面白そうだな。買いに行こう」

そんな流れで買ってもらった水水アメはとても美味しかった、ちなみにりんご味。ヤガラブルを降りて道を歩いているとどこにでも水路があって似たような道ばっかりで何回も行き止まりに出ちゃう。5回目の行き止まりで戻ろうと思って後ろをむいたらロビンがいて声をかけた。

「ロビンだ、おーい!」
「ロビンちゃーん!……あれ?」
「聞こえなかったのかな?」
「おーーいおれだーっ!ロービンちゃ……え?」

聞こえてないはずはないのに振り向いてくれなくて、路地に入ってっちゃって見えなくなっちゃったからサンジくんと走って追いかけたのに、その先も同じような行き止まりでロビンはいなくなってた。

「いない……」
「どこに行ったんだ?わからねェか?リリナちゃん」
「うん…⋯急に気配なくなっちゃった……」
「……おかしいな」

確かにロビンだったのに。どうしたのかな?そういえばチョッパーと一緒だったはずなのにロビン一人だったな。あ、でも前に人がいたよね。誰なんだろう?知り合いかな?二人ではてなマークを出し合っていると上で物音がして顔をあげると鼻の長いウソップが屋根の屋根の間を渡って走ってた。

「ウソップ??」
「ウソップかな?親戚?」

もう両手じゃ数えきれないぐらいのはてなマークを出しながら町を歩いていると、チョッパーを見つけた。声をかけたらあたし達に気付いてくれて今度はちゃんとチョッパーだった。もちろんさっきもロビンだった、はずなんだけど。ヤガラブルに乗ってチョッパーを膝の上に乗せながらロビンとはぐれた事を話してくれた。という事はやっぱりさっきのはロビンなんだよね?

「ごめんよー、サンジ。おれ本に夢中で……」
「お前が謝る事っちゃねェよ。おれァてっきりロビンちゃんと一緒にいたのは人型になったお前かと……。じゃああの仮面の奴ァ一体誰だったんだ。何も起きなきゃいいが。胸騒ぎがする……」
「え……!診察しようか」
「病気じゃねェよ!青キジの言葉がよ、頭を過るんだ……」
「……?何か言ってたか?」

これだけ怪しい仮面がうろうろしてたら反応しちゃうし、ややこしいしもうどうしよう。あたしもなんかドキドキしてしょうがない。

「ロビンちゃんの過去をつつく様な事言ってたろ。そしておれ達に、いつか後悔すると……。とにかくメリー号に戻ろう。何でもなきゃ彼女も直帰ってくる……」

もやもやしたまま3人で船へ向かった。ロビンが戻っていればこの嫌なものはなくなる。きっと帰ってるから大丈夫、と言い聞かせるしかなかった。