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船に戻るとゾロがいた。本当にちゃんと船番しててくれたんだ。あ、ゾロにも水水アメ買ってきてあげたらよかったかな?残念私は気が利かなかったようですね。なんて考えながらゾロの顔をよく見たらちょっとだけ、いつもと様子が違って不思議に思ってたらどうしたの?ってそのまま声に出てた。

「……なァ。メリー、もう直らねェってよ」
「はぁっ!?」

ゾロから出た言葉は頭の片隅にも思わない唐突な話で驚きもしたけど、なにより半信半疑だった。メリーが?直らないの?どうして?

「本当かよ!」
「そう言ってた。……その船大工はな」
「この船が!?」
「もう直せない!?金があってもか!?じゃあ……ど、どうなるんだ?」

それって本当の事なの?そりゃプロの船大工に見てもらったんだもんね、本当なんだろうけど直せないってどうして?プロの船大工ならそれをどうにかしてくれるんじゃないの?

「さァな。最終的にはルフィ達がどう判断するかだ。造船所にいる3人で何らかの答えを出して来るだろう」
「……そんな事言われても……話が極端すぎるぜ。だってお前!みろ、船はいつもと変わらねェし……。東の海イーストブルーからこんなトコまで一緒に海を渡ってきたじゃねェか……」
「渡ってきたからこそ、だろ。人間なら波を越える度強くもなるが、船は違う……。痛みをただ蓄積するだけだ」
「……そうだよね。ちゃんとした修理してあげられてなかったのに無茶ばっかりしてきたもんね……」

考えてみたら今まで船大工もいないのによくここまで来れたなって思う。こんなツギハギだらけで、ウソップの措置も正しいのか間違ってるのかわからない直し方だし。でも、こんなにしっかり海に浮かんでるのに……。だからこそ、ちゃんと信じられない。

「腑に落ちねェ!ウソップの奴、コレ聞いたら何て言うか……」
「おれメリー号が好きだぞ!」
「……全員そうさ。だが現状打つ手はねェそうだ」
「メリー号も……ロビンちゃんも心配。落ちつかねェ午後だ……」

みんなが静まりかえったとき、離れたとこからナミの声が聞こえた。町の方を見ると、確かにナミがいたけど一緒に出てったはずのウソップもルフィもいなかった。また、なんでいないの?さっきのロビンと重なってまたドキドキし始める。

「ナミ……」
「あれ!?ナミが帰って来たぞ!」
「ん?一人みたいだな。ルフィとウソップはどうしたんだ?ナミさーーん!何かあったのかーー!?」

慌てた様子で走ってきたナミが息を切らしながら町で換金をして造船所に行ったら2億ベリー盗まれてウソップがボロボロにやられてしまった事を話してくれた。ルフィはそのフランキー一家って人達を探し回ってるんだって。

「そんじゃ行ってくるか」
「頼んだわよ。大事な2億ベリー」
「リリナ、お前は残ってろ。ナミだけじゃ心許ねェから」
「うん、わかった」

船を下りて走っていく3人を見送っているとナミが船内から刀やら拳銃やらをいくつもいくつも運び出してた。そんなに厳重警戒しなくても大丈夫だと思うけどなあ。でもこれを言ったら怒られそうな気がするから、そっとしておこう。銃はとにかく、剣とか握られたらヒヤヒヤどころじゃないから誰も来ない事を祈っとこう。