009

ルフィとサンジがナミを連れて山に登っていってから、ドルトンが少し前までのこの国の事情を話してくれた。

数ヶ月前にこの国を黒ひげと名乗る男の海賊団のたった5人に襲われ、滅ぼされた。しかもこの国の王は昨日おれ達の船を襲ってきやがったあのワポルとかいうカバ野郎らしい。そいつ等はその海賊たちの強さを知った途端にこの国を捨て、海へ逃げてったって話だ。海は逃げ道じゃねェだろうがよ。だがワポルがいなくなってからは新しい国を作ろうと頑張っているそうだ。そりゃそんな時に来たら気が立つのもあたり前だ。
そんな話をしているとまたハイキングベアが現れて慌ててリリナと礼をする。姿が人間に似てきてるのは町に住みついてるせいか?言葉も話せるとは利口な熊だ。

「ちょうど今ね!隣町に来てるらしいわよ!」
「な、なんですと!?」

ハイキングベアから耳寄りな情報を聞いて慌ててソリに乗って急遽隣町のココアウィードを目指すことになった。


「すまん、私のミスだ。昨日ドクターが山を降りてきたという情報があったもんでもう数日下山はないとふんでいたが、読み誤った!」
「気にすんな!あんたのせいじゃねェよ!問題はあの二人の異常な脚力だ。おれ達が今さら雪山を追いかけたとこで追いつけねェ。だから、そのココアウィードって町にドクターが現れたんなら、頼んで至急城へ帰ってもらうまでだ」
「ええ。それ以外に方法はないわ!」
「……許してくれ」

いきなり声のトーンを下げて謝るドルトンに訳分からなくて聞き返した。医者すらままならないこの国に気負いを感じているという。何ヶ月か前に滅んだ国が今ここまで修復されてるんならそれだけで十分だ。


おれ達がココアウィードに着いた頃にはもう既にドクター魔女は町を出ていて、すれ違いになった。今度は北のギャスタという町に向かったらしい。……よく動きやがる。
おれ達が向かおうとすると慌てた男が店に入って来てワポルの奴がこの国に帰ってきたと報告した。それを聞いたドルトンは一目散に店を出て最初にいた町に行ってしまった。すると町の奴らも忙しなく動き始めるからおれも移ってソワソワせざるを得なくなってきた。

「ど、どうするよ」
「ここにいてもどうも出来ないわ。ドルトンさんを追いかけても大した戦力にならないし」
「いや、でもこいつ……」

おれが親指を差すと当の本人はとぼけたように首を傾げた。昨日のが嘘みたいだな。何もしてないと……なんか、普通の女なのにな。

「あたし達は直接関わってないし、変に手助けしても良くないよ。立場的に」
「……お前意外と考えてるんだな」

そう言うと気にする素振りも見せずまあね、なんて得意気に笑った。おれはルフィと同じくらいアホで無鉄砲なやつだと思ってたけど、頼りになりそうだな、それなりに。いや、したくはねェけど!おれだって男だし!

「私たちはギャスタへ向かいましょう!」

そういうビビがおれを置いてソリを走らせるもんだから危うく乗り遅れるとこだったぜ。