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最初の車両の敵を片してから次の車両に乗りこんだら、人の少なさに拍子抜けした。2人とかなんだもん。早くしなきゃサンジくんがって考えてるうちにサンジくんが敵を片付けていっちゃって、これが考えてる暇もないって事なんだなあってぼんやり考えてたら袋に入ったウソップがいた。全然気付かなくて不意打ちだったから驚いた。

「サンジ!リリナ!お前らが何で海列車にいるんだ!?」
「そりゃあ……こっちが聞きてェよ。そこの、あー名前など存じませんがそこのキミ」
「わっざとらしいなてめーコノ」
「ぶえっ……」

ちょっと傷が目立つけど、無事で何より。ウソップの事はあれからいろいろあったから思い出す事はなかったけどね。今思い出したよ。ちょっと泣きそうになったときにサンジくんが声を上げたからどうにか涙が引っ込んだ。なんで捕まってるのか知らないけどロビンと一緒に助けてあげよう。

「あったあった電伝虫。あァよかった、何だここには何匹もいるじゃねェか。通信室も兼ねてんのかな?さっきの車両の役人達ときたら仮面やら仮装服やらくだらねェもんばっか持ってやがって。やっとこれでナミさんと連絡を」
「お前ら……つまり海賊仲間か」
「元な」
「誰だてめェは」

実はあたしも気になってた、ウソップと同じように袋に包まってる水色の髪をしたなんか変な人。触れていいものか分からないし、触れちゃいけないような雰囲気もあった。

「おれァウォーターセブンの裏の顔!解体屋フランキーだ」
「てめェがフランキーか!クソ野郎!よくもあん時ゃウチの長っ鼻をえらい目に!何枚にオロされてェんだコラァ!!」

フランキーって名前を聞いた途端にサンジくんが豹変して怒りだした。なんだサンジくんは知り合いだったんだね。ウソップと何かあったのかな?あたしだけ話しについていけないから必死で考えたら気付いたんだけど、ウソップをボロボロにした奴がフランキーなんだと思う。それならサンジくんがあんなに怒るのも納得がいくからね。

「いやいやちょっと待て!あれから色々あったんだ!こいつは一時メリー号を助けてくれたし。……!そうだ、メリー号は!」
「おいおい待て、今しんみりしてる時か。とにかくお兄ちゃん頼む、縄を解いてくれ」
「誰がてめェの縄を解くか!一生捕まってろタコ!」
「てんめェ人が下手に出てりゃいい気になりやがって!」
「おいてめェらやめろってのに!グズグズしてたら見つかっちまうだろうがァ!!」
「……ウソップ、今の声大きかったね」
「……あ」

こんな状態でも静かにする事ができなくて、やばいって事になって口を開くのをやめたら足音が聞こえてきた。誰かこっちに向かってるみたいだよ。

「んー、ひとまずナミさんに連絡を入れたい。何も言わねェで出てきちまったからな、それが先決だ。隠れるか」
「どこに?」
「……上しかねェか。行くぞ」
「上?」

天井を見上げれば、確かに高いかもしれないけどすぐに見つかっちゃうんじゃないかな?そもそもあたし天井に貼りつく技なんてできないよ。

「風が強いからリリナちゃん吹き飛ばされちまうかもな。おれに掴まって」
「サンジくんに?……ぎゅって?」
「うんっ。さァおいで!」

さっきの今でそんな事するなんて恥ずかしすぎる。けど吹き飛んで海に落ちるなんてやだ。それならサンジくんに助けてもらった方が安全だよね。恥ずかしいけど。とても嬉しそうに手を広げるサンジくんを直視できない。あ、また顔熱くなってきた。

「そういうのいいから早く行け」
「うん……」

早くしなくちゃ。顔見なければ平気、顔見なければ平気!よしっ!意を決してサンジくんに横からしがみついた。ちょっと湿ってるけどかっちりした体の感触にドキドキして体に力が入った。サンジくんと目が合ったら恥ずかしいから目を開けないでいたら、またいろんな方向から風に吹かれるようになって目を開けた。さっきよりも海が荒れてる。サンジくんにお礼を言ってから離れると、逆に心臓がもっとドキドキし始めて落ち着かなくなった。こうなったらどうすればいいんだろう?これからが頑張りどきなのに、こんな変な事考えてちゃ相手に隙を見せる事になるのに。

一人で考えてるうちにいつの間にかネクタイを外したサンジくんが電伝虫を取り出してまだウォーターセブンにいるルフィ達に繋いだ。向こうが受話器を取ると電伝虫は瞑っていた目を開けて、向こうのナミと同じ表情になった。

「ナミさんナミさん聞こえるか!?」
『うん!サンジ君ね!?』
「あたしもいるよ!」
『はいはい』

ナミにはサンジくんを合流する事しか言ってないから横から口を挟んでみれば、電伝虫は目を細めて今にもため息をつきそうな顔をした。

「こちらちょっとアホ二人のせいでマズイ事になってきた」

聞こえてくる声はナミのものだけじゃなくて、いろんな人の声のこもった声が聞こえてくる。何人いるんだろう?楽しそうだな。でも他のみんなの声が聞きたいんだけど、ルフィとゾロは今お取り込み中だからってチョッパーと話しをし出したんだけど、来たよってすぐに引っぺがされたみたいでチョッパーにしては低めのうめき声が聞こえた。