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『んー?なんだ電伝虫?』
「ルフィーっ!」
「おうルフィか!」
『リリナー!サンジーっ!そっちどうだ!?ロビンは!?』

不意に聞こえたルフィの声に考えたものが吹き飛んでサンジくんの前にいる電伝虫ににじり寄った。電伝虫は嬉しそうに笑ってる。まさにルフィと同じ表情で、向こうのルフィが見てとれそう。

「ロビンちゃんは……まだ捕まったままだ。ナミさんから今事情を聞いたとこさ。……全部聞いた」
『そうか……。いいぞ、暴れても!!』
『ルフィ!無茶いうな!おれ達が追いつくまで待たせろ!おいコック聞こえるか!その列車にはヤベェ奴らが
『いいってゾロ!お前ならどうした。止めたってムダだ』

向こうではルフィがお許しをくれたけどゾロが珍しく待ったをかけててそれをルフィが止めてた。なんだかんだでゾロもこれに関しては慎重になってるのかな?珍しい事もあるものなんだね。

「……わかってんなァ。おうマリモ君、おれ心配してくれんのかい?」
『するかバカ』
「だが残念。そんなロビンちゃんの気持ちを聞かされちゃあ……たとえ船長命令でも、おれは止まる気はねェんで!!」
「!!」

あっ電伝虫⋯⋯サンジくん受話器壊しちゃった。そっかさっきのナミの話聞いてサンジくんもこう、ぐっときてたんだな。分かりにくいんだよなあ、ルフィと違って。だから今回の事だって……。いやいやもうその事はあまり考えない事にしよう。気持ちを切り替えなくちゃ。

そこでさっきのナミの話にいろいろ疑問を持ったらしいウソップがいろいろ聞いてきたから、それをサンジくんが簡単に要点をまとめて話した。

「おれが一味を抜けてる間にそんな事が起きてたのか……!」
「ロビンちゃんはメリー号の件もルフィとお前が大喧嘩した事も……何も知らねェ。だからお前を含めたおれ達7人が全員無事でいられる様にと、ロビンちゃんは自分の身を犠牲にしてあいつらの言いなりになってたんだ。俺たちの為に」

しんみり。今起きてる事を言葉にして整理するとロビンはやっぱり返してもらわなくちゃって思いなおす。こんなのあたし達のやり方じゃない。交換条件なんていらない、あたし達はそんな綺麗な事しなくたって無理矢理でもどうにかなったのに。その時聞こえてきたのは鼻にかかったような声とずびずび鼻をすする音。ぎょっとして音のする方を見たらさっきからずっと一緒にいる変な人が、見かけによらず涙もろいみたいで大粒の涙を流してた。今じゃ雨なのか涙なのか分からないけど、あれはたぶん涙だね。

「チキショー何てこったァニコ・ロビンってのは世間に言わせりゃ冷酷非道の悪魔の女のハズ……。それがどうだそのホロリ仲間慕情……!」
「ロビンちゃんは目と鼻の先にいる!とにかくおれは救出にいくぞ!」

暴れる変な人をおいて立ち上がったサンジくんの後を追いかけようとすると、さっきまでぐちゃぐちゃだったはずの変な人はすっきり綺麗な顔をして立ち上がった。

「よし!このフランキー一家、棟梁フランキー!手ェ貸すぜマユゲのお兄ちゃん!理由あって実はおれもニコ・ロビンが政府に捕まっちゃあ困る立場にあんのよ!!何よりそんな人情話聞かされちゃあ……おい!長っ鼻!行くぞ!!」
「おれは……いいよ」
「……え?」

ウソップは来てくれると思ってた。目の前に捕まってるロビンがいるのに、行かないなんて言わないと思ってたのに、ウソップはあたし達に背中を向けた。

「もう……おれには関係ねェじゃねェか。いよいよ世界政府そんなものが敵になるんだったらおれは関わりたくねェし。ルフィ達とも合流するんだろ……!?あんだけ啖呵きって醜態さらしてどのツラさげてお前らと一緒にいられるってんだ!!……ロビンにゃ悪ィが…おれにはもう、助けに行く義理もねェ!!おれは一味をやめたんだ!じゃあな」
「じゃあなってお前どこにも逃げ場はねェぞ!」

ウソップはそのまま歩いて最後尾の方に歩いていっちゃった。けどこれからどうするつもりなんだろう。この嵐の中じゃ海に落ちたら波に飲まれちゃうし、ここにずっといるつもりなのかな。でもそしたら次の駅まで乗ってるって事なの?……心配だな。

「……いいよ、ほっとけ」
「サンジくん……」
「大丈夫さ。見捨てるわけじゃねェがとりあえずあいつの事は後回しにしよう」

サンジくんはそう言ってるけどウソップの事だから海に落っこちちゃいそうだから、放っておくにも放っておけない。

「あ!見つけた……!」
「見つかっちゃった!」
「"メタリック・スター"!!」

前の車両に進もうとしたとき、窓から登ってきた海兵に見つかっちゃった。どうしようって考える暇もなくすぐにその海兵は海に弾き落とされてった。

「誰だ!!」
「話は全て彼から聞いたよ。お嬢さんを一人……助けたいそうだね。そんな君達に手を貸すのに理由はいらない。私も共に戦おう!!私の名はそげキング!」

あたし達の前に現れたのは仮面をかぶった男の人だった。