099

変な顔のワンゼは羽織ってた服を一枚脱ぐとあたし達に向けて構えたから、あたしも少し足の幅を広げる。今すぐかかってくる気はないみたい。

「おれ達を止める気か?」
「止めるよーーっ!さっさっさっさー!この海列車護送任務!こういう万が一の襲撃の為におれはいるんだよーっ!罪人を解放したいんだったらこのおれのラーメン拳法に勝ってみろ!!」
「ラ……ラーメン拳法!?」
「ラ、ラーメン拳法ぅ!?」
「あの野郎!!人をバカにしやがって」
「のせられんなバカ思うツボだろ!」
「あははは!」
「さっさっさーっ!どうだった?アホのものまね」

そげキングの真似をしたワンゼが面白くて笑ってたら横から拳骨が飛んできた。痛い、痛いけど似てなくて逆にそれが面白かったんだもんしょうがないよ。誤解だよ、痛いよ……。

それから向こうも、そげキングと同じようにペースに乗せられて、その後落ち着いてるはずのサンジくんまで巻き込まれてひっちゃかめっちゃかになった。

「とにかくコイツはおれに任せてお前ら次の車両に行け!」

まとまり悪いなーって思ってるとサンジくんが早く次の車両に行けって急かしたから、そげキングとフランキーは来た扉から出てってまた上に登り始めた。あたしは残る事にした。滑って海に落ちたら嫌だもんね。

「さっさっさっさっ!逃げられたー!!でもそれもムダだよー!次のしゃ
「リリナちゃんは?」
「あたしはここにいるよ」
「あいつら死ぬ
「そうか。それじゃァここはおれに任せて下がってくれよ」
「うん、わかった」
「人の話を聞けェ!!ラーメン拳法"麺切り 炎包丁ファイアスケート"!!」

あたし達が話してるのに不意を狙ってきた変な顔の人を横に避けてる間に、サンジくんが反撃にしては多いくらい蹴りを入れた。そのおかげでワンゼの顔はぼろぼろ。

「……ぐ!ぐおおーーっ!!か、かわされた瞬間に……10発くらい蹴られたー」
「12発だ」
「……!?おまへまさかメチャメチャ強いんじゃない!?」
「お前が口程にもねェだけだろ」
「おォいおい口程にもねーなんて親父にも言われた事ねェよー!やめろ失敬なおれはワンゼだよーん!!実際おれがお前の珍しいぐるぐるマユゲによって目ェ回してたトコをさし引いてもお前なかなかやるなー!」
「お前に顔が珍しいとか言われたくねェよ!」

また笑いそうになって、ポーカーフェイスを保ちながらぐっと堪える。今笑ったら絶対サンジくんに怒られるよ。間違いないよ。だってすごい怒ってるもん。

「よーーしいいよーっ!おれがなぜこの罪人護送チームに選ばれたかを今すぐお前にわからせてやる!!"ラーメン拳法奥義"!麺を鍛えて!麺を鍛えて出来上がる!」
「何だ、こりゃ」
「食べられる夢の戦闘服!"麺ズ正装フォーマルスーツ"!!」

瞬く間に小麦粉を練って叩いて麺にしたワンゼはそれを器用に自分の体に巻きつけた。その何とかスーツのおかげでワンゼは見上げるくらいに大きくなって、少し圧迫されるような感じがする。でも食べものをそんな使い方していいの?仮にもコックさんなんだよね?こっちのコックさんが黙ってなかったりするんじゃないかな?

「さっさっさーっ!ラーメン拳法の極意は麺を自在に操る事にある!!」
「食い物で遊びやがって」
「スピード!パワー!特殊能力共にさっきまでのおれとはケタ違いの強さを発揮するよーーっ!!」
「喋りはいいからかかって来い!てめェその麺全部食わせてやるから覚悟しろ!」

あ、ほら怒ってるみたいだよ。サンジくん怒ったら怖いんだからねっ!