「縄を?」
「ちょっと聞いて下さい!ナミさんがどこかへ行ってしまったことと、足元がヤバシで私の力が抜けていくこと……!」
「ええ!?ナミが!?」
忘れていたけどブルックは能力者だからこの中では一番不利な状況になる。背が高いからまだ少ししか浸かってないけれど、あたしの腰のあたりまでもう海水が溜まってきているからブルックは力が入らないようで今にも倒れそうにしている。
「この国との交渉は決裂だ!人質を全員無事に返すって約束をおれ達は守れなかった!」
「なんと律儀な……!」
水の中から落ちていたナイフを拾って手当たり次第に兵士達の縄を解き始めると、それを阻止するために魚人達が攻め立ててくる。対抗するようにウソップが臭い花を咲かせて牽制した。
身動きの取れないブルックはウソップが抱えて、ゾロは国王を縛っていた鎖を切ってホーディのいる海中へ潜った。
「全兵聞け!」
「はっ!すぐにホーディとその一味を」
「ダメじゃもん!」
「わしがまともに戦えぬ今、お前達に無駄な犠牲者を出してしまう。一旦やつらに明け渡しフカボシらと合流し再戦のときを計る!」
「城を明け渡す!?ネプチューン様本気でありますか!?」
水中で自由の利かないあたし達は国王に任せることにしてゾロを待っていると背筋が凍るような嫌な感覚に襲われた。
「やはり全兵を城の外へ逃がさねば。片目の剣士、場内はやがて水で一杯になる!おぬしもわしの体に掴まれ!」
国王が何かを準備し始めると兵士達がコーティングシャボンを作ってくれた。それを頭に被ってから国王のもじゃもじゃの髭に掴まると水中へ潜った。
「道を作るぞ!さァ兵達よ戦わず城を抜け出せ!"
力強く海水を掴んで魚人達に向かって投げつけると大きな水の流れとなって魚人達は飛ばされていった。
その隙に兵士達はフカボシと合流するために城の外へ出て行くことが出来た。けど技をかける前に心配していた通り、国王はぎっくり腰で動けなくなってしまった。
そこへ最初に国王と一緒にいたクジラが駆けつけた。おかげでその子に連れ出してもらえそうだとクジラに引かれる国王に掴まりながら思った。
だけどいきなり強い力に阻まれて動かなくなる。原因は深手を負っていたはずのホーディで、国王の尾びれを強く掴んでいるせいで前へ進むことが出来ない。
苦しそうにしているゾロにコーティングを分けようと動くとあたし達を捕らえようとした魚人の槍が腕に刺さり痛みが走る。水の中じゃ風を起こすことが出来ないこんなところで蹴りつけても効果がない。抵抗も虚しく手を後ろで拘束されて何も出来なくなった。
口は塞がれなかったから最初はぶつぶつ言っていたウソップもいつの間にか黙ってしまった。
「お前らはここに入って大人しくしてろ」
「……これ4人で入るには狭いよ。もっと広いの用意して」
「うるせー贅沢言うな!」
「そうだぞリリナ!そもそも牢へ入ることに抵抗しろ!」
「この白骨死体どうする?」
「島の外へ捨てちまおう。どこの誰だか知らねェがどうせ人間だろ」
無理矢理あたし達を牢へ押し込めた魚人は未だに気を失ってるブルックの処分について話している。ブルックもまもとめて牢に押し込まれると思っていたから首を傾げたけど、これはラッキーだと心の中でガッツポーズをした。
だけど、タイミング悪くブルックが目を覚ましてむくっと起き上がった。望みはすぐに砕かれてしまった。
「うわー!動いたー!」
「そうです私っ!死んで骨だけブルックです!ヨホホ」
まさかの事態に白目を向いて盛大に驚いてる魚人に丁寧に自己紹介をした呑気なブルックは状況を把握することなく、正気を取り戻した魚人によってあたし達の牢へ押し込まれた。
「ところで何であたし達牢に入れられちゃうの?」
「お前らは地上の人間達への見せしめだ。人間と仲良くなんて生温いこと考えてやがるこの国の奴らを始末して、新しくホーディのお頭によって魚人を苦しめる人間への復讐が始まる!」
「………」
「ネプチューン王の次はお前らだ。すぐにこの部屋に海水を流し込んでやるから、お前らは溺れて死ぬんだ」
あたし達を無理矢理牢へ押し込めた魚人達は楽しげに笑いながら部屋から出て行った。
そしてしばらくすると水の流れる音が聞こえ始めて部屋の中に入ってきた。溺れてしまう現実が迫り始めてウソップとブルックが騒ぎ始めた。
「ちっきしょー水嵩がどんどん増えてく!なんとかしなさいよゾロくんー!」
「わかった……じゃ、この錠外せ」
「錠よー外れろ!……ダメだ。おれ念力なかった」
「錠よ外れろーっ!……あたしも無かったー!」
ウソップの真似をして錠を外そうとしたけどやっぱり外れなかった。笑い飛ばしていると、何故かウソップに足を蹴られた。少し痛い。
「ねーねーしかし見ました!?私が動いたときの魚人達の顔っ!」
「お前があのまま死体のフリしてりゃおれ達逃がせたんじゃねェのかよ……!」
「助けてコロサレルー!……あ!私もう死んでました!ヨホホホ!」
先ほどの魚人の驚いた顔を思い出したブルックが思わず吹き出すとゾロとウソップの影がさした顔で睨まれて泣き顔に変わった。一瞬にして平気な顔に戻ったマイペースなブルックにため息をつく二人は責めるのをやめた。
「まァ、ナミ達は逃げたんだろ?ルフィその他を呼んできてくれりゃいい」
「来なかったらどうすんだよー!……ロビンの真似!ナミ、深海魚に食い殺されてないかしら」
「ヨホホー!そっくり!」
「もう!緊張感持ってよ!」
「おめえが言うな」
「あっ、そういえばアラバスタでもこんな感じだったね!あのときはサンジくんが助けに来てくれたから、また来てくれないかなー」
「……そういやそうだったな」
「あいつが来るわけねェ。道端でのたれ死んでるに決まってる」
「サンジさんが救世主ですか!かっこいいですねー」
話しながらその時のことを思い出して懐かしさを感じながらもにやけてしまう。きっと助けに来てくれる。人魚達にメロメロになっていなければ。人魚に囲まれるサンジくんを想像して期待は薄れていった。