地を踏んだら2年前の悔しさと情けなさがじんわり蘇ってくたシャボンディ。しかしおれはこの苦痛でしかなかった2年を乗り越えて戻ってきた。またここから冒険が始まるんだ。
2年ぶりの女の匂いは格別だった。おれを骨抜きにするには充分で、今までのストレスを一気に吹き飛ばし、脳裏にこびり付いた記憶を幻へ変えてくれた。
食料調達を済ませたおれは奇跡的に一番乗りしたマリモを拾うと近くで起きていた騒動の渦中にいた、到着したばかりのルフィと合流した。
「……やっと、だ」
騒ぎの群衆の中から発生した竜巻におれの胸は高鳴った。止んだ風の中から現れた変わらない華奢な姿に瞬きすら忘れ、自然とこぼれた言葉にどれほどこの時を待っていたのかと我ながら思い知らされる。ずっと会うのを待ち焦がれていたリリナちゃんをようやく見つけた。
この2年で彼女の身に降りかかったものがあまりに大きすぎて、きっとあの小さな体には受け止めきれなかっただろうと思う。
マリンフォードで起きた海軍と白ひげ海賊団との頂上戦争から始まり、その衝撃が落ち着いたと思ったら黒ひげ海賊団と衝突した落とし前戦争。心配で落ち着かなくて、危機に駆けつけられないもどかしさと不甲斐なさに、何度押しつぶされそうになったことか。あの子の泣く姿を目に浮かべて何度も海に飛び込んではオカマ達に止められた。
偉大すぎる父親と、好きだと思ってしまうほどに慕っていた男を目の前で亡くした。2人のことを話していたときの誇らしげな表情を思い出すと今も胸が締め付けられる。挙げ句の果てに敵討ちとして挑んだ戦争にも敗れてしまった。更にその戦争を最後に白ひげ海賊団の残党達は消息を絶って、無事に行きているのかすら分からないままだった。
リリナちゃんがおれの気持ちを教えてくれたとき、確かにそれが恋だと思った。だが恋の仕方は人によって違うし、おれ自身もリリナちゃんとの恋は今まで思ってたものと違っていた。だからリリナちゃんは本当はエースのことを男として好きでいたのかもしれない。そう考えるとおれの思考は情けないほど良い方向へ進まなくなる。
麦わらの一味の空白の間に彼女に降りかかった大きすぎる困難が、嘘のようにリリナちゃんは力強く地に足をつけて立っている。
おれ達を見つけると嬉しそうに走ってきて、大胆にもおれに抱きついてきた。あまりの衝撃におれの思考回路はストップして、勢いのまま後ろへ倒れこんだ。
「ごめんね!会えてとっても嬉しくて、そしたらつい……!」
はっきり聞こえるリリナちゃんの声に応えるために言うことを聞かない身体を無理矢理奮い立たせると、ようやく彼女と目を合わせることが出来た。会えたことが嬉しくてつい抱きしめてしまったと言う。……つい、だと。
リリナちゃんは変わらず可愛い人だった。おれに乗ったままで見せる照れた表情も、心配して覗き込んできた大きな瞳も、その声も、少し大人に成長したリリナちゃんに魅了されるには十分だった。彼女だけの特別なものを感じられた。何より同じ思いでいたことが嬉しい。
そして実感する。おれはやっぱりリリナちゃんが好きだ。