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それぞれに力をつけた麦わらの一味は、魚人海賊団を圧倒していた。ルフィも例外になく、兄弟を脅しに使われたクラーケンのことを聞いて魚人海賊団の船長であるホーディに自分から向かっていった。

覇王色のコントロールだけじゃなく、見聞色も武装色も身につけたルフィはホーディの魚人空手を難なく躱して反撃をしていく。一撃ごとに傷を負っていくのはホーディばかりで、ルフィはまだまだ涼しい顔をしている。


そんなとき、いきなり広場に影が差したように暗くなった。何事かと空を見上げると、空にいっぱいの舟が迫っていた。

「あれは……魚人街のノア!」
「島のシャボンを突き破ろうとしてるぞ!」

広場は一斉にに慌ただしくなり、周りにいた島の住人達は走って避難していく。
どうしていきなりあんな大きな舟が飛んできたのかと迫るノアを見上げていると、もう一つ叫びながら広場へ落ちてくる影を見つけた。

「ホゲーーっ!」
「お前はデッケンの部下ワダツミ!」

頭から落下した大きな体の一番上にたんこぶを作ったワダツミは、痛みに悶えながら空を見上げて手を振った。

「バンらーれっケン船長ー!おれが落っこっちまったらー!舟を止めてくれー!」

ホーディの部下達は予想外の事態に自分達の船長に疑問を投げかけたけど、どうやらホーディもこの作戦について聞いていないようで、瓦礫の中から這い出て空を見上げた。

『バホホホホ!ワダツミー!お前を助けることはもう不ギャ能!この能力で飛ばしたものは何かに激突するか、標的を仕留めるまで止まらねェ!この魚人島と共に、しらほしの死に供えられる生け贄となれェ!』

自分の命を顧みることなく投げられた言葉に、ワダツミはどうしようかと慌て始め目には涙がたまっている。

そんな間にもノアは広場へ近づいていて、魚人島を覆っているシャボンを圧迫し続けている。
しらほしが狙われていると分かり、身を案じた住人がクラーケンに守られながら側にいたはずのしらほしの姿がないことに気付いた。

「わたくしならこちらです!」

どこに行ったと探し始めた直後しらほしの声が上から聞こえてきて、空にはいつの間にか高いところへ昇っていた。あの大きな体が小さく見えるくらい高いところで両手を広げている。

「あなた様のマトはわたしくの命ではございませんか!わたくし一人の命を奪う為だけに、リュウグウ王国の皆様まで巻き添えになさるのは、おや!おやめ下さいませ!わたくしならこちらに!」
「一人であんなところ行くなんて勇敢な姫だね」
「しらほし姫は怖がりな方なんじゃ!それなのに一手に担うとは!」
「ええー!」

初めて見た人魚姫のしらほしは命を賭ける覚悟のある勇敢な人魚なんだと思ったけど、近くにいたジンベエがしらほしの性格やバンダーデッケンによって命を狙われていることを教えてくれた。

「よわほしのやつ!遠くへ行くなっつったのに!」

バンダーデッケンが狙って投げたナイフがしらほしの肩に突き刺さり傷を作る。

そして、広場にいたホーディもしらほしを狙うようにその場から離れて舟から垂れている鎖を辿っていた。
それを見つけたルフィはスカイウォークで助けに行こうとしていたサンジくんを呼び止めた。

「ルフィ!ホーディに気をつけい!海中では魚人と人間の能力は段違いじゃ!」
「おう!」
「……"空軍アルメ・ド・レールゴムシュート"!」

サンジくんの足に掴まったルフィは伸びた自分の腕の反動を使って、ホーディのいる位置より更に上へ辿り着いたみたいだ。

ルフィが広場を離れてから、大きく見えていた舟はみるみるうちに小さくなり見えなくなっていった。


残ったあたし達のいる広場は、大きなワダツミの泣き声が響き渡った。そんなワダツミをしらほしを狙っている仲間と認識したらしいクラーケンが、何本もある足をボクシングみたいに前へ繰り出し牽制し始めた。
泣いているワダツミにホーディの部下達がこの広場を任せた、と嘘をついて奮い立たせ、麦わらの一味を叩き潰せとけしかけ何かを飲ませた。

それを受け取り飲み込んだワダツミはすぐに泣き止んで、豹変したようにクラーケンを一発で気絶させてしまった。

「あっクラーケンが!」
「ジンベエちゃん危ない!」
「"七千枚瓦 回し蹴り"!」

力を得たワダツミはジンベエに標的を変えたが、今度は魚人空手の一撃で返り討ちに遭い、後ろへ転倒した。その風圧でバランスを崩して転んだナミに、サンジくんがいち早く反応して怒りに任せてワダツミの頭を蹴りつけた。

「ウチの美人航海士に掠り傷でもついたら、お前どう落とし前つけるつもりだァ!」
「相手になろう、大入道!」
「命をもってわびろ!ジャンボ饅頭!」

各々、迎え討つ敵が自動的に決まっていく中、あたしはそこらにいる魚人より体格の大きい男に目をつけられていた。

「おれの相手をしろ!女が相手とは不服だが、お前の顔には覚えがある」
「じゃあお願いしようかな。あたしもそれなりに頑張るから」

刀を握り直し斬りかかってくる男の刃を躱し、顔面に一発蹴りを与えた。見聞色は使っていないし、それほどのレベルじゃない。

「おれは、幹部達の次に腕のある男だ!名のあるお前を倒したとなれば、おれも晴れて幹部の仲間入りになるだろう。……だから、お前はここでおれの踏み台となれ!」
「やだね!」

相手の目論見が昇進のためなら、あたしは意地でも阻止しようと決めた。魚人と人間としての戦いなんかじゃなく、ただの決闘だ。