ルフィ、ゾロ、サンジくんが財宝を取り返しに出かけてる間に、宴はお開きになって残りの一味のメンバーが集合した。財宝が手に入ったら大金持ちだと浮かれて、それぞれ何に使おうかと考えていた。
しばらくして手ぶらで帰ってきた3人にすかさず何があったのかとナミが問い詰める。本島へ飛ばされて無事に財宝を見つけたが、宴でルフィが食べたお菓子はビッグ・マムへ送るはずだったものらしく、怒ったビッグ・マムが魚人島を潰すと言ったところに更に喧嘩を売ったとルフィは言い捨てた。そしてとりあえず気休めになるかと財宝は置いてきたらしい。
「参ったのう。これは話がこじれる前にビッグ・マムの下を去らねば……。お前達、とにかくビッグ・マムをこれ以上逆撫でするようなことは絶対にやめろ」
「するかよ!四皇なんて出くわしたら即全滅だ!」
さっきまで笑顔で買いたいものがあるとあーだこーだと話をしていた雰囲気は一切消え去り、みんな青い顔して冷や汗をダラダラと流している。
「売り言葉に買い言葉。男だもんケンカするのは仕方ないけどね……」
「そうなんだ!相手が誰だろうと」
「何で全部渡したのよォー!」
ナミの笑顔に油断したルフィはさっきまでのイライラを忘れて笑顔を見せた途端、今度はナミが鬼の形相に変わり3人まとめてたんこぶだらけになった。
「よひ、行くぞ……新世界へっ」
「前途真っ暗だよ!」
めげることなく立ち上がり、言葉と裏腹に弱々しく震える拳を掲げたルフィはとても頼りなく見える。
「大丈夫だよ。そんなすぐに襲われたりしないって!」
「四皇だぞ!万全整えたって勝てやしてねェ!」
「そんな怖くないよ〜」
「はっ!お前は白ひげの船にいたから感覚狂ってるだけだ!」
「お前もルフィ側の人間だ!」
ウソップとチョッパーには信じられないと疑いの目を向けられた。どんなに励ましの言葉をかけても全部振り払われてしまうので、諦めて放っておくことにした。
怪我だらけのルフィはそれでも新世界への期待が膨らんだようで、チョッパーから手当てを受けた後、船を出そうと決めた。そうなった途端にしらほしは涙を流してルフィを離さなくなった。けど、見送りにと国王達を引き連れてサニー号を停めている港へ移動した。
「リリナ。」
「あ、国王。ご飯ご馳走様でした」
「いやいや。まさか白ひげの娘にまで救われることになるとは……やはりあいつとは何か縁があるのかもしれん。気をつけるんじゃもん」
「ありがとう」
「この先上の世界へ行けるようになったのなら、ワシも必ずあいつの墓へ行こう」
「あたしもそうなるの待ってる!」
オヤジのお墓の前にいる国王なんて少し変な感じするけど、それが国王の願いなら叶うように願ってるよ。髭の上の目がにっこり笑った。
「よーしお前ら!出航準備整ったぞ、浮上操作も習ったァ!行くか!?」
「いこうー!」
フランキーとルフィの大きな声に誘われて一番高い船べりから、みんなのいる甲板へ移動した。
「ニュ〜。工場の修理手伝うんだ。案内なしで大丈夫か?」
「いいよ!来るときの冒険も面白かった」
「そーだそーだ!いらねェや案内なんざ!男の旅はいつでも地獄行きだァ!」
「そーだァ!戦争だァこちとらァ!」
「やけね……」
見送りに来てくれたハチとケイミー達に手を振ると、怖さと不安のゲージがマックスに達したのかウソップとチョッパーが開き直っていた。
「みんなー!また来てねー!」
「必ず来るぜェ!おれの心のオールブルーー!」
「安い夢だな」
「あァ〜!?」
ハチ達の隣にいたたくさんの人魚達の明るい声にサンジくんはハートを飛ばして応える。どんなに夢中になっていてもゾロの悪態は聞こえていたみたいだ。
「ジンベエまたねー!」
「ジンベエ!」
最後にルフィが少し離れたところにいるジンベエに視線を投げると、それに応えるようにジンベエは何も言わずに一度頷いてみせた。余計な言葉をかけなくても意味は通じていた。
「よし!帆を張れェーー!出航するぞォー!」
「またな魚人島ー!」
船を出して陸地から離れると、島の人達からお礼とまた来いとたくさんの声を投げられる。精一杯手を振っていると、大きな水飛沫と同時に船体が横へ傾いてよろける。現れたのは泣くのを我慢するように目に涙を溜めたしらほしだった。
「ルフィ様!いつかまたお会い……お会いできましたなら……!……そのときは、もう泣き虫卒業しておきますから……!また楽しいお散歩に連れ出して下さいませ!」
しらほしは船体を包んでいるコーティングを突き破るような勢いで顔を覗かせた。やっぱり目には涙を溜めていて、あの子に泣くなと言う方が難しそうだ。
「散歩?また母ちゃんの墓に行きてェのか?」
「今度はもっと遠くへ……!海の上の本物の、森という場所へ!」
「そうかー。お前海を出たことねェんだもんなー!よしいいぞ!今度会ったら連れてってやるよ!」
「お約束を!」
「おお任せとけ!約束だ!」
会話の流れのまま軽く二つ返事で了承して差し出された小指に、自分の小指をぐるぐると巻いて強く約束を交わそうとした。
「ルフィ、それ私達にも責任ない?」
「ルフィさん!約束とは死んでも守るものですよ?」
ルフィは船長ではあるけど航海するには自分達がいなければいけない。ルフィ1人で約束を果たすのは不可能に近い。いち早く判断をしたナミがしらほしの小指に自分の指の先をつけた。
それを始まりとして他のメンバーも指の先をくっつけ、しらほしに微笑んだ。
「これだけ結んでおけば大丈夫ですかねェ」
「じゃ、お前も泣くな!」
「……はいっ!」
ありったけの笑顔を見せて船から少し距離を置いたしらほしに、もう一度別れの挨拶をして手を振った。最後に目が合ったしらほしに大きく手を振って、あの子が泣くことが少なくなりますようにと願った。
リュウグウ王国の外に出ると、深くて暗い終わりのない海が広がっていた。空島から帰るときもこんな風だったな、と物思いにふけっていると、右肩に小さな衝撃とふんわり香水の匂いがした。そっちに視線を移すと、サンジくんがあたしの方を見て首を傾げた。
「何考えてた?」
「空島から帰るときもこんな感じだったなって思って」
「ああ、なるほどな」
サンジくんがそう呟いて海を見上げたのにつられて上を向いた。でもあの頃とは色々と変わったな、と印象的な場面を思い出すと上を見ていられなくなって顔を下げた。
「……オヤジの辿った道をあたしも通れたことが嬉しかった。親孝行できた気分だよ」
隣を見ると穏やかに笑っているサンジくんに温かくなるのを感じた。誰かと一緒にいるっていいな。
側にいてくれるサンジくんに感謝して笑顔を向けると、何かに耐えるように口を押さえた。サンジくんのことは知らないこともたくさんあるけど焦ることない。少しずつ知っていければいい。
「この海底を抜けたら、世界最強の海だ!」
「やっとだな。全部斬ってやる」
「待ってて下さいラブーン、あと半周!」
「いいわよ。どこへでも連れてったげる!」
「そうさ!サニー号なら行ける!」
「好きなだけケガしろみんな!」
「食うことにはおれが困らせねェ!」
「海の戦士も乗ってるしなァ!」
「どんな奴にも負けないよ!」
「フフ……」
ここまでの道のりは長かったけれど、やっと本番なんだ。この一味とならどんなことも乗り越えていける。
「行くぞ野郎共ォー!新世界へーー!!」
揃って高く拳を突き上げたのはこれで何回目になっただろう。正式的にこの一味の一員になれたばかりなのに、思い出はたくさんある。この先も増えていく。みんなの夢の果てを見届けるために、これからこの一味に力を尽くしていくよ。