「なんだかお腹すいた!」
「お前魚人島でたらふく食べてたじゃねェかよ」
「……そっか。じゃあ、つまらないから何か楽しいことがしたい!」
退屈しのぎに甲板のブランコを漕いでいると、ウソップとルフィがなにやら道具を引っ張り出してきて楽しそうなことを始めた。
「あら楽しそうね」
「行きはよ、魚人島が楽しみで思いつかなかったけど、今回は深海魚釣って海上に出ればサンジに料理してもらえるだろ?」
「コーラに合う味だといいがなァ」
近くで泳ぐ深海魚はどれも大きいからルフィがたくさん食べてもお腹いっぱいになりそうだ。
「いい案だ。新世界突入記念に一杯やるのが楽しみだな。……アレをカラッと揚げて塩でいくか」
「アイツにマヨネーズかけたらウマそうだぞ!」
「アレを蒲焼きにすんのがいいな」
それぞれ目当ての魚を見つけては出来上がったときの味を想像してヨダレを垂らしている。あたしもアレをトマトと一緒に煮たら、と想像してごくりと生唾を飲んだ。
「まーサンジなら何でも美味くしてくれるだろ!WゴムゴムのJET
「やっぱそれマヨネーズで食いてェんじゃねェか!」
ルフィが狙った深海魚はさっき自分で指をさして目をつけていたものだった。自分が目をつけていた魚じゃなかったけれど、確かにマヨネーズで食べたら美味しそうだと納得した。
サニー号と同じくらいの大きさがありそうな魚にウソップが慌ててるけど、ルフィに急かされるまま用意した鉤縄を引っ掛けて手繰り寄せた。
「うわー釣れた!」
「……しかしコレホントに魚か?おっさんなんじゃねェか?」
「おっさん!?」
「あんなピチピチしたおっさんはいないよ」
「フフフ」
気絶して動かなくなった魚を引き寄せていると、別の魚が釣ったばかりの魚に食いついた。今度はサニー号よりも大きい体をしているため引っ張ることは出来ない。揺れる船体に耐えていると、更に大きい蛇のような魚が食いついてしまった。
「ギャーー!コラコラまたかよ!」
「ムリだムリだ!船がひっくり返る!」
「次から次へと何リョーシカだよ!」
「……W一刀流 三百六十煩悩鳳W!!」
ゾロの一撃で気を失ったおかげで引きずりこまれなくて済んだ。一安心している間にどこかへ行っていたサンジくんがやってきて嬉しそうに魚を観察し始める。
「成程、嬉しいね。深海魚料理か、腕が鳴るぜ!」
「それがよ、もっと喜べ!あの中にもう2匹深海魚入ってんだ!」
1回で3匹も魚が釣れるなんてこれなら食糧に困らずに済むね、と和やかに会話を楽しんでいるとルフィが船の前方に何かを見つけた。
「お!アレ何だ?ヘビ!?」
「デカ海ヘビ!?」
「よし近づけ!」
「頭も尻尾も見えないくらい大きいね!」
「あれも食うぞ!」
「待って、あれはまさか……
傍観していたロビンが慌て始めた頃には既に目の前にまで迫っていた。ウソップの叫び声を聞きつけてお風呂からナミが出てきた。
「この渦に捕まった船は後日、信じられない程遠い海で船だけ発見されるそうよ」
「船乗り全員死んでるなそれ!おい逃げよう!」
「船が信じられねェ程遠い海へ!?じゃあアレは夢のワープゾーン!?」
「違うわアホ!」
ナミは渦から離れるように指示を出した途端、船の近くで白目を向いている魚を見つけた。そうしているうちにも魚が渦に引き寄せられていて、今にも巻き込まれそうになっている。
「やべ!取り返すぞ!」
「違う!切り離すのよ!」
「え〜〜!!」
「魚と命とどっちが大事なのよ!目を離したたった10分でよくもここまでトラブルを呼び込めたわね!」
ひとまず距離を取ろうとフランキーに
「うは!やっべー!船体にしがみつけーー!」
咄嗟に近くの手すりにしがみついて、強い力で回る遠心力に耐えた。けれどすぐにサニー号は何かにぶつかったようで、大きな音と一緒に動きが止まった。
「止まった!?」
「何かにぶつかっ……」
「え!?」
「ラブーン!?」
奇跡的に船を助けてくれたのは大きなくじらで、たくさんの仲間を引き連れて群れで泳いでいた。
「ラブーン!お前こんなに大きく……!」
「バカいえ!ラブーンがいるのはグランドライン前半だろ!あの巨体じゃ
その姿を見て心当たりがあるのかブルックは大粒の涙を流して、今にも飛び出していきそうな勢いで船べりにしがみついた。
「奇跡的。アイランドクジラの群れに出会うなんて……!」
「ラブーンと同じように頭をケガしてるなが何頭かいるぞ」
「傷までそっくりだ……!びっくりしたラブーンじゃねェのか!」
前にブルックが会いに行くと約束をしているクジラととても良く似ているみたいで、ラブーンを知っている人はみんな不思議そうに群れを眺めている。
「ビンクス〜の酒を〜〜届け〜にゆっくよ〜〜!ラブーン!止まって!聴いてください!ブルックです!」
「正気に戻れ!クジラ違いだっつってんだろ!」
「ラブゥーーン!!」
何十年もの間、再会を待ちわびているというクジラのラブーンによく似た群れを目の前に、冷静でいられないブルックを止めるのに必死になっているウソップが1人で大変そうだ。
「落ち着いて鑑賞してる場合か!渦を抜けてもここも充分危険だ!まずさっきの渦で誰も飛ばされてねェか!?人数確認!ナミさん!」
「はい」
「ロビンちゃん!」
「いるわよ」
「リリナちゃん!」
「はーい」
「おーけー!すぐにここを離れるぞ!こんなデケェクジラに衝突されたら船は大破だ!」
「サンジくん、その他6名も恥ずかしながら生きております!」
「おれ達も数えてくれー!」
和やかなムードを破ろうと1人で気を張っているサンジくんはあたしとナミとロビンの点呼をとった。他にもたくさんいるのに完全にサンジくんの眼中にない事実に涙を流してウソップとチョッパーが存在を訴えかけるものの、それも反応されずに終わってしまい2人でうずくまってしまった。
「ナミさん指示を!」
「このままでいいわ!」
「そう!このままでいいんだバカヤロー!すぐにクジラ観賞だ!」
「何なんだよお前!」
「これだけ大きなクジラの群れはすでに海流を生んでる!流れに逆らっては危険が増すわ!しっかり帆を張って船体をクジラ達と同じ方向へ!」
ナミからの指示を受けてゾロとフランキーが作業に取り掛かる。
「50年前、群れから逸れた小クジラをお探しの方。ご安心してくださいね!彼は反対側の海で、元気です!今や大きく育っているそうです!どうかご安心ください!」
聞いているかも分からないけれど、すぐ近くにいるクジラ達にラブーンの無事を報告したブルックは、涙を流すのをやめてバイオリンを取り出した。ブルックが仲間になったときに聞いた、ビンクスの酒をバイオリンの音色にのせて海の中で響かせた。
歌を聞くことに夢中になっていると船体が揺れて、サニー号はクジラの体の上に乗っていた。目を細めて鳴くクジラはどうやらのせてくれるらしい。好意に甘えていると、すぐに薄く光る海面が見えてきた。
「出たァーー!新世界ーー!!」
「天候最悪ー!」
「ヨホホ!空は雷雨!」
「風は強風!」
「海は大荒れ!」
「指針的外れ!」
「赤い海が見える!」
「逆巻く火の海!」
「まるで地獄の入口」
「歓迎されてないみたい!」
「望むところだァーー!!」
クジラと一緒に勢いよく海の外へ出たサニー号は高く飛びあがった。激しく降る雨と強い風、海は高く波がたっていて遠くの方には炎が燃え盛っている。
新世界に突入出来たことに喜んでる暇はなく、すぐさま対応しようとナミの大きい声が聞こえてきた。忙しいけれど、これからが楽しみに感じて自然と笑顔になる。