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「WシャンブルズW」

ルフィに頼りにされる言葉を投げかけられてから、みんなで照れまくっていたところをトラファルガー・ローに水をさされた。そしてついに自分の体が戻ってきた。サンジくんの体も面白かったけど、やっぱり自分が一番だと思っていたら隣で静かに涙を流すサンジくんがいた。

「⋯⋯どうしたの?サンジくん」
「違うわよナミ!」
「サンジくんの体も快適だから、そんなに悲しまなくても平気だよ」
「それはアンタだけよ。そんなこと言うなら変わってほしいくらいよ」
「あたしはいいけど」

サンジくんよりアンタの体の方がマシだと言うナミと一緒に側にいたトラファルガー・ローに向かって睨みをきかせると、それに気付いた本人が面倒くさそうな顔をしてきた。

「⋯⋯なんだ」
「私とリリナを変えてよ」
「⋯⋯。今後の作戦でそいつの力が必要になるときがある。お前がそれを操れるならそうしてやってもいいが」
「そんなの無理に決まってるでしょ!」
「なら我慢しろ」

声を大きくして悲しむナミをウソップが宥めたけれど、サンジくんの体になったナミを見てルフィとチョッパーと笑っていたせいで一つたんこぶを作られていた。


そんなナミをおいてトラファルガー・ローは同じ空間で鎖で拘束されたまま眠っている子ども達に目を向けた。マスター側についていたのか、トラファルガー・ローは世界政府が力を得るために巨大な兵士を増産しようと企んでいて、その研究を受け持っているのがシーザーという奴らしい。

「本気で助けてェのか?どこの誰だかも分からねェガキ共だぞ」
「ええ。見ず知らずの子ども達だけどこの子達に泣いて助けてと頼まれたの。マスターは上手く騙してここへ連れて来たようだけど、本人達だってもうとっくにあの施設がおかしいと気付いてる。この子達の安全が確認出来るまでは私は絶対にこの島を出ない!」
「?⋯⋯じゃあお前一人残るつもりか?」
「仲間置いてきゃしねェよ。ナミやチョッパーがそうしてェんだからおれもそうする」
「!?」
「あとサンジがサムライをくっつけたがってた。お前おれ達と同盟組むなら協力しろよ!?」
「!?」

強引に話が思わぬ方向へ転がっていき、トラファルガー・ローの表情が驚きに変わった。それから動かず口も開かなくなったのを見兼ねたウソップが二人の間に入って説明をした。

「あァ。お前言っとくが、ルフィの思う同盟ってたぶん少しズレてるぞ」
「友達みてェのだろ?」
「主導権を握ろうと考えてんならそれも甘い」
「そうなんだってよ」
「思い込んだ上に曲らねェコイツのタチの悪さはこんなもんじゃねェ!自分勝手さでは既に四皇クラスと言える」
「大変だそりゃー」
「だがお前の仲間の要求は同盟に全く関係が⋯⋯」

ウソップの話の最中も自分のことなのに悪びれる素振りを見せないで鼻をほじる。出てきたハナクソは指から弾き飛ばされて近くで寝そべっていたチョッパーのほっぺにくっついた。すぐにそれに気付いたチョッパーが凄い剣幕でルフィに怒って、笑いながら謝るルフィを見て、トラファルガー・ローはまた言葉をなくした。

「ああ、いやわかった。時間もねェ。じゃあ侍の方はお前らでなんとかしろ。ガキ共に投与された薬のことは調べておく。船医はどいつだ。一緒について来い、シーザーの目を盗む必要がある」

トラファルガー・ローがチョッパーと一緒にここを離れるようだと察したウソップは、小さな声でチョッパーと相談して動けない体を安定感のありそうなトラファルガー・ローの頭に括り付けた。ちょっと歪んでるけれどあいつの丸い形の帽子と、チョッパーの帽子がマッチしてる。普段のあいつとチョッパーの可愛らしさからすれば、みんなが笑うのも無理はないな。

「わりぃな。おれ今動けねェから、よろしく頼む!」

なかなかみんなの笑いが治らなかったせいで、あいつがあたし達にあの隈のある目で睨んできた。ウソップやフランキーがわりぃわりぃ、と謝っていたけれど笑いすぎて目に涙が浮かんでいるし、ナミはまだ隠れて笑ってる。


「さっきの2人組の刺客で分かる通り、シーザー屋はお前達と白猟屋のG−5を消し去り、ガキ共を奪い返すつもりだ。それが達成されるまで奴の攻撃は止まない。シーザーは4年前の大事件で犯罪者に成り下がった元政府の科学者。立ち入り禁止のこの島に誰かがいるという事実が漏れれば、あいつはこの絶好の隠れ家を失うことになる。だからお前らを全力で殺しに来る」

脅しのようなトラファルガー・ローの言葉にウソップの方から歯を噛み締める音が聞こえた。

「懸賞金3億ベリー。殺戮兵器を所持するガスガスの実、自然ロギア系の能力者。覇気を纏えないものは決して近付くな。ただの科学者じゃない」

今まで科学者と戦った経験がないからどうなるか分からないのに、不思議と落ち着いていられる。心臓の音も煩くない。

「こっちで覇気使えんのはおれとリリナとゾロとサンジ⋯⋯あとお前だろ」
「まァ充分だ。おれは一足先に研究所へ戻る」
「で、そのマスターをおれ達とお前で誘拐すりゃいいんだな?」
「そういうことだ」
「誘拐して誰から身代金取るの?」
「目的は金じゃない、混乱だ」

海賊といえばまずお金なイメージからか、ナミの場合は個人的に大前提がお金だからか、次はどんなやつの名前が出てくるのかと確認を取るためにトラファルガー・ローに聞いていた。けれどあいつの目的は物ではなく、混乱だと言った。意外な答えにみんな目を丸くしたし、そんなの起こしてなんの得があるんだろうか?

「成功してもいねェのにその先の話をする意味はない。とにかくシーザー・クラウンの捕獲に集中しろ、決して簡単じゃない」

どうやら次のステップに進めることになったら話すつもりらしい。またあいつの話を聞かなきゃいけないのは面倒くさい。話をするのが嫌いなわけじゃない。トラファルガー・ローの話を聞くのが嫌いなだけ。どうせあたしに嫌なこと言ってくるだけだから。

「おれの計画はその時にゆっくり全員に話す。ただし、シーザーの誘拐に成功した時点で事態はおのずと大きく動き出す。そうなるともう引き返せねェ。⋯⋯考え直せるのは今だけだが?」「大丈夫だ、お前らと組むよ!」
「ならおれもお前達の希望をのむとする。残りの仲間もしっかり説得しとけ」
「ああ、わかった!」

同盟ってこんな簡単に組んでいいものだっけ?なんてトラファルガー・ローを疑う気も見せずに返事をしたルフィに今後について不安になった。
あいつが嫌いだから仲良くなんて出来ないのに同盟なんて。いやでもしっかりしたロビンがいるし、本能で生きてるゾロも意外とこういう直感は当たるから、きっとあたし一人だけ反対派ってことにはならないかな。