「だな。この吹雪の中じゃ足を取られて簡単にゃ進めねェぜ」
「それに道も直線じゃないものね。早くしないと全員凍え死んで雪に埋もれるわ」
「⋯⋯早ェうちに出発だ!」
子ども達を見守るために残ったナミとウソップと別れて、さっそく
「面倒くせェからよ、ビューンと行こうぜ!」
「んな大砲みたいな兵器は用意してねェぞ」
「ニシシ!Wゴムゴムの風船W!!どうだ!これでミサイルみたいだろ!」
「楽しそう!」
「やめろくすぐってェ!」
湧き出た好奇心に逆らうことなく膨らんだ体を突くと、ルフィに笑いながら抗議された。フランキーの手を借りて安定する位置まで登ると、腕をめいっぱい伸ばして反動をつけてから雪の降る真っ白い空に向かって飛んだ。
山をいくつか越えた先に見えた建物の側にゴマのように小さい人がたくさんいる。争いが起きているようで、銃声や煙が立ち込めている。
「このまま突っ込むぞ!」
「早く言えよ!」
大きな海軍の船に衝突する直前にぽろっとルフィが零した一言に焦ったフランキーを残して、ロビンの手を引いてルフィから飛び降りた。
「WウィングW」
「どーーーん!」
すぐに地面に着地して上を向くと、ロビンはすぐにハナハナの実の能力で翼を広げて落下のスピードが緩まって無事に降りてきた。
「マスター出て来ーーい!お前をブッ飛ばして誘拐してやるぞォーー!」
「ルフィそれは内密にね」
「がははは!いい近道だった」
瓦礫を蹴散らして出てきたルフィも巻き添えだったフランキーも笑顔で登場した。
「麦わらの一味だ!」
「討ち取れェーー!」
「Wストロング
あたし達の登場で戦況が変わって一番近くにいた奴らが刃物を振りかざしながら向かってきた。けれどフランキーの一撃によって吹き飛ばされる。あたしが知ってる奴じゃなければ強くもなんともないしすぐに吹き飛ばせる。
「麦わらのルフィ!この島で何を企んでるんですか!?」
「おっケムリン!無事だったかー!さっきやられてたみたいで心配したよー!」
「バカにしてっ!」
なんだか様子のおかしいスモーカーは腕を煙に変えて刀を向けてきたけど、避ける必要もなくルフィの横を通り過ぎる。煙に変わった腕を掴んで捻ると簡単に地面に押し付けられたスモーカーを見て首を傾げる。やっぱりおかしい。
「オイオイ勘弁してくれ。オレの姿でそいつに、敗けんじゃねェよ!」
ルフィの背後から殺気をまとって十手が襲いかかる。間一髪で躱して距離をとったルフィは、一目見れば分かるほどいつもと違う雰囲気のたしぎに驚く。
「戻ってきたな麦わら、海へ!だが自由にゃさせねェぞ!」
間髪入れずに攻め立てられ、直接手で受けてしまったルフィは十手の先に仕込まれている海楼石の力でフラフラと座り込んでしまった。
「メガネの奴こんなに強くなったのか!?名前はえーと⋯⋯」
「スモーカーだよ!」
「えエェ!?」
「ルフィ、きっとローの仕業よ」
たしぎが自分のことをスモーカーだと名乗ってきて驚きと一緒に混乱しそうになったルフィは、ロビンに助け舟を出してもらっていた。トラファルガー・ローのせいでスモーカーと、たしぎが入れ替わっていると理解した途端、お腹を抱えて笑い転げたルフィにたしぎの体のスモーカーが頬を赤くしていた。
道理で眉間に皺寄せて煙草咥えてたわけだ。意外な一面が見られたな、と思わず頬が緩んだけど、バレないように手で顔を隠した。
「じゃあ戦いはまた今度だ!本気出せねェお前となんて戦ってもしょうがねェ!」
「生意気言うな!」
ルフィとスモーカーの間にひと段落着いたとき、何かが破壊されるような大きな音が聞こえてきた。何があったのかと音の正体を探すと今度はフランキーの豪快な笑い声が聞こえてきて、その先に大きな穴が開いた扉を見つけた。
「ルフィ、ロビン、リリナ!扉破ったぞォ!突入だーー!」
「うはーっ!仕事早ェなァフランキー!」
フランキーに招かれるまま、あたしとルフィは軽い足取りで穴の開いた扉は向かおうとすると、ロビンの焦った声に止められた。
普段は滅多に聞けない声色に自然と足が止まり、後ろにいるロビンに振り返るとその奥にピンク色の物体が付いている船が目に止まった。
船の甲板には人がいて目の前の状況に対処出来ていないようで体は固まったまま動かない。
「何だアレ⋯⋯!?」
「生きてんのか!?」
「さっぱり分からない。何かしら」
「ドロドロしててちょっとヤダ」
ドロドロの物体はくっ付いてるマストからゆっくりした動きでも、着実に甲板へ落ちていっているのが遠くからでも分かる。
甲板にいる人達はどうにかしようとしてドロドロに触ると、抵抗もなく体が中に吸い込まれた。それと同時に毒ガスが放たれて慌てた仲間達は埋まった一人を救出したけど、大きな声をあげて痛がっている。
それを横目に別の一人がドロドロに向けて炎を放った。炎は焼き尽くすように纏わりついて効果があるように思えた途端、大爆発を起こして船ごと燃えてしまった。
あまりの悲惨な状況に口を開いたまま言葉を無くした。船は炎に包まれ海の中へ沈み始めている。この光景見るのは苦手だな、と一人で静かに考えていると上から赤黒いものが落ちてきた。
落下物の正体が分かり、ドロドロは勢いよくいくつも落っこちて来るものだから、みんな一斉に騒ぎ出してごった返しになった。
「シュロロロロロ⋯⋯。いいコだ。3年も閉じ込めて悪かったな」
「あっマスター!」
「なぜ外に!?ここは危険です!」
突然聞こえた聞き慣れない声に見上げると、さっきルフィが突っ込んだ船のてっぺんに煙のようなものを纏った人がいた。近くにいた人はそれをマスターと呼んでいたかは分かりやすかった。
「やっぱりか⋯⋯!お前がシーザー・クラウンで間違いねェな!」
「お前かァー!マスターってのは!」
「シュロロロ、いかにもそうだ。海賊麦わらの一味と海軍Gー5!もう少し待ってくれ、あいつは水が苦手だからよ。あの湖を越える為に今少しずつ少しずつ自分の欠片を飛ばしてんのさ」
自分からわざわざ出てきてくれて探す手間が省けた。しかもあのドロドロが何をしてるのかも説明してくれた。
「炎の地からこの氷の地へ⋯⋯!スライムの欠片が全てこっちへ届いたとき、お前ら全員味わうんだよ!あの4年前の⋯⋯」
「捕まえたァーー!!」
「えええーーー!?」
マスターが言い終わる前にピヨンと軽く飛んだルフィがあいつの体をがっちり掴んでいた。
「頑張れルフィー!」
「あれが覇気か!すげェなルフィの奴!
「だけど武装色の覇気は実体を捉える力。海や海楼石のエネルギーのように相手の能力を奪えるわけじゃない!ガスガスの実の能力を私達はまだ知らない⋯⋯!」
マスターを捕まえたまま首を後ろへ伸ばした反動を使っておでこを打ちつけた。捕まえてはいるけど体はガスのままのマスターはそれをゆらりと躱した。
すぐに反撃に出たマスターはルフィの周りにガスを巻きつけ吸い込ませようと誘導した。
「シュロロロロ⋯⋯!さァ吸い込め!実験を繰り返したおれのガスの殺傷能力は⋯⋯、ええーーー!?」
自分から意図的に吸い込むと思っていなかったので驚いた様子だ。それでもマスターにとっては結果オーライかと思われたけど、ルフィは吸い込んだ毒ガスを耳から全て外へ吐き出した。まさかの行動にマスターだけじゃなく、あたし達の周りまで驚かせている。
「おれあんまり毒類効かなくなったのかな!マゼランのおかげだなァ!」
「マゼラン?インペルダウンの毒出し男か。あんな
「WJET
伸ばしたままの首を戻して上半身の後ろへ反らす。その反動で足を振り上げて勢いのままマスターの顔を蹴りつける。まともにくらったマスターは地面へ落っこちてきた。
「マスタァー!」
「あの野郎、よくもおれ達のマスターに!」
「手ェ出すなザコ共ー!」
ザコという言葉を聞き間違いかとやり過ごした部下達から起きあがったマスターに視線を移した。
追撃してくるルフィに取り出したカスタネットを叩いて爆発を起こす。まともに受けたルフィは黒く焦げてしまった。
「スマイリーズ!麦わらに纏わりつけェ!」
「何だ!?こいつらなぜマスターの言うことを!?」
「ルフィ危ねェ!そいつら大爆発を⋯⋯!」
「シュロロロ、消し飛べ!WガスタネットW!」
先程見た爆発と同じ規模のものが頭の上で起きた。眩しいほど白く光り、熱風にあてられる。
煙がはれて静まった中でマスターの笑い声だけ聞こえる。
「わー危なかった。スゲー爆発」
「え!?」
「WJETスタンプW!」
「ぐほォ!」
不意をついたルフィはマスターの体勢が整う前に攻撃を加えた。そして起きあがってくる前にマスターの体を掴んで動きを止めた。
「よォし!今度こそ捕まえた!」
「なァ!コイツ入れとくモンねェかな!ロギアだから縛ってもよー!」
「タルでもねェかな」
「オウオウ待て麦わら!そいつの身柄は海軍G−5が貰うし、お前らも逮捕だ!」
海兵達から無防備なルフィを守る為に間に立つと、背後から苦しむ声が聞こえてきてはっとして振り向くと首を押さえて倒れるルフィが目に入った。
「ルフィ!」
「⋯⋯あァーー。ナメられたもんだぜ」
「おいルフィどうした!?」
「何が起きたの!?今」
そのまま気を失ってしまったルフィにゆっくり歩み寄って顔を覗きに来たマスターを近付かせないように、腕を横に振り風で距離をとらせた。
「貴様、覇気使いか?」
ニヤリとした笑みから一変、口角を下げてあたしを見下ろしたマスターにこちらからも睨み返す。
「リリナ!」
「得体の知れねェ技だ!あんまり近付くな!」
どうしたらいいか分からない。何がどうなってルフィは倒れてしまったのか見えなかった。きっとマスターの能力なんだ。
ルフィの時のようにあたしの周りに毒ガスを充満させようとするのを突風を起こして阻止した。
「ッチ⋯⋯。面倒くせぇ能力もってやがる⋯⋯」
「ルフィに何したの」
「誰が簡単に口を開くも、ブヘッ!」
蹴り上げた足をマスターの顎に当てて話を阻止した。言う気が無いなら口を開くなと気持ちを込めると赤くなっていたから少し気持ちがスカッとした。
「うっ⋯⋯!」
顎をおさえているマスターの様子を伺っていると、またルフィの時と同じように、苦しむ声をあげてロビンとフランキーが座り込み倒れてしまった。
「ロビン!フラン、き⋯⋯!」
はっと息を飲んだとき、ぴたりと空気が吸えなくなってすぐ苦しくなった。ああ、あたしもルフィや2人と同じ状況になったんだと理解して、息が出来ない恐怖で涙目になった視界にたしぎが映り込んだ。マスターに攻撃を仕掛けているようだけど、何も考えられなくなり朦朧とした意識を失った。