ナミが
「らちが明かない!どこまで逃せばいいの!?」
「W
「じっとしてろ鎮静剤だ!」
チョッパーはロビンの能力で子ども達の体をおさえ鎮静剤を打つ作業を進めている。確実に落ち着かせることは出来るけど、一人ずつにしか注射を打つことが出来なくてもどかしそうに焦ったように視線を動かしている。
「きゃーーー!!」
「しまった!モチャ!回り込んでる子達がいた!」
「まずい!キャンディを奪われたら⋯⋯!また振り出しだ!」
「コンブ!ビヨ!やめて!絶対に渡さないっ!これは体を壊す薬なんだよ!?お家へ帰れなくなるよ!?」
「うるせー独り占めするな!」
あたし達より先に進んで下のフロアへいたモチャは二人同時にキャンディを掴まれてしまっていた。あの子も必死に掴んで離さないようにしているけど、相手は男の子二人だからきっとすぐ奪われてしまう。
「手荒だけどあの子達を引き離すしかないよ!チョッパーいい!?」
「うぅ⋯⋯」
「ダメーー!」
「あああーー!!」
チョッパーに視線を移したとき子ども達の大きな声に誘われて考える一瞬のうちに、大きなキャンディを口の中に押し込んでしまっていた。
「モチャのやつキャンディ全部食ったーー!!」
「ずりーぞーー!」
「モチャー!許さねェぞお前ー!」
「独り占めしてー!」
とても口の中に入りきるような大きさじゃなかったはずのキャンディを一生懸命口に含んで、出ないようにと両手で押さえている。その隙間から煙のようなものが出てきていて、異様な物だということはあたしでも分かった。モチャは絶対出さないようにと必死な顔で、たまに苦しそうに目を瞑っている。
「モチャーー!ダメだぞ全部吐き出せ!それがどんな薬か教えたハズだァ!」
「返せ!モチャー!」
チラリと少しだけチョッパーのいるこちらに目を向けてからモチャは飲み込むような行動を取り始める。汗をかいて、目に涙をいっぱいにして精一杯の抵抗をしている。
「やめろォーー!!」
チョッパーの静止を聞かずとても飲み込めるはずのない量を無理矢理喉に押し込んだ。頬の膨らみがなくなって少しだけ周りが静かになった次にはモチャは喉を押さえ苦しそうに咳をし始め、震える体は倒れてしまった。
「モチャーー!」
「どうしたんだ!?モチャが血を吐いた!」
「苦しそうだぞ!?何で!?美味しいキャンディで!」
「見ろお前!よくばるから!」
「ねェ、様子が変だよコレ⋯⋯」
喉にキャンディが詰まっているせいか籠ったような咳の後、血と一緒にキャンディを吐き出したモチャは苦しそうに涙を流す。その姿に動揺した子ども達は変わらずモチャを責めるような口振りと別に様子を伺うようにモチャの顔を覗き込む。
「これがこのキャンディの正体だからだよ!モチャはお前達を助けるためにこの身を犠牲にして⋯⋯!!」
「チョッパー!子ども達は完全に怯んでる!」
「全員鎮めるならチャンスは今しか⋯⋯!!」
友達を助けようと一人犠牲になったモチャの行動に涙を流すチョッパーは思いっきり声を荒げた。それを制止するようにロビンが投げかけ、ナミは子ども達に鎮静剤を打つように勧めた。
モチャの苦しそうな様子を見て子ども達はみんな不安げに立ち尽くしている。確かに今なら一気に注射を打つことが出来そうだけど、一番苦しんでいるのは他でもないモチャで。でもチョッパーしか対処できる人はいない。
「でも⋯⋯!モチャの治療が先だ!」
「時間はないわよ!?」
「あたしにやれることある!?」
「ガキ共が止まってやがるぞ行けー!」
上手く事を進めるには子ども達を優先するべきだろうけど、モチャは一刻を争う状況にあるんだろう。あたしにはどうしたらいいか分からないからチョッパーに何か指示をもらわないと。
チョッパーが決めきれずにいるとあたし達が来た道から大きな声をあげて集団が突進してきた。
「暴力はなしだぞ野郎共ォーー!!」
「取り押さえろォー!!」
サンジくんだ。さっき別れた海兵達と一緒に子ども達を取り押さえてくれた。引き連れてきた中に医療班がいたようで、チョッパーから貰った鎮静剤を子ども達に次々に打ち始めた。モチャは設備の整った部屋に移るために大きい体を何十人にも担がれて、チョッパーと一緒に運ばれていった。
残されたあたし達は鎮静剤を打って意識の朦朧としている子ども達を少し寝かせてあげて、意識がしっかりするのを待つ。
さっきまで我を忘れて暴れていた子達も今は穏やかな表情に戻っている。そんな子ども達の顔を見て回っていると隣にサンジくんが現れた。何故か海兵達にアニキと親しげに呼ばれていて、なにかと指示をもらいにサンジくんのところへやってきている。頼りにされているみたいだ。不思議な光景をじっと見つめていると、それに気付いたサンジくんが手を止めて同じように見つめてきた。
「どうしたの?」
「いや⋯⋯。なかなか一緒にいられねェし、こんな状況だからちゃんと無事を確認しておきたくて」
「それはお互い様だよ。サンジくんすぐどこか行っちゃうから⋯⋯」
「そうだな。すまん⋯⋯」
思ったより冗談っぽくならなくて謝ってくれたサンジくんの眉毛が下がっていた。なんて言ったらいいのか分からなくてフォローする言葉を探していると強い動きを感じて上を向く。すると光のようなものが素早く端から端へ通り過ぎ、切られたようにぱっくり上と下で分かれた。切られた衝撃で浮いたものは大きな音を立てて戻ってきた。元通りに戻ることはなくズレてしまったところは大きく崩れることなさそうだけど今までの衝撃のせいで天井からガレキが落ちてくるようになった。
「天井が浮いたぞ今!」
「今の割れ目からもガスが漏れ始めた!」
「こわいお姉ちゃん!」
「うえーん!」
「おいビビってる場合じゃェぞガキ共!立って走れ!」
大きな音に怖がる子達を立たせて急ぐように走り出した。近くで怯えて足の竦んでしまっている男の子を抱きあげてみんなと走り出すと、前からゾロに担がれたたしぎが二人でやってきて合流した。見たところ怪我してなさそうで良かった。
走ったその先にはルフィがいて、ピンピンしているけど既にシーザーをぶっ飛ばした後らしい。次にトラファルガー・ローとスモーカーが大きなトロッコを引いて現れた。二人とも血を流しているけど無事らしい。
用意したトロッコに乗って脱出するというので子ども達を先に乗り込ませる。ずっと抱えてきた子を下ろしたけれど、握った手が離れなくて様子を伺うように腰を曲げて顔を覗いた。
「ここまで来れば大丈夫だよ。みんなと一緒に乗って待ってて」
「⋯⋯うん」
「早くリリナちゃんの手から離れろクソガキ。そこはおれの場所だ」
「ぐるぐるにーちゃん怖いからやだ」
側にやってきたサンジくんに気付いてかげに隠れるように間にあたしを挟んだその子はサンジくんを視界に入れないようにあたしに抱きついた。
「このっ⋯⋯!」
「怖いの?平気だよ、痛いことしないから」
歯を剥き出しにして怒りを表すサンジくんは手を出すことはないけど、確かに口では容赦ないからこれ以上ヒートアップしないようにトロッコへ乗るように列の中へ連れて行った。仲の良い友達を見つけたのか振り返らずに笑顔が見えたから安心してみんなのところへ戻る。
「おい!麦わらの一味!何している全員急いで乗れ!お前の吹き飛ばしたシーザーに逃げられたら作戦はここで失敗だぞ!」
「何言ってんだ!まだ仲間が来てねェ!」
子ども達も海軍G−5も全員が乗り込んだのにあたし達が動こうとしないことに痺れを切らしたトラファルガー・ローは大きい声をあげた。けれどあたし達にとって死ぬかもしれないこの研究所の中にいる仲間を連絡もなしに置いていくことはできない。
さっきからR棟入り口の扉が閉まろうとしていて、それの危険を知らせる警告音も鳴り響いている。心臓はバクバク鳴ってるけど来るか分からないけど他のみんなをここで待っていたい。
「ルーーフィーーー!!」
「来た!」
「どわあああーー!」
「間に合ったー!」
「よし揃ったな!とにかく乗れー!ここぶっ壊れるぞー!」
みんな揃って急いでトロッコに乗り込んだ。ハシゴが三つあるけど順番に登っているのがもどかしくて、一味の仲間はみんな風で押し込んだ。なんか今回この作業ばっかりやったなーなんて思いながら自分もトロッコに乗り込む。
トロッコが動き出して猛スピードで通路を駆け抜けていくと行く手を阻むようにガレキが落っこちてきた。それを阻止しつつ、通り道を塞ぐ大岩はゾロが斬って崩して力ずくでも通ってみせた。
「急げトロッコーー!崩れるぞーー!!」
「これ終わりあるの?」
「おい風弄屋」
「⋯⋯え?あたし?」
「出口にもガスが待ち受けてるハズだ。お前の力で突破したい」
思わず反応したけど今特殊な呼ばれ方したな、と後から思い返した。あたしを呼んだのはトラファルガー・ローで平常心を保つように意識しながら目を向けると、意外にもあたしに頼ってきたので張り切って立ち上がった。
「任せて!⋯⋯WヴィントシュトースW!」
いつも一本の手でやる技を両手を突き出して突風を起こした。もやがかかったように見通しの悪かった出口が綺麗に晴れた。
「出ェたァーー!!」
出口の先に魚人島で見たフランキーのロボがいて、何やら敵と対峙しているようだった。
「ロ・ボ・だーっ!」
「きゅうきょくだー!」
フランキーの姿を見た男の子達は目をキラキラさせて喜んだ。海兵達も研究所の中でついでに一緒に乗ってきた人達も同じように目を輝かせている。そんなにいいものなんだろうかといつも疑問に思うけど。
「バッファロー!お前は、ベビー5か!?」
「⋯⋯ロー!あなた本当にジョーカーに盾つく気!?」
「この裏切り者がァ!ジョーカーはお前のためにまだハートの席を⋯⋯」
「ん?誰だ?あいつら友達か?」
「いや、敵だ!」
外にいた二人のセリフからすれば元々味方としてやってきて、向こうからすれば裏切りだと言うのも納得できる。何考えてるのか分からないから油断しないようにしなきゃ。
こっちの人数を確認した途端、向きを変えて空から逃げていこうとしている。その二人はシーザーを奪っているようでトラファルガー・ローは焦り出した。
「シーザーを奪って逃げた!よォし任せろ!飛ぶ敵は狙撃手の仕事!」
「あいつら⋯⋯!」
「おいおい。ウソップが任せろって言ったろ」
「ウチの狙撃手ナメンじゃねェぞ。鼻が長ェからって」
「バカ言え。万が一にもあいつを逃せば作戦は⋯⋯」
「同盟組んだんでしょ!?少しは信用してほしいわ!」
「ん?同盟ってなんだ」
ウソップが追っ手にかかろうとしたところ、あいつが余計なことをしそうになったのをルフィが止めに入った。あいつが同盟を申し込んできたくせにこっちの仲間達は信用されてないようだから、この機会に見ておいた方がいいと思う。
「私も逃げてばっかで攻め足りないのよね!戦意を失い遠くにいる敵なら恐くないのよ!」
「しかも手負いで背を向けた敵なら任せろォ!」
「いいから早くやれ」
ゾロが急かしてなかったらもう少し二人のかっこつけが続きそうなペースだった。
「W
小さかった黒カブトが一瞬にして大きくなった。紐の先についている人喰い花みたいなものがウソップに勧められるまま側に落ちているガレキを食べ始めた頃、隣のナミは逃げていくあの二人に向かって
「W
小さい弾から溢れるように出てきた黒い雷雲は一気に敵の上空に広がった。
「雷雲!?」
「バッファロー、いやな予感!」
「もう全力だ!」
「いいえ、逃げられません。天候の科学!Wサンダーブリード・テンポW!」
ナミの持つ
「トドメだ、やったれバクン草!」
雷に撃たれて煙をあげて落ちていく三つの塊目掛けて準備の整ったウソップが追撃を始める。
「W必殺!突撃流星群W!」
僅かに動ける大きい体の一人がシーザーを守ろうと体を動かしたところ、ウソップが飛ばしたガレキはそいつに命中し、先に意識を失って落ちていった。残りのものはシーザーに当たってはいても実体のない
「お、おれ一人でもドレスローザへ⋯⋯!」
「ムダだ。最後の弾は、海楼石の錠!」
しかし油断したシーザーを最後に仕込んであった海楼石の錠がシーザーの首に巻かれ、身動きがとれなくなって先にやっつけた二人と同じように海へ落っこちていった。
「よーし捕えたァー!」
「ザマミロシーザー!」
「背を向けた敵なら任せろ!」
「わかったよ!」
気持ちいいくらいの命中率だった。やれやれとみんなそれぞれの船に乗り込んで、寒さを凌ぐために自分のコートを着込んだ。