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パンクハザードの海域を抜けたようで寒さはなくなり各々普段通りの服装に戻った矢先、海坂のエリアに突入しやっと落ち着きを取り戻したのを見計らってロビンちゃんとブルックに茶を用意した。

「同盟組んで四皇を倒す!?」
「四皇か!いいなそれ」
「よくねェよ!」

パンクハザードでは色々あって何故トラファルガー・ローが行動を共にしてるのか知らなかったが、ルフィがあいつと話しているところを見て何かあったんだろうと踏んでいた。こうやって頭を回していかないとルフィのやることにはついていけない。

「待て待て!とにかくみんな落ち着け。ルフィ!知らねェ奴らに同盟の話を⋯⋯」
「よし!ウチとトラ男の海賊団で同盟を組んだぞ!仲良くやろう!ししし!」
「反対の人ー!」
「反対したらどうにかなるんですか?」
「どうせルフィが決めたんだろ?」

トラファルガー・ローの肩に手を回して歯を見せて笑うルフィに反対派のウソップ、ナミさん、チョッパーが手をあげた。そしてこの三人の輪から離れたところでフランキーと並んで座っているリリナちゃんが小さく手をあげていた。

「おめーが乗り気じゃねェのは珍しいな」
「⋯⋯いろいろあってね」

隣のフランキーと短い会話を交わしたリリナちゃんは嫌そうな顔をしている。その表情は見覚えがある。研究所内で合流した後、茶ひげの背に乗っているときにしていたときと同じだ。

「だからルフィが誘拐誘拐ってガラにもねェこと言ってたのか。この変な羊捕まえて料理してくれと言われても、さすがのおれも困るところだった」
「⋯⋯シュロロロロ。何も貴様ら。こんなごとをしてだだで済むと思うな⋯⋯!とんでもねェ大物達に狙われるど、バカ共め!てめェらの愚かさを知り⋯⋯!死ぬがいい!⋯⋯だぺァ!」

船に乗せてから今まで喋らなかったシーザーがやっと口を開いたと思ったらまだいきがりやがったから自然と足が出た。

「おいサンジ!今治療中なのに!⋯⋯終わってからやれよ!」
「終わったらいいのか」

蹴った衝撃で倒れたシーザーを起こして新しい傷の治療を始めたチョッパーは医者の鑑だ。見捨てられねェんだろうが自然治癒するのを待ちゃいいと思うんだが。

「パンクハザードでお前らに頼んだのはシーザーの誘拐。おれはSADという薬品を作る装置を壊した。新世界にいる大海賊達は大概海のどこかにナワバリを持ち、無数の部下達を率いて巨大な犯罪シンジケートのように君臨している。とにかく今までとは規模が違う!一海賊団で挑んでも船長の顔すら拝めやしない⋯⋯!だがあくまで裏社会。海軍に目をつけられねェように必要な取り引きは闇の中で行われる⋯⋯!その中で最も信頼と力を持っている男がドフラミンゴだ。闇の名をジョーカー。さらに今ジョーカーにとって最も巨大な取り引き相手が四皇、百獣のカイドウ」
「んな!!」
「⋯⋯!」
「どうした?」
「いや⋯⋯!何でもござらん。続けてくれ!」

クソ面倒なことに首を突っ込むことになる今後を見据えていると話の途中でいきなり声をあげた錦えもんとモモ。何でもないと言ったがピンクのうなぎになった隣のモモにもすごく動揺する始末だし、こいつらもまだまだ何かありそうだ。

「おれ達が狙うのは四皇カイドウの首だ。つまひこいつの戦力をいかに減らすことができるかが鍵!今カイドウはジョーカーから大量の果実を買い込んでいる。人造の動物ゾオン系悪魔の実SMILEだ」
「人造ってそんなもん作られたら際限なく能力者が増えちまうじゃねェか!」
「そういうことだ。人造なだけにリスクはあるようだが現に今カイドウの海賊団には500人を超える能力者がいる」
「やめたい人っ!!」
「ハイ」
「ハイ」
「黙ってろ」
「だがもう能力者が増えることはない」

能力者が500人という数字を聞いて、いつもの怯える三人は顔を青くしてまた手を挙げた。さっき手を挙げたリリナちゃんは今度は手をあげることなく、眠そうにあくびをしている。

トラ男曰く、その人造悪魔の実を作っていたのがパンクハザードのあの研究所にある装置でそれを壊して、更にそれを作っていたシーザーを捕まえたことによってそれを阻止出来たということだ。

「へー、こいつが?」
「シュ、シュロロ……」
「お前が悪魔の実の元を作ってたのか!すげーなーSAD!」
「元凶だぞホメんな!」
「ベガパンクの発見した血統因子の応用だ」
「何だ、すげーのベガパンクか」
「黙れ!貴様らじゃあ作れんのかよォ!アホのクセに!」

四皇と七武海との大きな取り引きの種と言われてると大きなものを担っていたとなると見かけによらねェな、と思っていたがその先の大元がベガパンクと言われてしまえば大したことはなかった。

「ジョーカーはもう終わりだ。こっちはもう次の一手に動く。ドレスローザのどこかにSMILEの製造工場がある」
「それを見つけて潰せばいいのか」
「その通り。敵は取り引きのプロだ、油断はしない」
「お前の行きてェのもここか!?キン!」
「いかにも!同心が一人⋯⋯捕まってござる!」

錦えもんは手に握っていた刀を抜いて凄む。あの訳ありサムライは生き別れの息子と再会しても何かワケが残っているようだ。



その日の夜、夕飯も終わり空いた時間を各々探していた。そんな中でドフラミンゴの影に怯えるウソップとチョッパーが錦えもんにワノ国の防具を用意させその姿で釣りに勤しんでいる。その傍らでは錦えもんがまりもに刀を振り下ろし何やら迫っている。どうやらあいつの持つ刀の一つがワノ国の名刀だったらしい。

「まだ騒がしいな。夜食食うのは何人だ?」
「わァ夜食なんだ?」
「ピザ」
「ピダ!?またあの男オツなメシを作るのだろう。モモの助はもう寝ておるかな」
「今ロビンとお風呂」
「はァ!?」

さておれの天使は、と視線を移したところでナミさんが予想だにしなかったことを言われ、おれと同じように反応したブルックと錦えもんと揉み合いになりながら風呂場へ向かった。はしごを登りきると、ちょうどバスタオル一枚のロビンちゃんが色気と湯気を漂わせてドアの向こうからやってきたところだった。その腕の中にはほくほくと満足そうな顔をしたモモの助が。

「あ、ちょうどよかった。錦えもんさん、この子のお着物⋯⋯」
「何をさらしとんじゃこのエロガキャーー!!」
「ちょっとソレ卑怯ですよ!?」
「ガキの特権フル活用しやがって」
「黙ってマゲを切れい!」

あの顔は確信犯のそれだ。おれは見過ごすわけにはいかない。寛容なロビンちゃんは許しても、ナミさんは許してはくれないだろうよ。

「コラッ!よってたかって何子どもイジメてんのよ!」
「ウプ⋯⋯」
「違う⋯⋯!ナミさん、男ってやづは⋯⋯」

恐らく男三人の監視として後を追ってきたナミさんに一人残らず鉄拳が飛んできてダウンする。まさかナミさんまで子どもの体をしただけのエロガッパに気づかないなんて。

「コワかったでござる姫君ー!」
「え、姫君!?やだ、そんな正直に!こいつー可愛いんだから!モモちゃんは私達の部屋で寝ようねっ」
「何ィー!?秘密の花園、女部屋へー!?」

姫君とおだてられ頬を染めたナミさんは勢いのままモモを腕の中に閉じ込めた。その豊満な感触を堪能して嬉しそうにしていたモモはこちらに顔が見えるタイミングで本性を見せやがった。こんなのあんまりだ。悔しすぎる。しかしおれにはそれを阻止する術もなく、自然と涙が溢れた。

「⋯⋯サンジくんはあたしと入る?」
「んええ!?」
「!?」

悲しみに打ちひしがれていたとき、ナミさんの後に続いてきたリリナちゃんが度肝を抜く発言をした。
おれの隣にいたブルックと錦えもんは口をあんぐりとあけリリナちゃんの爆弾発言に驚きを隠せないでいた。おれも何を言われたのかすぐに飲み込むことが出来ずリリナちゃんと見つめ合うこと数秒。ぼっと音がしそうなほど一気に顔を真っ赤に染めたリリナちゃんにつられて、おれの顔が熱くなるのを感じた。

「なにやってんのよあんた達」

見兼ねたナミさんの一言で我に帰ったリリナちゃんは何も言わずにこの場から一目散に立ち去ってしまった。

「リリナさんらしからぬ大胆発言でしたね」
「サンジ殿抜け駆けかと案じておったところでござる」

未だに事態の処理が出来てないでいるが、ひとまずロビンちゃんのために風呂場を後にした。何故リリナちゃんがあんなことを言ったのか真意が分からない。本気で言ってくれたのか、冗談だったのか。あの照れ方はどっちだったとしてもいつものリリナちゃんなら言わないことだろう。手放しで喜べないのが悔しい。

「リリナちゃんは?」
「ああ、なんかスゲー勢いで部屋に戻ってったぞ」

甲板で騒いでいたウソップがおれを女部屋の方へ視線を誘導させた。さすがにあの中へは入ることは出来ない。