彼女が倒れた(ダンデ)⁑大幅加筆

朝起きると一緒に眠ったはずの彼女がいない。
不思議に思ったダンデがリビングにいくと、彼女のポケモンであるウィンディが蹲っていて、不安げな瞳でダンデを見あげた。

(なんだ…?いつもならすぐに立ち上がって走ってくるのに…)
何かを感じたダンデが近づいてみると、ウィンディにしがみ付いて眠るナマエの姿が。

「ナマエ!?」
急いで駆け寄ってみれば、顔は青ざめ反応も薄い。
慌てて体温を測れば、熱は優に40度を振り切っていた。
とにかく病院に連れていかなければ…!

意識が朦朧として力が抜けてしまっている彼女に、自分が持っているコートの中で一番暖かいであろうコートを着せ、マフラーを巻きつける。
自分の着替えはなんだっていい。とりあえず外に出れる服装ならなんでも。

「タクシー、もう呼んでるロト!」
オレが着替えている間に呼んだのだろう。本当、優秀なサポーターに感謝する。
「ナマエ、病院に連れて行く。しんどいだろうが、もう少し我慢してくれ…」
聞こえているのか聞こえていないのかさえ分からない彼女にそう声をかけながら、タクシーに乗り込んだ。

ーーーーーーー
「このシーズンになると他地方で流行る感染症ですね。今から点滴をして、その後は投薬治療をすれば1週間ほどで治まります。
にしても、今来て貰って良かった。いくら治るとはいえ、これ以上熱があがっていれば、危なかった」

「そうですか…」
医師の説明を聞いて安心はした。だが、ベッドの上で管に繋がれ、今も尚しんどそうな彼女の姿をみて、椅子に座りながら頭を抱える。

そう言えば、昨夜『今夜はよく冷えるね』と彼女は言っていたじゃないか…
今思えばあれは悪寒だったのか…

気付いてやれず、そのまま一緒に眠ってしまった自分が、
恐らく自分の体調の悪さに気づき、オレに迷惑をかけまいと彼女がベッドを抜け出したことに気付かなかった自分が、腹立たしい。
久しぶりに彼女とゆっくり眠れると安心しきっていたのだ。
彼女が夜中に苦しんでいたとも知らずに。

ーーーーーー
その後、丸一日点滴を続け、翌日の昼に家に帰ってきた。
家のベッドに彼女を寝かせると彼女がうっすらと目を覚ました。

『…ダンデくん…?』
「ナマエ!気がついたか…!気分はどうだ?」
2日ぶりに聞いた声はとても弱々しかったが、ひとまず目を覚ましたことに安心し、ダンデはベッドに腰かけた。

『まだ少ししんどいけど…大丈夫。心配かけて、ごめんね』
「オレの方こそすまない。昨日の夜から具合が悪かったんだな…」

まだしんどそうなナマエの髪の毛をサラリと撫でる。こんな時でも彼女の髪の毛はサラサラで。まるで彼女の元気を吸い取っているのではないかとさえ思ってしまう自分に失笑する。

「ナマエ、暫くはしっかり休むんだぜ」
そういいながら彼女の冷たい手を握れば、
『うん、ありがとう…』とナマエは瞳を閉じた。

ナマエが眠ったのをしっかり確認したダンデは、自身の暗い気持ちを断ち切るかのように自分の頬を叩いた。
「よしっ!!」


数時間後ーー
ドカァァァンン!!!

家の中から爆発する音が聞こえ、ナマエは飛び起きた。
薬が効いているのか、先程より気分は良くなっていて、頭もすっきりしているような気がする。
そんなことより今は爆発の原因だ。
まだやはりフラつく身体で爆発音がしたリビングの扉を開ける。

そこには顔中を煤だらけにしたダンデとリザードンが大喧嘩している姿があった。
その横でガマゲロゲが面倒臭そうに消火活動をしているのだが、どうやら2人の喧嘩の炎は消火はしてくれないらしい。

ナマエが入ってきたことに気がついたダンデは慌てて駆け寄ってきた。

「もう起きて大丈夫なのか?」
『えっと…さっきの爆発音で起きない人はいないと思うんだけど…』
「す、すまない…」
『なにしてたの?』

ナマエが聞けば、ダンデは少し目線を彷徨わせた。

「いや…料理をしようと思ったんだが…失敗してしまったぜ…」
そう発したダンデの後ろでは、リザードンがダンデを睨み付けている。その佇まいからすると言わんこっちゃないといったところか。

『マホイップ、指令塔の役目、よろしくね』
そう自分の手持ちのお料理番長に頼めば、凜々しく胸をはって答えてくれて、早速料理が出来そうなポケモンを厳選し、まだ使える食材を確認し始めた。

『ダンデくん』
今もまだしょんぼりとしている彼は、かのバトルタワーオーナーとは思えない程の落ち込みっぷりであった。そんな彼の頬に手を添える。

まずい…なんとなく、また意識が…

『ダンデくん、ありがとう』
「いや…お礼なんてやめてくれ…オレは君に迷惑しかかけていないぜ…」
『ううん、そんなことないよ。私のために、料理作ろうとしてくれたんだよね?』
そろそろ薬が切れそうなのかな…
「…」

『嬉しかったよ。すっごく』
「ナマエ…」
『料理にはコツが必要だから…私が元気になったら一緒に料理をしよう?私が教えてあげる』
そう言い終わったが早いか、ナマエの身体の力が抜けた。


「ナマエ!」慌てて彼女を抱きとめれば、まだ身体が熱い。
薬が切れてきたのか…?
また意識が薄くなってきたナマエをお姫様抱っこで抱き上げ、そのまま部屋のベッドに寝かせた。

いつだってナマエは優しくて、どんなオレだって受け入れてくれる。
世間ではバトルタワーオーナーだのなんだの言われているが、
蓋を開けてみればオレは家事ひとつできないし、弱音だって吐くし、彼女に負担をかけてばかりだ。
それでも、そんなオレを優しく包み込んでくれるナマエ。

そんな彼女が愛おしくて仕方ない。

「料理の件、約束だぜ…そのためにも早く治そうな」
と額にキスを落とした。



「ロトム」
「は〜いロト!」
「今週のスケジュール、全てキャンセルの連絡を入れてくれ。彼女に付き添いたい。
連絡が終わったらスマホを圏外にしておいてくれ」
「了解ロト!たまに休んでも構わないロトよ」
★ブラウザバック推奨
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