彼女が倒れた(キバナ)⁑大幅加筆

約束の時間を過ぎても一向に現れないナマエに、首を傾げる。

おかしい、待ち合わせの時間はとっくに過ぎてるんだけどな?
彼女のスマホロトムに何度も通信してみたけれど、反応なし。
ついでに彼女のSNSも覗いてみるけど、昨日からログインされていない。
普通こんなことってあるか?

おかしいと思って、家まで行ってインターホンを押してみるも出てこないことに嫌な予感がし、
合鍵を使って部屋に入る。
部屋に入った途端、オレは凍り付いた。
廊下でナマエが倒れている。

「おい、どうした!?」
急いで抱き起こして見るも、全く返事がない。顔色も悪く、呼吸が荒い。
まさかと思い、ナマエの額に手を当てる。
「…!?お前、凄い熱じゃねぇか…!!ヘイ、ロトム!」
先ほどからアワアワと周りを跳び回っていたロトムの名前を呼ぶ。
「今すぐここに医者を呼んでくれ!」



ロトムが病院に電話をして間もなく医師が到着した。そのままナマエを見ると慌てて点滴を始める。
そんなに重病なのか…?
「結論から言うと、5日ほどで治る感染症です」
それを聞いたオレさまは良かったと胸を撫で下ろした。

「普通の人、であればですが」
「どういうことだよ…?」

胸を撫で下ろしたも束の間、この医師は不穏なことを言いやがったぞ。
そう思ったのが顔にでていたのか、ロトムが「先生を睨んじゃダメロト」と囁いてくる。
いけねぇ、気をつけねぇと…

「彼女は最近多忙でしたか?」
「そうだな、トレーナーの育成に毎日忙しそうだったぜ?」
だからこそ今日が久々のデートだったのだが…
「ナマエさんはそのせいか、栄養がしっかり取れておらず、免疫力が低下しています。
だから、この感染症も治るのは遅いでしょうし、治ったとしても栄養をしっかりとる生活をしなければ、今度は違う病になりなすよ」

元々、忙しくなると三食の飯よりトレーナーなナマエ。
こいつ、ここまでなるまで食ってなかったのか。
人通り説明をし、点滴の管を抜いた医師が帰ると、オレさまはフライゴンを出す。

「フライゴン、オレさまの部屋から着替えを何着か持ってきてくれるか?コイツこんなだからさ、オレさまここに泊まり込むわ」

オレの言葉を理解したのか、フライゴンは元気に鳴いてオレさまに家がある方向へと飛び立った。

「さぁて、何からやろうかね…」

ーーーーーー
翌日…
目が覚めた私は何故かベッドの上にいた。
昨日は確かキバナとの久しぶりのデートに行こうとしてたのだが、
身体が重いと思ったあとの記憶がない。

どうしてベッドの上にいるのだろうか、と床に足をつけ、立ち上がる。
昨日はあんなにしんどかったのになぜだろう、今はかなり楽だ。その足で、リビングの扉をあけて驚いた。

食卓にはポケモン達のご飯をはじめ、
人間用のお粥や、きのみをすり潰して作ったであろうドリンクが並べられていて、部屋中に美味しそうな匂いを漂わせている。

ソファを見れば昨日洗濯機に入れていたはずの洗濯物が綺麗に畳まれていた。
掃除しなければと思っていたテレビ台の埃の全てなくなってピカピカだ。
なんで?と思っていると玄関のドアが開く音がした。

「お、気がついたか?」
なんて言いながら入ってきたのはスーパーの袋を片手に持ったキバナだった。
そのまま部屋に入ってきて、スーパーの袋を椅子に置いてナマエの正面に立つ。
キバナの方が遙かに身長が高いため彼を見上げていると、キバナはグッと上体を屈め、ナマエと目線を合わせた。

「体調はどうだ?」
『昨日よりは、マシ…』
「そうか。ならよかった」
『キバナ、』「ナマエ」

ごめんねと続けようとしたナマエの言葉はキバナによって遮られた。
彼の瞳を見ると、怒っているのか目尻が上がっている。

「部屋入ったらお前が倒れてて、肝が冷えた」
そう言った彼の声はとても冷たいもので、ナマエは黙るしかなかった。

「しんどいならすぐにオレを呼べ。そんなにオレさまは頼りにならないのか?」
『そんなことない…ごめんなさい』
「分かればいいんだ」
素直に謝れば、彼はにっこり笑った。

そのまま「お試しでお粥作ったら、上手くできてよ。今からまた作る。出来たら呼んでやるから」ベッドに回れ右させられる。

と思えば突然後ろから抱きしめられた。キバナの声が耳元で聞こえる。

「それから、オレさまここに住むから。お前、栄養取れてないって医師から聞かされたし、お前の管理はこのキバナさまが管理してやる」

熱のせいか、背中から感じる彼のせいか、クラクラする頭の中で、
あぁ、これは徹底的に管理されるなと思った。
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