彼女が倒れた(ホップ)⁑大幅加筆

今日はナマエが研究所に遊びに来る日だ。
先ほど家を出たと連絡があったが、まだ到着していない…もうとっくに着いていても良いはずなのに…

一度連絡を入れてみるかとロトムに手を伸ばしたと同時に、ガチャッと入り口のあたりで音がした。どうやらやっと到着したようだ。入り口まで迎えに行こうと階段を降りていくとやはりナマエで。

どこか寄ってたのか?とでも尋ねようとした時、
突然ナマエの身体がホップの方に向かって倒れかかってきた。

「!?っ!?おい、ナマエ‼どうしたんだよ!?」

意識がなくなり倒れかかってきたナマエを抱き留めながら声をかける。
返答はなく、ただ荒い息づかいだけが聞こえてくる。どう考えても様子がおかしい。
抱き留めたナマエの顔をのぞき込むと、瞼は伏せられ顔は赤かった。

「なんだ!?お前、顔真っ赤じゃんか!!」

体温計をとろうにもこの体制では無理だし、そもそも焦ったホップにはそんな考えも浮かばなかった。
慌てたホップは自身の額をナマエのおでこに当てる。

「酷い熱だぞ…!とにかく、病院へ行こう!」
こんな状態でタクシーなんて待ってられるか!
ナマエを抱えたまま、白衣も脱がずに庭に出て手持ちのアーマーガアの名前を呼ぶ。
突然ボールから出されたにも関わらず、アーマーガアは主の慌て具合とナマエの状態を見るや否やすぐに身体を屈め、主の方を振り返った。

「頼むぞ、アーマーガア…!」
そうホップが頼めば、
まるで任せておけ!と言っているかのように一鳴きし、その大きな翼を広げた。


診察結果から言えば、他地方で流行っている感染症らしい。
投薬をすれば3日で熱は下がり、1週間で完治するようだが、正しい処置をせず放っておくと高熱で亡くなるケースも多いらしい。

とにかく、今来てくれて良かった、と医師に言われてやっとホップは身体の力が抜けた。

きっと今日ナマエが自分のところに遊びに来なければ、病院嫌いな彼女は間違いなくほったらかしにしていただろうし、例え行こうとしたところで途中で力尽きていただろう、先程のように。

安堵のため息を漏らしながら、それでもしんどそうで意識がないナマエをおんぶして、再度アーマーガアに声をかける。

ひとまず、オレの家に居てもらうか…一人暮らしの彼女に連れて帰ったって、誰も看病してくれる人もいない。何より、オレ自身がナマエの側についててやりたいんだ…

ーーーーー
自分の部屋のベッドにナマエを寝かせる。
薬の効果が少しずつ現れ始めたのか、当初よりも顔の赤さはひいたような気がする。
「全く、しんどかったはずなのに我慢ばっかしやがって…」そう優しく呟き、ホップは部屋の電気を消した。


「さて、と」
まずは何から手をつけるか…薬の効果が完全に出るのは明日の昼。それまでにオレが出来ることは何なのか…
身体の中の菌はどうしようもないが、少しでも治りが早くなるよう何かしたいぞ…
そういえば、この辺りにマグノリア博士が置いていったトレーナー用の医学書があったような…

ホップは壁中に敷き詰められている本棚の中から分厚い本を数冊引っ張り出した。
「あった、これだ」
そこには、体調が悪いときに効くきのみを入れた食べ物や、飲み物のレシピ本と
菌を抑えるための部屋の温度や湿度、換気の頻度などが記載された本。

「これを元に、お粥でも作ってみるか…ただ、普通の菌じゃない分、きのみを変えなきゃいけないかもしれないな…」
そういい、顎に手をやり、考えるホップはまさに博士であった。


翌日―…
『ん・・・』
ここはどこだろう…ホップの部屋…?
そういえば私昨日、身体がだるくて…
研究所についたのは覚えてるんだけど、その後どうしたっけ…

取りあえず、部屋の主を探そうと上体を起こしたとき、視界に紫が目に入った。
その紫はナマエのベッドに突っ伏したまま眠っている。そのまま周りを見渡せば、加湿器や体温計、水の入ったお皿に絞られたタオルが散らばっていて、つい先ほどまで看病してくれていたのが丸わかりだ。

『ありがとう』
そっとホップの頬に触れてみる。
その動作に目が覚めたのか、
「んん…?気がついたのか」
とホップは欠伸をしながら体を起こした。

『うん、迷惑かけてごめんね』
夜通し看病してくれていたのだろう、彼の目の下にはクマができていて、申し訳ない気持ちになり、布団に目を落とす。遊びに来ておいて、倒れて、看病させて…迷惑以外の何者でもない。そう思った時、

「迷惑じゃないぞ!」とハッキリした声が耳に飛びこんできた。

「迷惑じゃないけど、心配したんだぞ!!」

と言い終えたホップは、一呼吸起き、
ナマエの頬に手を添えた。
そしてナマエの目をしっかり見つめる。

「オレは傷ついたり、具合が悪いポケモンは治せるけど、人は治せないんだ…
だから、自分自身を大事にしてほしいし、しんどい時はもっと早くオレを頼ってほしい」

そういった彼はとても優しくて。

「ナマエのことが大事なんだ。だからナマエには元気で居て貰わないとな!」


ーーーーーーーーーーー
オマケ

その後、ホップはナマエにお粥を振る舞ってくれた。
どうやらいろんな図鑑を調べ、お粥レシピを作成したようだ。
それを何度も作ってはバイウールーと味見をして、また作り直してを繰り返したらしい。
そんな彼のナマエへの想いは、実を結び、リザ-ドン級のお粥が完成したような…

★ブラウザバック推奨
Top