▲Mine


別に友達なんかじゃなくて。
かといって恋人でもなくて。
妹だなんてとんでもない。
ただ▲▲が俺以外を優先するのは気に入らなくて。

かといってあいつに甘い言葉を囁きたいわけではない。


「もうさぁ、いい加減にして欲しいわけですよ」

何が悲しくて自分の誕生日にあんたといなきゃいけないんですか。とこちらを睨む▲▲に「別に俺は強要したわけじゃないよ」と応えれば、「あんたの頼みは強制みたいなもんでしょう!」と金切り声で騒ぎ始める。失礼だなぁ。そっちが勝手にそう思ってるだけなのに。

今日の仕事はちょっと面倒だった。
でも別にこなせない訳がない。
ただ、ちょっと、面倒だったのだから俺は▲▲に来れるなら今すぐ来いと電話しただけ。
電話越しで数秒の間の後に「今日デートなんですけど」と面倒くさそうな声が聞こえてきたので、俺はもう一度来れるなら今すぐ来いとだけ言って電話を切った。それから勝手に来たのは▲▲の判断であって俺が責められる筋合いはない。

ぶつぶつ隣から文句が聞こえながらも2人で片付ければ早いもので。
静かになった現場で腕時計に目をやる▲▲に「今から行けば?デート」と気遣ってやったのに返って来たのはじっとりとした視線だけだった。

「いやもう無理なんで」
「何が?」
「これでドタキャン何回目だと思ってるんですか。普通に振られました。さっき。しかもメールで」
「あぁそう。よかったね、早い内に見切りがついて」
「毎回毎回誰の所為でこうなってると・・・!」
「俺の所為だとでも?それはお門違いだよ。お前のそういう所を受け入れない男を選ぶお前が悪いんだ。更に言えば受け入れられなくても繋ぎ止めたいと思わせられないお前の女としての技量がないからさ。それを人の所為にするなんて、どうしようもないね。もっと磨きなよ、内面と・・せめて仕事の腕前も」

俺に正論を説かれて悔しいのか何か言いたいのか顔を怒りで真っ赤にさせながら口を開きかけた▲▲だったが、ぐっと堪えて無理矢理飲み込むその姿に俺はつい口元が緩んだ。ほら見ろ。お前は俺に何も言えないんだ。

「まぁでも今日は頑張ってくれたからね。臨時ボーナスとご褒美はあげるよ」

頭を撫でてやればこちらを睨みながら「あざます」と中指を立ててくるこいつは素直じゃないから可愛くない。





「・・それで。この馬鹿でかい花束は何かの冗談ですか?」
「嬉しいだろ?一応お前女な訳だし」

いらねー!と毟って放り投げられたらどれだけストレス発散になるだろう。しかしこのイルミという男にそんな事してみろ。即行脳天に針ぶち込まれて死ぬまで働かされるに決まっている。

それなりに付き合いは長い私達の関係は随分とあやふやなものである。
勿論彼の方が圧倒的強者であり恐怖政治で統治されている部分は否めないが、上司と部下というわけではなくて。
かといって友人とも違って。
恋人なんてとんでもなくて。
強いて言えば部活動の先輩後輩のような、まぁそこそこ気心知れた距離感ではある。と思う。

「あとこれ、靴。お前限定モデル欲しがってただろ」
「うっそ!これ馬鹿高いブランドのやつ!・・え、なんでサイズ知ってるんですか?」
「それとこの後は店予約してるから。何でも食べるよね」

それに大人しくしていれば、この男。凄くしっかり尽くしてくる。
まるで俺が一番だと言わんばかりに。

「私が振られてなくてデートに戻ってたらどうするつもりだったんですか」
「別に?あ、でも店は予約してるし一緒に行くかは聞いてたかな。一応」

「逆にその場合お前どうするつもりだった?」なんて意地悪な事を言ってくるものだから、彼が満足するように「それ拒否権無いじゃないですか」と応えてやる。

ほんと。私も良くないのは、分かっているんだけれどもねぇ。

元になったばかりの彼氏の凄く好きだったご尊顔を名残惜しみながら結局私は今回もこの男の車に乗り込むのであった。

仕方ない、仕方ない。