▲INTERFERE

「おい」
鋭い三白眼は睨むように私を捉える放課後。やましい事なんてなにもないのに、ついまごついてしまうのだから、最早これは脅しと大差ないのではないだろうか。なんて。
「お前、まだあの…ナントカってやつと付き合ってんのか?」
「え?あ…うん、」
「悪いこたァ言わねェ。別れろ」
「…なんで?急にどうしたの」
私が急に脅され始めたのを機に、クラスメイトはわらわらと教室を去る。遂には私と荒北くん2人きりとなったこの空間は、この話題としては正直ちょうど良かったりもした。
荒北くんは少しイライラした様子で頭を掻くと、小さく(おそらく私に聞こえていないと思っている)舌打ちをした。
「あいつがすっげェ派手なギャルと一緒にイチャついてたのを昨日見たんだわ」
「あ〜…妹さんじゃないかな」
彼氏の妹さんはとても穏やかでギャルとはまるで正反対であったが、庇うようについ嘘をついた。
「ふーん。でもオレェ、アイツがお前以外の女連れてんの見たの昨日が初めてじゃねェんだけど。昨日のとは違う女だと思うけどォ?」
「あ…そうなんだ」
「そうなんだってお前…」
「あっ、でも大丈夫だから!他に女の子がいることぐらい、知ってる」
「…はァ?知ってんだったら早く別れろよ」
「い、いいの!ほら、私って地味だから。なんか…薄味?らしくて」
ただでさえ小さい黒目をもっと小さくして、驚いたような表情を浮かべていた。否、驚いていたのでは無くて呆れていたのかもしれない。荒北くんは小さく舌打ちをすると、一呼吸おいてため息を吐いた。
「…はァ?」
「私なんかと付き合ってくれてるんだから…つまみ食いぐらい許せって。しょうがないよね!わたしなんか地味だし、しょうもないし!」
ギリっとまるで息の根を止められるのではないかとさえ思うほど鋭い視線は私を貫いた。なぜだか、荒北くんはとても怒っているらしい。誤魔化すようにヘラヘラっと笑えば、呆れた様子で上を向いてため息を吐いた。
「…お前二度と私なんかとか言うな」
「えっ、?あ、あぁ…ごめん」
荒北くんは納得がいかなさそうな様子で、もう1度舌打ちをする。
「お前、なんであいつが好きなの?」
「優しいの。とっても」
「優しい奴は他に女作んねェだろ」
「それは私が至らないからだから」
「お前にそう思わせてる時点で優しくなんかねェ」
「んー…じゃあ、かっこいいから」
「結局顔かよ」
「だってあーでもないこーでもないって言う気じゃん」
売り言葉に買い言葉みたいに、荒北くんはそりゃそうだろ!と言うと、さらに舌打ちを重ねる。その後またため息を吐いたかと思えば、ガシガシと頭を掻く。
「好きな女がぞんざいな扱い受けてて面白れェ訳ねェだろ」
「……え?」
「気に入らねェんだよ、あいつが。オレなら大切にしてやるのにって思うだろ、そりゃ」
「荒、北くん?」
突然の告白っぽい流れにさっきまでとは違う意味でまたまごついてしまう。そんな私の様子を察したらしい荒北くんはにやりと口角を上げて、ま!と一言吐いたかと思えば私に近付くと、気がつけば荒北くんの匂いに包まれていた。
「別れなくてもいーや。アイツも浮気してんだし」
「え、ちょっと…」
「▲▲、」
耳元で聴く荒北くんの声はいつもより優しく感じる。
「好きなんだよ、お前が」
ゆっくりと囁かれた言葉はきっと本心で、荒北くんの早くなった鼓動が伝わってくる。それにつられるように、私の鼓動もペースを上げる。それじゃまるで、ときめいてるみたいじゃない。