▲ 嘘が下手なヒト
「ほんっま、嵌められた」
まあそう言いなや。と煎餅を差し出す治にいやいや、と鼻息荒く反論するのは不本意なデートを控えた僕です。
「やって、その気もないのにデートするんはあかんやろ。そもそも俺ヒマちゃうねん」
「んー。でもお前好きそうな子やんか。行ってみたら意外とええかもよ」
「俺こう見えて見た目重視派やねん」
「せやろな」
ずずず、と音を立てて茶を啜った治はまあまあと手を叩く。
「結局こうして折角オシャレした訳やから行ってこいや」
「行くしかないから行くねん。おしゃれした訳じゃなくてもとからおしゃれやねん」
「はいはい」
背中を押されて送り出された俺は▲▲と待ち合わせた駅前に向かう。断り切れなかった自分が悪いという自覚もあるが、その気のないデートは気が重い。
「あー、今日どこ行くんやっけ。えーっと」
予定と出費を考えている間に着いた駅にはまだ▲▲の姿はないようだった。まあまだ約束の時間にもなってないし最近し始めたソシャゲーを開いてローディングし始めると、肩をとんとんと叩かれた。
「侑くん」
「……は?」
「えっ、」
「いや、思てたんとちゃうなあ。え、▲▲やんなぁ?」
頭の天辺から足の先までを舐めるように見てみても、学校で目にする▲▲とは雰囲気が異なる。
「実は双子なん?」
「ずっと何言ってんの?」
「雰囲気違うなぁ」
「褒めてる?」
「おん。めっちゃ褒めてるわ。可愛い」
素直に褒めただけだったが、目を見開いて驚いた▲▲の顔がみるみる赤くなっていくのを見ると自分も少しだけほっぺたに熱がのぼるのを感じる。
「照れんなや。俺まで恥ずかしくなるやん」
体力だけ消費したかったソシャゲも触らずに切って、スマホをポケットに突っ込んだ。
「侑くんは今日も格好ええなぁ」
「……知っとる」
「私今日めっちゃ楽しみやってん。ありがとう」
俺も楽しみやったよ。的な嘘は正直者なので吐けず、控えめなおおん。という一言で流した俺をきっと▲▲は察している。
「会って早々日ごろは可愛くないみたいな流れは傷付きましたけど」
「ちゃうて!それは、本当、ごめんやん」
「イチスタバで許したるわ」
「ほなスタバ行こや」
自然な感じで▲▲の左手を取って歩き出す。今朝の怠い気持ちが嘘みたいに心臓が鳴っているのは、まだ気付いていないことにしよう。
title by 婀娜 さま