妻とは大学で出会った。入学時から周囲がざわめいた程度には綺麗な容姿をしていて、性格も明るくて優しくて非の打ち所がない完璧な女である。取引先と揉めて苛々した感情を持ったまま家に帰ってしまったこともしばしばあるが、その度に妻の顔を見ただけで全てがどうでも良くなる程、結婚して5年が経った今でも可愛いと思えるし、そんなオレの些細な違和感を察知しては「今日はちょっとだけ夜更かししよ、」と対して得意でもないはずの対戦ゲームを持って来てオレに元気を与えようとしてくれる。本当に、心底良い妻だと思う。
不出来なオレは、そんな良い妻に劣等感を感じている。
なんでオレなんかと。オレはいつまで経ってもガキ臭くて妻とは不釣り合いだ。マイナスな思考が頭を一度過ぎると、気づけばそれに飲み込まれる。
●●と出会ったのは、その頃だ。会社に中途で入社してきた●●は、綺麗な妻とはタイプが違い、どちらかといえば可愛いという単語がしっくりくるような幼さがある女で、妻とは違うガサツさを持ち合わせていた。
入社して数ヶ月が経ち時は夏になる。ここ数年の夏は暑いと言う言葉だけでは流せないほど気温も高くて、外回りにはかなりしんどい季節となった。外から汗をかきながら帰社したタイミングが被った●●に誘われ給湯室へ行けば、下段にある冷凍庫をガサっと開けてふたつソーダアイスを取り出した。
「私のへそくり、分けてあげますよ」
「おぉ、アリガト」
いえいえ、と言いながら引き出した冷凍庫を足で押して閉めた。
「可愛い顔して足癖悪いんだな」
「やっばー!日頃の行いってこう言う時に出ますよね」
忘れてくださいね、と楽しそうに笑う●●に、オレは少しだけ頬を赤らめた。
「そういやこの前A社の契約決めたんだって?」
「あ、はい!あそこの担当、実は前社の時にやりとりがあって…ラッキーって感じです」
「いやいや、にしてもすげェよ」
「褒められ慣れてないのでなんか恥ずかしいですけど、お祝い飲みならいつでもお願いします」
どこが褒められ慣れてないんだ。してやったりとヘラヘラと笑っていた。まさか●●から言われるとは思わなかった。
「おー、オレも飲みでも誘おうかと思ってたわ」
「まじっすか!今日行きます?」
「んじゃ今日行くかー」
アイスご馳走さん、と給湯室を出る間際、2本目のアイスに着手した●●からの今日は残業だめですよ、の一言に片手をあげて返答した。
「あーーーしかし飲むと余計暑くなりますよね」
シャツのボタンを緩めた●●の手元をついじっと見てしまっていた。それを本人に指摘されたその瞬間から、その場の空気は一変する。
「悪りィ、つい見惚れた」
「荒北さんって奥さんいましたよね」
「あー…うん。つっても嫁だけにしか欲情しねェ訳じゃねェし」
「荒北さんうける、何言ってるかわかってます?」
「あんまわかってないかも。暑さで頭やられてんのかな」
体感5分くらい目線がバチっと絡んだ後、●●はグラスに残った酒を一気に煽った。
「私家近いですけど、二軒目宅飲みします?汗も流したいですし」
その一言に、オレは返事をせずに店員を呼んで会計をした。探るような目線を向ける●●に、どっち?と聞けば視線に熱が籠る。
「飲むだけな、」
「はい、もちろんです」
体裁を確認して●●のマンションに足を踏み入れる。
●●とのセックスは乱暴で荒々しかった。
「オレェ、こういう方がスキ」
誰のためでもない、ただの素直な気持ちはしっかりと●●の耳に届いていて、満足そうにニヤリと笑うとオレの首をぎゅうと引いて耳に唇を当てた。
「たまになら、いいですよ」
勿論バレない程度にね。とはにかんだ●●はこの世の誰よりも妖艶で、オレはまた●●の秘部へ手を伸ばした。