▲Love Me Tender


別に端から叶う望みの薄い恋なのは分かっていた。
それでもずっと好きだったから、彼が可愛いと言った女になりたくてゆるふわウェーブの量産型女を真似して髪を伸ばし、服も全然好みじゃない物を選んでいた。

本当の私なんてどうでもよかった。
ただ彼の好きな女になりたかった。


「何その頭」

先週ぶりに会った幼馴染は私の姿を見た瞬間少し眉を顰めてそう言った。
まぁ無理もない。だってついこの間までの私はごてごてに男が好きそうな女の姿をしていたが、今の私はどうだ?ショートパンツにTシャツ、足元はスニーカー。まるでティーンエイジャー。

おまけに伸ばしていた髪はばっさりと短くなっている。

「可愛いでしょ?」
「▲▲のそういう姿、久々に見た気がする。待って後ろは?どこまで短くしたのその頭」
「襟足少し刈り上げてみましたぁ」

スーパーベリーショートいえい。とピースをすると目の前のイルミはすっと手を伸ばし私の頭に触れる。
長さを確認するように後頭部をいくらか撫でると「男みたい」とぼそり。

「うるさいなぁ」
「でも前の着せ替え人形みたいな姿よりはいいんじゃない?服も俺は今の方が見慣れてたし」
「なに着せ替え人形って。バービー?リカちゃん?」
「そんな立派な体型じゃないくせに」
「ひっど。うっざ」
「着せられてる感凄かったよお前。潜入依頼とかだったらすぐにバレてるくらいなんか違ってた」
「あーあーあー。うるさい!もう言わないで!どうせ似合いませんよ!あんな可愛い系統の服!」

「まぁでも似合ってないお前も可愛かったよ」

ぎょっとした顔でイルミを見れば私の視線から逃げるように歩き出す。
その背中に飛びつきながら「今日は失恋自棄酒付き合ってね」と笑うと「泣き出したら金取るから」とイルミは私の手を握る。
面倒臭そうにしながらも握られた手はなんだか優しくて、傷付いた心にどこかじんわりと温かく、沁みた。
思わず「イルミは優しいなぁ」と呟けば、「そうでもないけどね」と彼は答える。
その返答にどこか違和感を覚えたが、この時の私には知る由もなかった。

嫌ほど思い知らされたのはその数時間後。
ベッドの中でのことである。