残業、残業、残業、毎日残業続きでかなり参っていた。その日は頭も遂に働くことを諦め始め、流石に今日は定時で帰ろうと意気込んでいた日だった。
「荒北クン、これ明朝までによろしく」
デスクで爪を研ぐ余裕すらある上司は、書類の山が積もっているオレのデスクへまたひとつ書類を降らせた。無理です、なんて言おうモノなら明日からオレの居場所はない。込み上げる怒りをぐっと抑えて書類へ向かう。
今日もまた、書類の山はオレをこの場所へ引き止める。終業時間を知らせる放送が鳴り、ゾロゾロと人がいなくなっていく。
「ーーもう、限界だ」
背もたれに体を預けると、ギギっと椅子が鳴った。給料がいくら良くてもこれじゃ体がもたない。
「…荒北さん、大丈夫ですか」
誰もいないと思っていたので、思わず肩が跳ねた。
「あっ、…●●」
「次長も課長もひどいですよね。荒北さん手一杯なの絶対わかってるのに」
明朝までと言われたもののまだ手をつけていない追加されたばかりの書類を●●がぺらぺらとめくる音が響く。
「これ、私でも出来そうなのでやりますよ」
「あー、いや、いいよ。女の子だし危ねェから早く帰んな」
「今日、帰っても1人なんですよ」
「そういや彼氏と住んでるっつってたか」
「はい。多分…浮気旅行?的な?」
自虐的に笑う●●に、オレは何も言葉をかけてあげられなかった。
「期限付きなのってこれだけですか?」
「あと3つぐらいあるわ」
「じゃあそれが終わったらご飯連れて行ってください」
「…早く帰って寝たいんですけど」
「確かにそりゃそうですね!」
●●は楽しそうに笑っているが、どこが面白かったんだ。
「何が食いたいか決めとけよ」
「…あれ?早く寝たいんじゃなかったんですか?」
「うるせェ」
さっきまでぼーっとしていた頭が嘘のように働き出した。オレは一体何を期待してるんだか。